労働基準法の目的、労働契約、賃金、就業規則、罰則など

労働基準法1条
1.労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
2.この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

無効となった労働条件は自動的に修正される。労働者と使用者の関係は、労使関係、労働関係といわれる。労基法2条は、労働者と使用者が、対等の立場で労働条件を決めないといけないと規定。

労基法9条
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

労基法10条
この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

労働者を使用従属させている人や組織が、事業主、使用者。取締役会のメンバーなどは、会社の経営に関して責任をもっている事業の経営担当者=使用者。総務部長、人事課長、労務課長なども、使用者。

均等待遇・・・国籍・信条・社会的身分で待遇の差別をしない。
男女同一賃金・・・性別を理由に賃金の差別をしない。
強制労働の禁止・・・労働者の意に反して労働を強要しない。
中間搾取の禁止・・・他人の労働の成果を横取りしない。

同一労働同一賃金ガイドラインは、平成30年12月に策定。正規、非正規といった雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保し、同一労働統一賃金の実現を目指す。いかなる待遇差が不合理かを示す。

・労基法は、労働条件の最低基準を定める。
・労働者と使用者は対等。
・労働憲章とも呼ばれる、原則的なルールが労基法に定められている。

労働契約を結ぶ際の注意点
・労働契約の有効期間
・労働条件で必ず明示しなければいけないこと
・契約内容が、相手を拘束するようなないようになっていないか。

労働契約の期間の定めのない労働契約も可能。期間の定めのある労働契約は、原則3年以内。高度の専門的知識などを有する労働者がその知識を活用する仕事をする場合や、満60歳以上の労働者との間で締結する労働契約など。

平成24年8月に労働契約法が改正され、雇止め法理が条文に加わった。社会通念上、労働者保護に反すると認められる雇止めは、無効になる。

労働契約で必ず明示しなければいけない絶対的明示次項
①労働契約の期間に関する事項
②期間の定めのある労働契約を更新する場合の事項
③就業の場所および従事すべき業務に関する事項
④始終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替勤務の就業時転換に関する事項
⑤賃金(退職手当等を除く)の決定、計算および支払の方法、賃金の締切りおよび支払の次期、昇給に関する事項
⑥退職関係(解雇の事由含む)
※昇給に関する事項は書面で明示する必要はない。

労働条件に含めてはならない内容
・賠償の予定
・前借金の相殺
・強制貯金

解雇には、業務命令に違反するなど労働者に重大な責任があるときに行う懲戒解雇、それ以外の整理解雇、普通解雇がある。解雇制限には、労働者が仕事中のけがや病気になり、療養のため休んでいる期間+30日間と、産前産後の女性が労基法65条(原則として産前6週間以内の時期に、出産予定の労働者が休業を請求した場合は、その労働者を出勤させて業務に就かせてはいけないと定めている。例外規定もある。)の規定を利用して休んでいるとき+30日間は、解雇できない。

解雇予告は、30日前までに解雇したい人に予告する決まり。解雇予告ができない場合は、使用者は平均賃金30日分以上の解雇予告手当を支払わなければならない。天災などにより事業を続けられなくなったとき、労働者の勤務態度が世間一般常識からみてあまりにひどい場合など、解雇予告をしなくてもいい場合もある。

労基法11条
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの。

平均賃金の計算式
過去3ヶ月間の賃金総額÷過去3ヶ月の総暦日数

計算式の分母から省くもの
①仕事上のけがや病気により、療養するために休業した期間
②産前産後の女性が、労基法65条の規定で休業した期間
③使用者の責に帰すべき事由によって休業した期間
④育児・介護休業法の規定による、育児・介護休業した期間
⑤試みの使用期間(試用期間。ただし、試用期間中に平均賃金を算出しないといけない場合は、賃金総額に参入する。)

計算式の分子から省くもの
①~⑤の期間にもらたお金、臨時に支払われた賃金、3ヶ月を超える期間ごとに出る賃金(ボーナスなど)、法律で定められていない現物給付

賃金支払いの5原則
①通貨払いの原則(労働者の同意を前提に、給料を指定口座へ振込、金融商品取引業者に対し、労働者の預かり金への払込によって支払うことは例外的に可能。令和5年4月から、指定資金移動業者へ資金移動による支払いも労働者の同意を得た場合に認められることになった。いわゆる賃金のデジタル払い。労使協定の締結と労働者への詳細な説明と同意も必要。現金化できないポイントや仮想通貨での賃金支払いは認められない。)
②直接払いの原則
③全額払いの原則
④毎月1回以上払いの原則
⑤一定期日払いの原則

・労働の対償でないと、賃金といえない。
・労働者が負担すべき税金、社会保険料などを使用者が支払った場合、賃金となる。
・平均賃金では、その人が1日に稼げる能力が表される。
・賃金の決定方法支払い方法にも規制がある。

