もしもごはん食べるのがこわいことになったなら
食べることばかり考えている。そんな私に顔も食欲もそっくりなのが1歳3ヶ月の娘。
ごはんが出てきたら「いえーい!」とテンションがあがり、コップを持って「パーイ(乾杯)」とぶつけてはゴクゴク飲む。
キッチンにごそごそ入ってはお菓子を見つけてくるし、バナナを見つければ小躍りすらする。
大人が先に食べはじめれば、「私のまだー」と泣き出し皿の上に手を伸ばすし、指を器用に使い米粒ひとつ残さず平らげた皿を差し出しておかわりをアピール。
保育園のノートにも、お迎えのときの雑談でも、話題はいつだって「今日も元気にごはんをいっぱい食べました」。
もしも世界から猫が消えたなら
ならぬ、もしもごはん食べるのがこわいことになったなら。
そんなできごとがおきたのは、3日前の午後のこと。
昼には親のチキンライスまで奪って食べていたのに、夕食から突然ごはんを食べるのがこわいことになった。
大好きなトマトを口に入れても飲み込めない。
大好きな味噌汁の具材も飲み込めない。
たまごも飲み込めないし、ごはんもだめ。
嫌いな白菜の葉っぱに挑戦しても、やっぱりだめ。
すべてが喉を通らなくなった。
わーい!と口に入れるたびに涙があふれてくる。
泣き腫らしたまぶたはドラゴンボールのピラフのようになっていた。
唾液で溶ける赤ちゃんせんべいで空腹をやりすごし眠らせる。
朝もやっぱり大好きなバナナをかろうじて半分、涙。
大好きなみかんをむいてと差し出してきたものの、口に入れると食べられない。
手足口病により、口と喉に口内炎ができていたようだ。
ごはんという日々の楽しみが苦痛に変わったピラフまぶたのの彼女はしょんぼりしていて、覇気がなく小さく見えた。
ゼリーのおいしさ、豆腐のやさしさに気づき、おや?米もいけそうじゃないか!魚もほぐしてちょうだいな!と、その後すぐにいつもの食事風景に戻ることができた。
ごはんが何よりも楽しみな1歳2ヶ月の女の子に押し寄せた苦難の時間。
なんだかいろんなことを考えてしまうじゃないか。
明日も明後日もごはんがおいしい世界であってほしい、それだけを考えようと思った。