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《本》 とりつくしま を読んで

本/とりつくしま/東直子/2011


この本は、先日の旅行中に金沢の古本屋で購入した。

旅行中に古本屋で本を買い、読むことをしてみたいなぁと思って。
ざっと背表紙を見ていると、この本が三冊並んでいて、珍しいな、と目を惹いた。
東直子さんというお名前を見たことがあって、確か穂村弘さんと繋がりがあったような…と思い、購入。

あとで調べたら、“回転ドアは、順番に”の方だった。短歌の人。
短歌は気になりつつもほとんど読んだことがないのだけれど(穂村弘さんのエッセイは大好き)、その本は短歌で物語が綴られていて、読みながらすごくドキドキしたのを覚えている。


今回読んだこの本は、亡くなった人が自分で好きな物を選び、その物にとりつくことができる、というお話。
私たちは自分が死ぬまで死んだ後の世界を知らないし、残される経験しかしていないため、人が亡くなるということは寂しかったり悲しかったりと、マイナスなイメージが多い。

この小説に出てくる亡くなった側の人たちは、家族を残してきてしまった心配や、好きな人の近くに居たいという思いで、柔らかな暖かい愛に包まれている。

もう言葉を伝えることはできないのだけど、それでも心の中で語りかけ、見守っている。
見返りを求めないその姿が愛だな、と思う。

あとがきに“ほとんどの話を、ラストシーンの一言を思いついてから書きはじめました”という文章があった。
それを読んでから一つ一つのお話のラストシーンの一言を見返していたら、なんだか暖かくて切ない気持ちになって、少し涙が出た。
優しくて愛のある、綺麗な言葉だと思った。

人が亡くなるってどういうことなのかな、その人はどんな気持ちなんだろう、と少し考えた。



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