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生きた壁をもつ学校〜マドリードのレッジョエミリア・スクール

現在、わが子が通う小学校が75年?80年?ぶりの改修工事を迎えようとしています。PTAの役割として、皆の要望を聞いて、できる範囲で市に届ける… という活動をしているのですが、今日、The Guardianである記事を見て、自分の力不足に愕然としました。

スペインのマドリードに、レッジョエミリアの学校ができたのだけれど、その建築がすごいのです。設計は、スペインの建築家アンドレス・ジャケ。
生徒たち(2歳から18歳までの500人!)と先生方の要望を聞きながら、2年にわたる共同作業(手すりの色について20時間に及ぶミーティングを含む!)を行い、資材についても熱心なリサーチを重ねた末にできた学校だそうです。

Rainforest? Turn left after the drawbridge! Inside Madrid’s eye-popping living school

https://www.theguardian.com/artanddesign/2023/jan/17/reggio-school-andres-jaque-madrid-rainforest-zig-zag

the Reggio School by Andrés Jaque

建物内部の写真もぜひ、記事を見てみてください。
以下、 The Guardian の記事、概要だけババっと意訳しました。

・子どもたちの声は、「壁のない学校」「移動するのにいろいろなルートが欲しい」「庭のような感じがいい」「宇宙船のような感じ。規模は大きすぎず、すぐに皆と仲良くなれるようにしたい」など。
・教師たちは、建物を教材としても遊びとしても使え、決して完成したとは感じさせないことを望んだ。「ジャケが言うように、"建築は想像力を刺激するものでなければならない" から」

「決して完成したと感じさせない建築」…! ガウディか。

さて、この学校が採用しているレッジョ・エミリアという教育法には、「子どもたちを学習で満たされる空っぽの器とみなすのではなく、自分たちの学びについて自分たちで決める積極的な参加者とみなすという原則」があります。

答えあるものを「教える」というより、生徒、教師、保護者が互いに発見の冒険を繰り広げながら、「好奇心を刺激すること」に軸を置いた学びの場。ここで大事なのは、物理的な環境も「第3の教師」として想定され、環境と人の相互作用、自由な探求、屋外とのつながりを促すようなスペースが構成されていること!

・子どもたちは、アーチ型の開口部から跳ね橋のようなデッキを渡って到着すると、すぐに巨大なホール、つまり「アゴラ」に立っていることに気づく。体育館、劇場、集会場がひとつになったようなこの部屋は、カーテンで仕切られた雄大なスケールを持っている。

・ここからは、この建物のボコボコしたバターのような表面がよく見える。これは天然のコルクを粉砕して壁に吹き付けたもので、マドリードの法規制が要求する2倍の断熱性能を持つ。このプロジェクトのために特別に開発されたコルクは、砂利のような土の漆喰とスポンジの中間のような質感を持っている。

・この厚さ15cmの被膜は、断熱材としてだけでなく、菌類や昆虫などの生物のすみかとなり、隅々まで繁殖するよう意図されている。雨水はコルクの裂け目に沿ってファサードを流れ落ち、どんな微生物の生命体にも栄養を与えるように設計されている。
・他の学校には高圧洗浄機が必要かもしれないが、この学校は汚れを受け入れる。「樹木の表面のように、生命に満ちたものになればと思っています」とジャケは言う。各教室は、蝶から鳥や蜂まで、さまざまな種類の野生生物を引きつけるように設計されている。

巨大なホールや壁の色、ぜひ、記事内で写真もみてください

樹木の表面のように、命に満ちた、生きている壁!
なんて素敵な学び舎なんでしょう。

さらにすっごいのは、3階に小さな温帯雨林の植物園があり、研究室や工房に出入りできるようになっていること。授業から抜け出して、緑豊かな広場とそこにいる昆虫を目の前に遊ぶことができる空間…。植物博士や昆虫博士が産まれそう!

しかも、この温室部分は、冬は教室を温めて、夏は半透明の樽型吹き抜け屋根の換気ハッチで涼しくなるのですって。

小さな子どもたちはここで林床を殖やしはじめているし、シダの間に段ボールで街の模型を作っている生徒もいる。「これは2年生の生徒が始めた共同プロジェクトです。自分たちの都市が持つべき建物について話し合い、市長を選出し、集団的な管理戦略を組織しました。次のステップは、彼らのスキルを実際の建物に反映させることかな?」

植物園、ぜひ、記事内で写真もみてください

もちろん、学校に無限にお金があるわけもなく、経費削減のためのあらゆる工夫もなされています。まず、構造がむき出しなのはデフォルト。でも単純な節約ではなく、ホイルに包まれたダクトやパイプ、陽気な色に塗られた壁、遊び心のある工業的なブリコラージュで組み立てられたパイプなど、なんとも芸術的に仕上がっているのが素敵です。

・オリーブクリームのダイニングルームに鮮やかな黄色の窓枠、テラコッタの壁に肉厚のサーモン色の手すり(テート・ブリテンにあるジム・スターリングのポストモダン・クロア・ギャラリーを意識)、ピスタチオ色の理科室など、さまざまな色味が用意されている。すべてが異例なほど大人っぽく感じられ、子ども扱いや学校らしさを意図的に避けている: ジャケによれば、教師たちは「名前をつけるのが難しい色を求めた」のだという。

・他の場所には、ガラスレンガや中空のテラコッタブロックの壁がある。スペインでは日常的に使われている建築材料だが、横に寝かせて漆喰で覆い、ブロックの押し出し模様が見えるように削っている。この効果は印象的で、繊細な線描画のようなヘリンボーン模様が生まれ、壁がどのように作られているかがわかるだけでなく、音響効果にも役立つ質感となっている。

・コンクリート部分は環境負荷が高いかもしれないが(「経済的な選択肢はそれしかなかった」とジャケは言う)、アーチ型の開口部や舷窓の切り欠きによって壁をより細身にし、必要な鉄筋の量を減らすなど、使用量を減らす努力がなされている。通常の石膏ボードの内張りや吊り天井をやめることで、建築家たちは建築資材全体の量を約40%削減したという。

ぜひ、記事内で写真もみてください


はああ、楽しい。写真を見ているだけでも楽しいこんな場所にいたら、毎日通うのがワクワクするだろうなー。

子どもたちの意見も踏まえてこれを実現した先生方の遊び心と勇気、そしてそこに低予算でも乗っかる建築家の心意気が素敵すぎて、ため息が出ます。みんなで学校の「普通」を問い直すプロセスそのものの中にも、きっとたくさんの学びがあっただろうなー。


羨ましがってばかりもいられません。
私の目の前にある公立小学校も改修工事を迎えようとしているわけで…

さて、自分たちにできることはなんだろう。

公立校だし、長寿命化工事で構造自体は変えられないし、設計者も気鋭のデザイナーではないかもしれないけれど、地元の仲間たちや先生方、子どもたちと、もっともっと話すところから始めてみようかな。

昨年11月、PTA主催にて学校で行った公開座談会
1回やっただけで「やった感」感じてる場合じゃないか…

市の担当の方も、他にもたくさんの仕事を抱えながら、最善を尽くそうとしてくれているのだから、「市はどんな学校にするんだろう」とただお任せするのではなくて、「どんな学校をみんなで作ろうか」にできたら、まずは一歩前進。

対話と参加のプロセス自体に、きっと意味があるはずだもんね。
明日も、がんばろ。

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