アリスの言葉:子どもと「食」と覚悟の話
昨年12月、エディブルスクールヤード・ジャパン で教育者研修会を行いました。創設者アリス・ウォータースの冒頭挨拶が記事になりましたので共有します。
前半のスピーチはもちろんですが、個人的には、後半の質疑応答で心に残る言葉を受けとりました。以下、ちょっとだけ抜粋。
「大きく広げる必要はありません。
画一的な答えなどないのだから、
それぞれが、それぞれの土地にあった
小さくても確実な場作りを行うことが大切なのです」
「覚悟ね。やるんだ、という覚悟」
「ひとりではできないことも、地域の皆でやれば必ずできる」
大きく広げることに魅力を感じないというのは、パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードも言っていました。
確かに、人が誠実な関係性を保つことができる人数には限りがあります。そして、土地のありようやそこに暮らす人々が違えば、最適解も異なるはずなのに、人はつい、ひとつの成功事例をもってスケール化を目指してしまいがちです。その結果が、いまの社会の歪みを生んでいるかもしれません。
それぞれが自分の足下で、小さくても確実に、誠実な場作りをする。やっぱり、そこなんだなー。
インタビュー全文、良かったら、読んでみてください。
アリス・ウォータース
インタビュー「命の食」(前半、講演)
https://www.edibleschoolyard-japan.org/archives/1046
アリス・ウォータース
インタビュー「命の食」(後半、質疑応答)
https://www.edibleschoolyard-japan.org/archives/1061
質疑応答より一部抜粋:
Q)
いま、エディブルスクールヤードはこんなにも大きくなっていますが、初めはどのように仲間を集めたのでしょうか。
A)
はじめから、今も、大きく広げようとは思ったことはありません。使命はいつだって広げることではなく、小さくても確実なモデルをつくることでした。
ESYをはじめた最初の頃、バークレー市内にある17校の公立校から次々に「うちでもやってほしい」という声がありましたが、そこはブレません。私の答えはいつも同じで「いいえ、まずは1箇所に集中しなくちゃ」というものでした。
これは自分のレストラン、シェ・パニーズでも同じです。フランチャイズ化して欲しい、広げてほしいと言われても、決してそうしませんでした。
皆が「ああ、そうやればいいんだ」と、明確に思えるモデルを一つでもつくることが大事です。先ほどお伝えしたような価値観をどこまで表現できるか、広く薄くではなくて1箇所で徹底的に見せていくのです。
料理人をここまで勇気づけることができる、子どもたちをここまで勇気づけることができるというのを、社会に見せる必要がありました。少ししかない予算をたくさんの場所に分配しても何も起こりません。一カ所に集中して「どうかこれを見て」と注目を集める。自分たちのやり方を見てもらう。
それが、毎年夏に行なっているESYアカデミーで起こっていることでもあります。今では世界中から視察者が100人やって来て、皆が自分なりの答えを得て、それぞれの土地に合ったそれぞれのやり方で実践をしています。
料理のしかた、人の在り方、サーブする雰囲気、何をとっても画一的で絶対な答えなどありません。大事なのは、「そうやればいいんだ!」ときっかけになるヒントを見続けてもらうことなのです。
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Q)
気持ちが折れそうになったとき、どんな心もちで続けて来られたのでしょうか。
A)
困難もあった中で続けてこられた秘密?
覚悟です。
やるんだ、という覚悟。
そして、協力。
私はいつも、友達を雇うところからはじめます。「助けて」って言うんです。一人じゃできないことも、皆でならできますから。
食べられる校庭を学校に作るという壮大な夢も、広大な敷地を耕して種をまくことも、一人では絶対にできませんでした。でも、地域につながりがあり、皆でやれば必ずできるんです。
だからまず聞いてみて。
自分でやろうと完結せずに、聞いてみる。
それってとても大切な一歩だと思うんですよ。
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