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【最新肉声インタビュー】インタビュードリブンなビジネスクリエイティブの世界へようこそ(第二回)

マスコミや編集プロダクションからの発注に依存せざるを得なかったフリーランス・クリエイターからの脱却。年間500人/100社以上対応し続けるプロ・インタビューアー伊藤秋廣が、株式会社エーアイプロダクションの経営者の立場から「インタビューの事業化」をテーマに語っています。

(聞き手:林春花 執筆:テキストファクトリー 撮影:古宮こうき)

――前回の記事では、インタビューの事業化に関する全体的な方向性についてお聞きしました。今回は具体的な取り組みについてお聞きしたいと思っています。

伊藤:そうですね。これまで、たくさんの方々のお話を聞いて原稿を執筆してきましたが、そこで終わってしまっては事業化でも何でもないですし、やがて私自身が行き詰まってしまいます。私一人でできることなんて、たかがしれていますから。その先にある何か繋げていかなければ進化も発展もあり得ません。その繋ぎ先としては、人とクリエイティブがあると思っています。例えば、私以外のインタビューができる人と繋がっていくという手段があります。多くの人に影響を与える事業にするために、たくさんのインタビュアーを創出して、私一人では対応し得ないくらい、できるだけ多くの人の思いを汲み上げてカタチにしていきたいと思っています。

また、インタビューの使われ方の可能性を広げていくということで、動画クリエイターと繋がって作品を作ったり、フォトグラファーやデザイナーと繋がればWebだけでなく、紙媒体も作れますし、多様なアウトプットの方法に繋げながら、そして関わっていくクリエイターの皆さんからアイデアをいただきながら形にしていくことをイメージしています。
要するに価値を発掘して言語化するということがインタビューの目的ですし、それを事業化することが私のやりたいことです。それを最大化するために仲間を集めて可能性を広げるという感覚ですね。

さらにインタビュアーとしての利用価値を、どんどん発信していくことで理解を深めていただきたいと思っています。前回の記事でもお話ししたように、我々インタビュアーの本当の利用価値は、インタビューイーの中に眠っている潜在価値を発掘させることにあります。頭の中でモヤモヤしていることを整理して言語化する、そのメリットに特化して伝えていきたいです。インタビュアーと話しているだけでも頭の中が整理されたり、気づきが生まれたりします。インタビューを受けている時間自体に価値を感じていただきたいと思っています。

例えば豊臣秀吉の伝記「太閤記」というものがありますが、あの作品には聞き手や書き手という存在がいるわけで、往時から現在に至るまで、私たちの仕事は必要不可欠なものとしてあるわけです。記録をするという意味でもそうですし、話していることを言語化していき、その人となりを発信していくという意味でも必要な存在であるとの自負があります。名言や金言、生き方に関する哲学などは、誰かが話を聞いて対話の中で引き出していき、形になっていると思います。おそらく自分ひとりで文章を書いている中で金言は生まれていきません。相手とのやり取りの中で生まれていくわけで、私たちインタビュアーはそういう役割を担っていくべきだと考えます。インタビューはコンサルティングのように解決策を示すものではありません。アイデアはインタビューイーの中にあるので、そこに気づいてもらう、その可能性を広げるという作業をしているのです。

インタビューをしていて、借りてきた言葉を話す人や用意した原稿を読む人がいますが、それは本人の言葉ではないのでほとんど意味をなしません。本当に何かを考え抜いていたりポテンシャルがある人というのは、原稿なんかなくても語れます。インタビュアーはその一人語りをリードしてあげるというイメージです。その人の中に眠る、磨けば輝くであろう原石を発掘してあげて、共有して、一緒に言語化するのです。

綺麗事かもしれませんが、私は人間の能力や考え方、哲学に大きな差はないと思っています。人間、生きていればそれなりに些末なことをたくさん考えて、色々な知恵をつけて、解決策を試し、その中でうまくいった術を身に付けながら生きていきます。それは頭脳労働者だけではなく、例えば職人さんもそう。たくさんのことを考えて選択しながら動いています。現場の仕事は、自分の経験から生み出される知恵のかたまりのようなものがありますが、それは単純に自然にやっているだけです。しかしそれをきちんと言語化すればそれは「哲学だ」と言われたり、「仕事に対する基本姿勢だ」と言われたりします。また、ベテランの職人が若い人に指示するときにも、ノウハウがきちんと言語化されていないから「職人の勘」なんて表現されたりします。「職人の勘も言語化さえすれば全て哲学になり、ノウハウになると思います。

