ポーカープレイヤーから学ぶ「原因と結果の法則」

本文章は「確率思考 不確かな未来から利益を生みだす（アニー・デューク 著）」の内容を要約しております。

確率思考 不確かな未来から利益を生みだす

学習により不確実性を取り除く

私たちは結果から学び、主観的な判断を磨き上げることで、将来の意思決定を改善する機会を持っています。
経験から得られる情報が増えれば増えるほど、私たちの主観や選択肢はより確かなものになります。
自らの主観や賭けの方法を積極的に検証し、学習サイクルを確立することで、不確実性は減少し、より良い結果につながる可能性が高まります。
これが、時間と労力を要する学習というプロセスの本質です。
理想的には、経験から学び、主観と賭けの方法を改善し、蓄積される情報を活用して、どの未来に賭けるべきかより優れた決定を下せるようになることでしょう。
さらに、経験を積むことで、意思決定の結果を正確に予測できるようになるはずです（以下、学習サイクル1）。
しかし、ご存知の通り、経験を活かしたからといって常に理想通りに進むわけではありません。

人税は結果と原因が一致しない

人生がポーカーではなくチェスのような確定的なゲームであれば、学習はより理想的な形で進むでしょう。
不確実性が少なければ、結果の質と意思決定の質の関係は明確になるはずです。
しかし現実は、一つの結果に至る原因が複数あることが多いため、単純ではありません。
私たちが直面する未来は、多くのデータが複雑に絡み合ったものであり、それを分類し、解釈する必要があります。
結果と原因を直線的に結ぶことはできません（以下、学習サイクル2）。

原因と結果から判断する例

例えば、医師が患者の症状から病気の原因を突き止める作業は、非常に複雑です。
患者が咳をして診察室に入ってきた場合、その咳が何から来るのか―ウイルスか、細菌か、癌か、神経障害か―を見極めなければなりません。
症状だけから原因を突き止めるのは困難で、誤診のリスクも伴います。
だからこそ、医師は多年の訓練を通じて正確な診断を下せるよう努力します。

同様に、私たちの未来が「咳」をしたとしても、その原因を正確に見極めるのは容易ではありません。
例えば、同じ会社に勤める2人の社員が同じ顧客に対して電話営業を行い、異なる結果が出た場合、その理由を突き止めるのは難しいでしょう。
それは営業員の能力の差か、商品ラインナップの変更か、競合他社の倒産か、それとも他の要因か。
確実な原因を知ることは不可能であり、その解釈によって、今後の社員研修や商品の価格設定、商品開発などの決定が左右されます。

ポーカープレイヤーは不確実性と闘う

ポーカープレーヤーはこのような不確実性を常に念頭に置き、ゲームが終わっても、多くの情報が不明確なままです。
誰がどのようなカードを持っていたか、異なるプレースタイルを取っていたらどのような結果になっていたかは、誰にも分からないのです。
プレーヤーはこれまでの経験に基づいて選択を行い、その結果がゲームを左右します。
ポーカーでは、このような不確実性の解釈が上達の鍵となります。

私たちは「もっと」という目標を設定するのは得意ですが、その目標を達成するための小さな意思決定を実行するのは困難です。
学習サイクルを構築するには、何が学習の機会となり得るかを判断する力が必要です。
長期的な目標を達成するためには、学習サイクルを確立する適切なタイミングと方法を知ることが重要です。

不確実性との向き合い方

そのための第一歩は、あらゆる出来事には不確実な要素、つまり運が関わっていることを理解することです。
私たちの人生に変化をもたらす結果には、意思決定と運という2種類の原因があります。
意思決定によって生じる結果を「スキルによる結果」として分類し、異なる決定をすれば異なる結果が導かれると予想される場合、その結果はスキルに起因します。
一方で、私たちがコントロールできない要因によって結果が出た場合、その原因は運です。
結果に対する意思決定の影響が大きくない場合、運が主に作用していると言えます。