労基法32条には、休憩時間を除き、1日8時間まで、1週間40時間までと労働時間について決まりがある。法定労働時間。各会社での労働時間を、所定労働時間という。時間外労働とは、法定労働時間を超えて労働していること。

変形労働時間制では、職場にある労働組合か労働者の代表と、労使協定を締結する必要がある。その締結した労使協定を行政官庁(労働基準監督署のこと)に届け出なければならない。労使協定とは、労使が書面で労働条件の決まりごとの協定を結ぶこと。

労働基準監督署長に時間外労働や休日労働を許可してもらう方法が、36(サブロク)協定(対象期間は1年間)。労基法36条に描いてあるルールに基づいた労使協定。従前はこの36協定の際に特別条項を結ぶことで労働者を上限なく時間外労働に従事させることが可能だったが、働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制がなされた。令和元年4月1日施行、中小企業は令和2年4月1日。働き方改革関連法の労働時間法制の見直しにより、時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間を限度に設定され、中小企業にも適用された。単月と複数月の限度時間には、休日労働を含む。ただし、自動車運転業務や医師等には、令和6年3月まで猶予期間が設けられている。研究開発業務は医師の面接指導のうえ、適用除外。

労働を提供する義務が免除されるものが、休憩、休日、年次有給休暇。休憩は、1日の労働時間が6時間を超え8時間以内の職場なら、少なくとも45分、8時間以内の職場は1時間も受けなければならない。一斉休憩・自由利用の原則。休日は、毎週少なくとも1回の休日が規定。1回の休日の長さは1暦日、0時~24時までの24時間。

令和3年4月1日から、労働基準法施行規則等の一部を改正する省令が施行され、これまで記名押印が必要な書類も、氏名を記載することで足りることとなった。36協定の届出書も対象。

年次有給休暇、基本6ヶ月以上の継続勤務で、その間に8割以上出勤すると、1回目の有給休暇の権利が発生する。さらに1回目の発生から数えて1年間継続勤務するごとに、有給休暇の日数が増えていく。20日以上は増えない。年次有給休暇にも改正があり、使用者は年次有給休暇を10日以上付与する労働者に対し、そのうち5日については毎年、時季を指定して与えなくてはならない。時季指定権とは、労働者が休暇の時期を主張すること、時季変更権とは、使用者が変更する権利。

・法定労働時間は、休憩時間を除き、1日8時間、1週間40時間
・変形労働時間制には、4つのパターンがある。(1ヶ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制、フレックスタイム制、いずれも労使協定の届が必要)
・36協定で、時間外労働が許可される。就業規則などに36協定を前提にした時間外労働があることを規定する。
・年次有給休暇の付与日数は、最高20日まで。

働き方改革関連法では、高度プロフェッショナル制度の創設も盛り込まれ、一定以上の収入を得る一部専門職では、労基法の労働時間規制の適用が除外される内容。平成31年4月1日施行。

厚生労働省は、各事業所が就業規則を作成・変更する参考としてモデル就業規則を示している。就業規則を作成・変更する場合、所轄労働基準監督署への届出義務がある。過半数で組織された労働組合、それがない場合は労働者の過半数の代表者の意見を記し、書面(意見書)を添付しなければならない。

労働組合と使用者側で締結される労働協約には、労働契約や就業規則を拘束する力を有する。労働協約に反する労働契約などの取り決めは無効。就業規則にも絶対的必要記載事項と、相対的必要記載事項(就業規則に定めがある場合に必ず記載しなければならない事項)がある。

就業規則の絶対的必要記載事項
・始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替勤務の就業時転換
・賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算、支払方法、締切、支払時期、昇給
・退職関係(解雇の事由を含む)

10人以上の従業員がいる会社は、必ず就業規則が置かれる。作成・変更した就業規則は、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。就業規則は、誰もが、いつでも、みられるようにしておかなければいけない(周知義務)。

労基法の年少者とは、満18歳に満たない人。原則満15歳以後の最初の3月31日が終了するまでの人を労働者として使用してはいけない。労基法では、①満13歳以上満15歳以後の最初の3月31日までの子ども②満13歳に満たない子どもについて、それぞれ精神や体に悪い仕事の就業を禁止したり、働く時間を短く制限するなどの規制を設けている。労働契約は、親権者や後見人も、勝手に契約をしたり、代わりに賃金を受け取ることもできない。親権者や後見人は、契約を将来に向かって解除できる。

産前・産後の休業
・6週間以内に出産する予定の女性が請求した場合、休業させなければならない。
・産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が、請求した場合は医師が支障なしを認めた業務に就かせることができる。

労基法の雑則で保存しないといけないもの
・労働者名簿・・・起算日は労働者の死亡、退職、解雇の日
・賃金台帳・・・最後の記入をした日が起算日
・雇入れ、退職に関する書類・・・労働者の退職、死亡の日が起算日
・災害補償に関する書類・・・災害補償の終わった日が起算日
・賃金その他労働関係に関する重要な書類・・・その完結の日が起算日。
※保存すべき期間は、起算日から本則上は5年間。

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