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【story】LINE LOVE STORY-3

日曜日の朝。1件のLINE通知が届いた。

「…あ。駒崎くんだ。」

以前同じ職場だった、後輩からだった。
彼からLINEが送られてくるのは珍しい。
同じ職場…同じ班で行動していたけれど、いつも私か他の先輩からLINEを送って、「わかりました。」「承知しました。」の1行返信で簡潔するため、先輩は「本当に解っているのか謎!」とよくぼやいてた。
確かに天然なところがあって、間違いを指摘すると「え、さっきLINEで指示した内容ですよね。」と言いつつも「いや、そんな指示LINEで出してないでしょ。」とよく先輩に𠮟られていた。

もしかすると、間違いLINEかも知れない。

そう思ってそのままにしていた。
このところ新年度に入ってからあまりにも多忙すぎて、ゆっくり週末を迎えることが貴重になった。何処も出掛けず、こうして部屋でゴロゴロ横たわっている時間が本当に貴重。
ベッドに横たわったまま、窓の外を眺める。気持ちよさそうな空を眺めて、ああ明日仕事行きたくないな、また忙しいだろうな、そういえばあの件がまだ途中だったな…など考えると空が羨ましく思う。

朝の家事は一通り済んでいる。ベランダから見える洗濯物が柔らかな風にゆっくり揺れている。
となれば…お昼ご飯は気にせず、二度寝しよう。
そう思って、布団をかぶった。

またLINEメッセージが届いた。

「…あれ、また駒崎くんから…。」

間違いLINEかと思っていたが、2回目となるとやっぱり私宛なのかも知れないと思い、メッセージを開けた。最初のメッセージは、

『突然でごめんなさい。今日時間ありますか?』

そして次のメッセージは、

『何度もごめんなさい。今から電話してもいいですか?』

…本当に宛先は私で合っているのだろうか。
嫌な予感がしたので、LINEを送ってみることにした。

『駒崎くん、お久しぶりです。小野田です。LINEの相手、間違っていませんか?』

どう考えても、駒崎くんと仕事をしていたのは2年前で、恐らく相手を間違えているとしか思えない。
LINEして改めて布団をかぶろうとした時に、
またメッセージの音が…

『LINEの相手、間違っていません。今電話してもいいですか?』

駒崎くん、もしかして休日出勤しているのだろうか。
仕事で何かあったのか。
でも、一緒に仕事をしていたのは2年前で、私はもう役に立たない気がするのだが…

悶々としているうちに、駒崎くんからLINE電話がかかってきた。
ためらうことなく通話に出る。

「駒崎くん?お久しぶりです。仕事で何かあったの?」
『突然でごめんなさい。仕事で何か、ということではないです。』
「仕事じゃないの?」
『はい。…小野田さんは今日、予定ありますか?』
「…うーん、特には予定ないけど、今家にいるし。何故?」
『…突然ですが、今日会えますか?』
「…何故に?」
『…今日って、小野田さんの誕生日じゃなかったですか?』

え?
私の誕生日?
確かに4月が誕生日だけど、今日じゃないよ。
誕生日は再来週の25日で、28歳になる。
ああ、28歳まで彼氏も出来ず、こうして日曜日ゴロゴロしている訳ですよ。ちょっとやさぐれてしまった。
だけど、突然急に私の誕生日の話が出るのか。
昨年は何もなかったよね。

『…え?違いましたか?』
「私の誕生日は25日だけど。」
『…うわ、ごめんなさい。僕やらかしましたね。今日だと思って誕生日プレゼントを用意したんで、会えたらと思って…。』
「ああ、そうなんだ。ありがとう。」

素直にありがとう、と言葉が出た。
全くもって、これまで気を遣うということをしなかった彼が、私に誕生日プレゼントを考えてくれたことは素直に喜ぶべきだと考えたからだった。

『小野田さん、最寄り駅は…』
「あ、駒崎くんは今どの辺にいるの?」
『今、サンシャインシティにいます。』

仕事を一緒にしていた時に、駒崎くんが南池袋に住んでいることを聞いた。じゃあ、私の自宅から近いね、と言ったことを覚えていたらしい。
仕事は抜けが多かったのに。

「都電に乗って、雑司ヶ谷駅まで来てもらえれば。駅で待ってるよ。せっかくプレゼントくれるのなら、ちゃんと受け取るよ。」
『わかりました。』
「でもさ、昨年は別に誕生日プレゼントくれたことなかったのに、今年はどうしたのか聞いてもいい?」

『…はい。昨年はここまでの行動力を出す勇気がなかったからです。』

駒崎くんは素直なんだか、よく解らない。

「…私に気があるから、誕生日プレゼントを考えてくれたんだよね。」

『…はい。そうです。誕生日でそしてこんないい天気で、今日こそ行動すれば結果もいいかなと思ってました。誕生日は僕の勘違いでしたけど。ごめんなさい。』

思わず笑ってしまった。

「そういう時は、素直に、会いたいです。でいいのでは?」

『…はい。小野田さんに会いたいです。』

「じゃあ、雑司ヶ谷駅で待ってるね。」

通話を切り、ベッドから飛び起き、急いで着替えた。
そっか、駒崎くんは何かと私のことを気にしていたんだと思うとつい微笑んでしまう。
自分はそんな目で見たことがなかったけど、思ってくれる人がいるのはありがたい。
この先どうなるかは別として、まずは駒崎くんのその好意を素直に受け取ろうと、あまり着飾らず、化粧も軽くで、ありのままで会いに行ってみるかと思った。

また、LINEメッセージが届いた。駒崎くんだった。
もう着いたのかな。既読せずにとりあえず駅に向かった。

”小野田さん、ありがとう。お会いした時にも言いますが、そんな優しい小野田さんが好きです。”

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