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渡良瀬橋の小さな奇跡

月に一度スマホに送られてくるGoogleマップのタイムラインは、何月何日の何時に何処へ行った、ということをすべて時系列で覚えていてくれるので、あの時のあの話を書こうか…という時に、自分の中で一部あやふやだった記憶をしっかりと補ってくれて、本当に重宝しています。それだけ多くの個人情報を握られている、という考え方も出来ますが、むしろその高い技術をありがたく使わせて頂こうと思っています。


さて、森高千里さんの「渡良瀬橋」という大好きな名曲があり、昨年の夏に思い立って栃木県足利市の渡良瀬橋へ実際に行って来たことを思い出して書きたいと思います。念のためタイムラインを確認したところ、2019年7月28日の日曜日でした。


埼玉県某所に住んでいるので、足利市までは約2時間、そこまで遠い距離ではないのですが、知らない町を訪れる時の小さな旅情感も、忙しない日常生活から抜け出して疲れた心を癒やす絶好の機会です。


館林駅からは3両編成の電車に乗り換え、車窓の田園風景がさらに一人旅の風情をそそる中、足利市駅に着いたのが午後4時半。歌の中で「夕日がきれいな街」ということで歌われていますが、日暮れまではまだ2時間近くあったので、足利の街並みを散策してみました。


お目当ての渡良瀬橋は最後の楽しみに取っておくとして、駅に近い中橋を渡り市街地に入り、足利市立美術館でひと休み。そして風情のある路地裏を抜けて山の方へ歩くと、足利織姫神社を見つけました。

この織姫神社はパワースポットとしても有名で、大鳥居のそばの立派な笹に色とりどりのたくさんの短冊が飾られてとても綺麗でしたが、あいにく縁結びの神社でしたので、独り身の哀愁を感じつつ、素通りさせて頂きました…。


神社と言えば「渡良瀬橋」の歌詞には八雲神社という実在する神社があることを今さらに思い出し、頼れるGoogleマップさんで経路を調べて向かいました。

その道中、大きな交差点の角の床屋さんの前に公衆電話があり、もしやと思って行ってみると、まさに「床屋の角にポツンとある公衆電話おぼえてますか」と歌われていたあの場所で、渡良瀬橋の歌詞が貼ってありました。

そもそも思い付きで歩き出した場所からの経路でしたので、その公衆電話を目にするまで全く予期していなかった偶然に、ただただ驚きました。


夏の天気は変わりやすく、さっきまでの青空が徐々に雲に覆われていき、渡良瀬橋で綺麗な夕日を見られるのか、文字通り、雲行きが怪しくなっていました。ひとまず無事に八雲神社に到着、歌の中でも重要な役目を担うこの場所に実際に立っているのはとても不思議な感覚で、境内を歩きながら歌詞の風景を目に焼き付けました。

後に調べてわかったことなのですが、八雲神社は市内に複数箇所あるらしく、この時実際に訪れた神社は、森高千里さんが後のドキュメント番組で訪れたところと同じ場所でした。Googleマップさん本当にありがとうございました。


そろそろ日暮れも近づく時間、いよいよ目的の渡良瀬橋へ向かいましたが、山の方から厚い雲が伸びていて、夕日の姿を見るのは難しい状況でした。ちなみに実際の渡良瀬橋は車道用で、すぐ横に隣接している歩行者用の橋の上から、雲が晴れることを願いながら渡良瀬川の清流を眺めていました。天気が良ければ、遠くの山々を望むこともできるようです。

意外にも速い川の流れを見下ろしながら橋を渡っていると、夕方6時のチャイムが聴こえてきました。

どこかで聴いたことある…そのチャイムがまさしく「渡良瀬橋」のメロディでした。夕方のチャイムの事を予め知っていた訳でもなく、時刻も気にしていなかったので、偶然にも自分が渡良瀬橋に居る瞬間に聴くことが出来たこと、思わぬ小さな奇跡に感動し、とても貴重な体験になりました。


その間、厚い雲の隙間からは夕焼け空が見え隠れしていたので、しばらく河原を歩きながらチャンスの瞬間を待っていたのですが、最後まではっきりとした美しい夕日の姿は見られませんでした。今年はコロナ渦もあり出来るだけ遠出は控えていますが、また機会があれば、その時は訪れなかった「渡良瀬橋」の歌碑も見に行きたいと思っています。渡良瀬橋の綺麗な夕日、今度こそ見られますように。


そんなわけで、あまり取り留めの無い話でしたが、最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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