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鬼講師誕生秘話

 ミスユニバースに出場する女性にプレゼンテーションスキルを教えて欲しいと言われ、彼女達の合宿所へ向かいました。会場に入ってみると、八頭身美人揃い。しかも、10センチは有にあるピンヒールを履いているので、高層ビルのように見上げてしまいます。
「とりあえず、順番に自己紹介してみてください」と指示を出し、右の女性から順番にマイクの前に立って話始めました。3人目の自己紹介が終わったあたりで、一度止めて、彼女達にこう伝えました。

「あなた達、黙って立っていたら素敵なんだけど残念ね。」と。
それが私の率直な感想でした。
 スタイル抜群で美人。そんな女性が一言口を開いただけで、そのギャップにがっかりする印象の方が多かったのです。言葉を選ばずに書くと、バカっぽい、ヤンキーっぽい、アイドル志望?そんな印象を受けました。
 それは、彼女達がそうだというのではなく、話し方や声の出し方がそう言った印象にさせてしまっているだけで、本来の彼女達の持ち味が全く表に出てきていませんでした。
 私は、合宿で徹底的に声の出し方や話の組み立て方、知性溢れる言葉遣いについて徹底的に特訓をしました。
 時々、声を荒げて叱咤する事もありましたが、そんな厳しいトレーニングに耐え、どんどん殻を破るようになりました。私自身も、どんどん情が湧いてきて、抱き合って泣く事もありました。そんな特訓の成果もあり、迎えた本番での彼女達のプレゼンテーションは、内面の知的さや上品さがしっかり表現でき、又、それぞれの個性もPRできる素晴らしいプレゼンテーションとなりました。
 あくまでも審査ですから、順位がついてしまうものですが、優勝した女性も、残念ながら予選落してしまった女性も、その後の人生において、かなり使える武器を手に入れたと思っています。実際に、その中から、ラジオのパーソナリティになった方やテレビのレポーターとして活躍する人もおりますし、希望の会社に就職できた人もいると聞いています。
 無事に私の任務も終わったと思った矢先、ミスユニバースを特集する番組が放送されました。彼女達を追いかける密着取材のドキュメンタリー番組です。もちろん、私のトレーニングも撮影が行われていたのは知っていましたが、その編集が異議あり!と申し立てしたくなるレベルでした。
なんと、私が美しい女性をコテンパにしているような編集なのです。
もちろん、厳しい言葉をかけるシーンはありました。でも、それで泣くようなヤワなお嬢ちゃんたちではありません。現場では、悔しさをバネに、果敢にチャレンジしておりました。ところが、テレビというのは視聴率を稼げるならなんでもありなのでしょうか?私が怒鳴りつけている直後に、目標を達成して嬉し涙を流している彼女達をいかにも叱られて泣いているように編集しているではありませんか。
 これでは、まるで私は鬼講師です。私は、鬼講師ではありませんし、負けん気の強い彼女達が、ちょっとやそっとの厳しい言葉で泣くわけもありません。
 直ちに、この番組を流したテレビ局に抗議の電話を入れようかと思っていた矢先、あちこちからこんなメールや電話が殺到するようになったのです。
「あんな風に弊社の社員に研修って出来ますでしょうか?」
「うちの社員にビシバシやってください」
「研修をお願いする場合、どうしたら良いですか?」
 私が、苦情を入れようとしていたテレビ番組のおかげで、これからのビジネスの方向性を見失っていた私にとって、一筋の光が見えてきました。
こうして、私は、広告代理店の下請け体質から脱却する方法を手に入れ、それまでの主軸だったママ向け企画事業を手放し、長年携わってきた「話す」を「教える」という人材育成事業にシフトしたのです。

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