「哲学」っていうと、なんか大げさな感じになりますが、人それぞれのオリジナルの考え方やこだわりを哲学と読んでいます。同じような立場の人でも、考え方や仕事の姿勢が違う。その人なりの哲学があるということが、掘り下げた質問をすることで、どんどん浮き彫りになっていきます。結局、どうして?どうして?を繰り返し、原点を探っていって、そこが自分のグランドゼロだって場所が、その人の「本質」だと思います。要するに「哲学=本質」なのですよね。その本質を掘り起こしているときに、“そういえばそういうことがあり、このようなことを言われた。それが原点かもしれない”と本人も気づきます。そのコアな部分に触れたときに、私も“よしたどり着いた!”って思いますね。

――どのような方にインタビューのサービスを活用してほしいとお考えですか。

伊藤:意識をしているのは事業会社です。事業会社から直接オファーをいただきたいですね。“事業会社がどのようなときにインタビューを使うのか?”といったところから提案していきたいです。わかりやすいのは、私が必ず社内の方のインタビューをさせていただき、それを発信していく、その企業専属のインタビュアーというイメージです。今では、ポータルやナビサイトは使わずに、企業独自に媒体を作ったり、求人専門サイトを立ち上げたりしているので、必ずしも書き手やインタビュアーを外部に丸投げする必要がありません。そこに私がその会社のことをよく分かっているという立ち位置で話を聞いて発信するサポートをしていきたいと思っています。半内製化って感じですね。また、社長のメッセージや対談などをコーディネートするお手伝いもできると思っています。もちろん、実際にそういったオファーもいただいています。

単純に外注して記事を書いてもらうのではなく、きちんとコアな話を聞けるインタビュアーに任せて、インタビュアーを制作会社を並列で使っていただけたらと思います。さらに我々が上流から入らせていただき、どのようなコンセプトでコンテンツを作るのか?というアイデアも出せたら、さらに良いですね。とくに多くの中小企業はコンテンツ作りや継続的な発信が上手くいっていないところがあると思いますが、あまりお金をかけなくても発信ができる方法を我々は知っています。

また、企業だけではなく個人向けのサービスも展開したいですね。皆さん、本当に素晴らしいことを考えていたり、様々な思いを持っているので、それを記録していくことが重要だと思います。働き方も多様化していて、必ずしもずっと同じ会社に所属しているわけではありませんし、自分の価値を向上させながら自分の生き方や働き方を探しています。そうなったときに、その人のコアな部分を伝えるようなプロモーションビデオを作り、文章で論理的に説明しつつ、動画でその人の人間性を伝えて感性に訴えかけるようなことをしたいです。そして、それを5年ごとに更新すると、その人の成長の記録にもなります。名刺代わりにもなるので、転職活動はもちろん個人で戦っていくときにアピールしやすいと思います。まさに“一億総インタビュー”みたいな世界観で、個人がみんな自分をアピールするような武器を持っているようになるといいですね。

少なくとも個人として戦っている事業家や専門家はご利用いただいた方が良いですよ。自分の棚卸しになりますし、人間性を伝えるにもインタビュー動画は有効だと思います。

――最後に今後の展望を教えてください。

伊藤:インタビュアーをたくさん作りたいです。営業と人を増やしていくのは両輪なので、営業して反応があっても、インタビュアーが私ひとりしかいない状態では、自分の首が締まってしまいます。もっと仲間がいれば受けられる仕事も増えます。最近はDXの事例紹介のオファーが増えています。インタビューにはビジネス理解力、ヒアリング力、表現力の3つが必要です。最終的な目的は、インタビューがビジネスであることを理解してもらうことです。ビジネスにはコンサルタントが必要なのと同じように、ビジネスチームにはインタビュアーが必要だというところまで行けたらと思います。先は長いですね。

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