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【story】LINE LOVE STORY-6

左腕が痛い…。
看護師さん、採血絶対下手。
止血するためにテープの上から反対の指で押さえているけれど、痛い。

健康診断での採血は、毎年「当たり」か「ハズレ」かを気にして、左腕に注射針が入る瞬間から血が抜かれている様子をジッと見つめる癖がある。
その話を職場の雑談でした時に
「ああ…私は絶対見ませんね。注射嫌いですし。」
苦い顔して後輩が答えた。
「注射針が自分の腕に刺さっていく様子を見ないと気が済まない。」
その時もテープが貼られた左腕を見つつ答えたような気がする。
そんな会話を思い出しながら、それにしてもジンジン痛む左腕。
今年も無事に健康診断が終わった。

いや…無事じゃないか。

血圧が高かったのは暑さのせいだと思いたい。
体重も増えてしまった。
ストレス太りである。思い当たる節はたくさんある。
「今日は左腕で重たい荷物を持たないようにしてくださいね。」
そう健康診断で看護師に言われた。
重たい物を持たないようにって…買い物して帰るつもりだったのに。
健康診断終えて、会場から外へ出るととにかく蒸し暑い。
もうすぐ夕方だというのに、相変わらず太陽の位置が高い。
風も爽やか、ではなく、熱風。エアコンの室外機から出る空気を思いっきり浴びているような。

「参ったな…」

血を抜いているせいもあってか、ちょっと暑さでクラクラする。
無理して帰ろうとはせず、近くの公園にあるベンチに腰掛ける。

スマホを取り出して、LINEを開ける。

『健康診断終わったけど、左腕で採血して重たい物持つの禁止だってさ。』
『夕飯は各自で何か買って食べることにしよう。』
『少し休んだら帰るよ。』

LINEのメッセージはどうしても単元ごとに送ってしまうので何度も吹き出しが出来てしまう。
相手はまだ勤務中だから、すぐ既読にはならないのを知っててメッセージを送った。
梅雨明けしたらすぐ暑くなるの、体力的に保たないから止めて欲しい。

ブブ…

スマホが震えた。

いつもは既読する時間が遅いはずの、相手から返事が。

『夕飯は了解。』
『貧血?無理しないで。』

珍しいな。まあ無理するつもりはないのだが。

『自分も時間休暇取って帰るつもりだった。一緒に帰る?』

更に珍しい。

今自分が休んでいる公園の場所を伝えた。しばらくしてちょっと駆け足で私が休んでいるベンチ側にやってきた。

「また針が腕に刺さる瞬間から採血の様子をジッと見てたの?」

今日は、彼が私の家に泊まる日だ。
よりによって健康診断日と被ってしまったが、健康診断が終わったら堂々と飲めるしいいじゃないか、ということで予定通り。

「今日の看護師さん、めっちゃ痛かった。」
「僕、健康診断まだだから、その看護師さんに当たったら嫌だな。」
「やっぱり採血の時、顔を背けるの?」
「当然。」

左手で持っていた手提げ袋をサッと取って彼は言った。

「注射針が自分の腕に刺さっていく様子を見ないと気が済まない、って言った時に驚いたけど、もう慣れた。けど、貧血で倒れては困るし。前も貧血でひっかかったでしょ?職場で話したこと、結構覚えてるからね。僕。」

職場で雑談したあの時、健康診断後に雑談した後、貧血で倒れてしまったところを助けて救護室に連れて行ってくれたのが、その後輩だった。
そして、帰る時も自宅まで送ってくれた。
その時に、LINEで後輩から

『今度は健康診断受ける日を前もって教えてください。』

そんなメッセージをもらった。
そして、今日。後でスマホを見ると

『やっぱり、健康診断の日に時間休暇入れたの、正解。』

思わず彼を見てしまった。彼は私の隣で微笑んだ。

「…ちょっと、太ったんだよね。」
「…ああ。別に気にならないよ。ダイエットするの?」
「…うーん。」
「急激なダイエットして貧血起こしても困る。」
「そう、ですか…」

『いつもありがとう。』

後でLINE送っておこう。

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