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自己奉仕バイアスの罠に注意せよ!

本文章は「確率思考 不確かな未来から利益を生みだす(アニー・デューク 著)」の内容を要約しております。

運の原因を別にする

野球の外野手がフライボールを捕球した際の即断即決の状況は、私たちが日々直面する「結果」というボールをどのように扱うかという賭けに喩えられます。
外野手の場面は、自分の技能、すなわち「スキル」のバケツにボールを投げ入れるべきか、または自分のコントロール外の要素、即ち「運」のバケツに入れるべきか、という瞬時の選択を象徴しています。
この選択により、私たちはスキルに基づく経験に注目し、運による結果は無視することで、より賢く、健康的で、幸せで、裕福な人生に近づくことができます。

しかし、このプロセスは決して容易ではありません。
全知全能ではない以上、起こった結果の原因を特定するのは困難です。
結果をスキルか運かで分類するこの賭けは、不確実な要素のために複雑になります。
特に、1990年代に流行したスナックウェル現象を考えてみましょう。
ナビスコが開発したこのチョコレート菓子は、当時の風潮としては健康的とされる「低脂肪」を打ち出していましたが、実際には体重増加の問題を引き起こしました。
これは体重増加の原因がスキルにあるのか、それとも運や関連のない要素にあるのかを決定するのが難しい典型例です。

結果からスキルか運かを学習する困難

結果を遡ってその原因を突き止めるのは一筋縄ではいきません。
多くの健康上の結果には多様な原因があり、それを正確に特定することはほぼ不可能です。
したがって、結果から学習するのは非常に困難です。
悪い結果が出た場合でも、それが単に運の悪さである可能性があります。
そのため、良い結果が得られたとしても、それが単に幸運だった可能性があるため、同じ決定を繰り返すべきかどうかは慎重に考慮する必要があります。

結論として、私たちは不確実性と隠れた情報の影響を受け、結果の分類を誤ることがあります。
このような状況では、自分の信念や意思決定に疑問を持つことが大切です。
それにより、より賢明な選択をし、持続的な成長と進歩につながるのです。

不確実性は依存を引き起こす

ラットが不確実性の影響で学習速度が低下するという古典的な刺激反応実験は、私たち人間の不確実性への対応と密接に関連しています。
確実に報酬が得られる状況下では、ラットは迅速にレバーを押す行動を学習しますが、報酬が不規則に与えられると、その学習は著しく低下します。
この現象は、不確実性のある報酬システムに対する私たち人間の反応と酷似しており、例えばスロットマシンに見られます。
スロットマシンは不規則に報酬を与え、その不確実性が人を引きつけます。

しかし、物事の結果を理解しようとする際、単純にスキルか運かという二元論で分類することはほとんどありません。
例えば、飲酒運転で事故を起こす場合、ドライバーが側溝に落ちるか無事に帰宅できるかは、スキルと運の複合的な影響を受けます。
このように、私たちの意思決定、運、そしてその組み合わせが、物事が起こる原因となります。

自己奉仕バイアスの罠

また、私たちは結果の原因を分析する際に「自己奉仕バイアス」に陥りやすいです。
良い結果は自分のスキルのおかげで、悪い結果は運が悪かったためと考えがちです。
このバイアスは、私たちが経験から学ぶ過程を阻害します。
心理学者フリッツ・ハイダーは、人々が自分に都合の良い理由を選び、それを信じる傾向があると指摘しました。

この誤解は、自動車事故の原因を他者のせいにする例にも見られます。
多くのドライバーが自分の過失を認めずに他者を責める傾向があります。
これは、自己欺瞞の能力に限界がほとんどないことを示しています。

結果の原因を誤って捉えることは、特にポーカープレーヤーにとって深刻な問題です。
ニック・ザ・グリークのようなケースでは、彼は負けた際には運が悪かったとし、勝った際には自分の戦略が優れていたと考える傾向がありました。
このような思考パターンは、悪い結果を全て運のせいにし、良い結果を全て自分の実力のおかげだと解釈することを意味します。
フィル・ヘルミュースのようなポーカーのトッププレーヤーでさえ、自分が勝てないのは運の要素があるからだと公言し、この考え方がポーカーコミュニティに広まっています。

誰もが自己奉仕バイアスに陥る

しかし、この思考パターンはポーカーに限らず、私たちの日常生活においても見られます。
自己奉仕バイアスは、良い結果を自分の実力のおかげとし、悪い結果を運や他者のせいにする傾向です。
このバイアスにより、私たちは自分の決定を適切に反省し、改善する機会を失ってしまいます。
悪い結果を全て運のせいにすると、自分の決定や行動を見直し、改善点を探ることができなくなります。
一方、良い結果を全て自分の実力のおかげだとすると、正当化すべきでない決定を正しいと考えたり、改善すべき点を見逃す可能性があります。

このような自己欺瞞の能力は非常に強力で、私たちは自分自身を客観的に評価することが非常に難しくなります。
しかし、自己奉仕バイアスを理解し、それに対抗する戦略を実践することで、より合理的に結果を分類し、あらゆる可能性を考慮に入れる柔軟な思考を育むことができます。
これにより、私たちは経験からより効果的に学び、より賢明な意思決定を行うことができるようになります。

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