高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)協会けんぽの場合

高額療養費とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になったとき、自己負担限度額を超えた分が払い戻される制度。月をまたいだ場合は、月ごとにそれぞれ自己負担額を計算する。医療費が高額になることが事前にわかっている場合は、限度額適用認定証の提示が便利。

一時的な支払いは大きな負担になるため、医療機関窓口での1ヶ月の支払いが最初から自己負担限度額までとなる方法が2つある。保険医療機関、保険薬局等それぞれでの扱いとなる。保険外負担分(差額ベッド代など)や入院時の食事負担額等は対象外。
1つは、マイナ保険料の利用。マイナ保険証を提出し、限度額情報の表示に同意する方法。オンライン資格確認を導入している医療機関等である必要がある。
2つ目の方法は、限度額適用認定証の利用。オンライン資格確認を導入していない医療機関等で受診する場合や、協会けんぽにマイナンバーの登録が行われていない場合は、限度額適用認定証を保険証と併せて医療機関等の窓口に提出する。

払い戻しの場合は、医療機関等から提出される診療報酬明細書(レセプト)の審査を経て行うため、診療月から3ヶ月以上かかる。払い戻しまで時間を要するため、医療費の支払いに充てる資金として、高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で貸付する高額医療費貸付制度もある。

協会けんぽに加入している被保険者とその被扶養者の世帯合算も、できる。70歳未満の人は、受診者別に自己負担額(1ヶ月)が21,000円以上のものを合算することができる。

70歳未満の場合、自己負担限度額は、所得区分ア(標準報酬月額83万円以上、報酬月額81万円以上)は252,600円+(総医療費※診察費用の総額10割ー842,000円)×1%、多数該当だと140,100円。
区分イ(標準報酬月額53~79万円、報酬月額51万5千円以上~81万円未満)は167,400円+(総医療費ー558,000円)×1%、多数該当だと93,000円。
区分ウ(標準報酬月額28~50万円、報酬月額27万円以上~51万5千円未満)は80,100円+(総医療費ー267,000円)×1%、多数該当だと44,400円。
区分エ(標準報酬月額26万円以下、報酬月額27万円未満)は57,600円、多数該当だと44,400円。
区分オ(低所得者、被保険者が市区町村民税の非課税者等)は35,400円、多数該当だと24,600円。

多数該当とは、療養を受けた月以前の1年間に、3ヶ月以上の高額療養費の支給を受けた場合に、4ヶ月目からは多数該当となって自己負担限度額がさらに軽減されること。区分アまたはイに該当する場合は、市区町村民税が非課税であっても、標準報酬月額での区分アまたはイの該当となる。

健康保険給付の種類

療養費:就職直後で保険証がない場合、やむを得ず全額自己負担で受診したときや、治療上の必要からコルセット等の治療用装具を装着したときなど。

高額療養費:被保険者本人・被扶養者とも単独または、世帯合算で1ヶ月の窓口負担額が自己負担限度額を超えたとき。

傷病手当金:被保険者が療養のために会社を休み、事業主から給料を受けられないとき。

出産手当金:被保険者が出産のため会社を休み、事業主から給料を受けられないとき。

出産育児一時金:被保険者(被扶養者)が出産したとき

埋葬料:被保険者(被扶養者)が亡くなったとき

健康保険給付を受ける権利は、受けることができるようになった日の翌日から2年で時効になる。
健康保険給付の種類別、消滅時効の起算日
療養費:療養に要した費用を支払った日の翌日
高額療養費:診療月の翌月1日
移送費:移送に要した費用を支払った日の翌日
傷病手当金:労務不能であった日ごとにその翌日
出産手当金:出産のため労務に服さなくなった日ごとにその翌日
出産育児一時金:出産日の翌日
埋葬料:死亡した日の翌日(ただし埋葬費については埋葬を行った日の翌日)

・仕事中や通勤途中に被ったケガは、労災保険の給付対象となるため、健康保険の使用はできない。負傷者や事業主が労災保険と健康保険のどちらを使用するか選択はできないので、必ず労災病院へ手続きを行う。

・交通事故、けんか、他人の飼い犬にかまれたときなど第三者の行為によって怪我や病気をした場合も、仕事中または通勤途上のもの以外であれば、健康保険を使って治療を受けることができる。必ず、第三者行為による傷病届を協会けんぽ支部へ提出する。被害者が健康保険から給付を受けた場合、協会けんぽが立て替えた医療費(保険者負担分)は本来医療費を支払うべき加害者に対しけんぽが請求する。

第三者行為による傷病届等について

交通事故や喧嘩など、第三者の行為による負傷で健康保険で治療を受けたときは、第三者行為による傷病届の提出が必要。自動車事故等の第三者行為により怪我をしたときの治療費は、本来、加害者が負担するのが原則。しかし、業務上や通勤災害によるものでなければ健康保険を使って治療を受けることができるが、この場合、加害者が支払うべき治療費を健康保険が立て替えて支払っている。そこで、協会けんぽが後日、加害者に対して健康保険給付した費用を請求する際に、第三者行為による傷病届が必要となる。

第三者行為による傷病届に必要な書類
・交通事故、自損事故、第三者等にょる傷病届
・負傷原因報告書
・事故発生状況報告書
・損害賠償金納付確約書・念書
・同意書(協会けんぽが加害者の損害保険会社等へ損害賠償請求をする際、医療費の内訳を添付する、個人情報の提供となるため、本人の同意が必要。立替分の治療費を加害者に請求できなくなることを防ぐため、加害者と示談する場合は事前に報告する、白紙委任状を渡さないこと、金品受領があった場合に必ず報告することへの同意なども。)

物損事故となっている場合は、交通事故証明書のかわりに、人身事故証明書入手不能理由書が必要となる。


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