見出し画像

Nahuel Note #035 『肉体の森(Au fond des bois)』 〈Timothée〉(2010)

映画『肉体の森』

画像1


『肉体の森(Au fond des bois)』フランス/ドイツ、2010年、102分
(タイトルを直訳すると「森の奥」。ドイツ語では「Tief in den Wäldern」、英語では「Deep in the Woods」)

公開日:2010年8月4日  (Locarno Film Festival)
日本では劇場未公開のまま2012年6月にDVDが発売され、2014年にWOWOWで“凍える夜の官能ストーリー”という特集の一作としても放映。

言語:フランス語

監督:Benoît Jacquot

出演:Isild Le Besco ... Joséphine
Nahuel Pérez Biscayart ... Timothée
Jérôme Kircher ... Capitaine Langlois
Bernard Rouquette ... Docteur Hughes


冒頭、「1865年」という字幕が出て、実際の事件かのような印象を作る。南フランスの森に囲まれた屋敷に住む娘Joséphineに目を付けた身汚い放浪者(ナウエルさん)は、その家を訪問し、娘の父親に気に入られる。父親は、放浪者のことを耳も聞こえず、喋ることもできないのにも関わらず、鋭い感性を持っている、と評価。

この1865年という時代設定から、古代ローマの「狼に育てられた野生児」のような神話が、「アヴァロンの野生児」(1788年頃 – 1828年)やカスパー・ハウザー(1812年4月30日? - 1833年12月17日)といった、当時センセーショナルな現実の事件として現れたことによって思い出され、啓蒙化時代のアンチテーゼともいうべき、ロマンチックな憧憬がこの浮浪者の姿に託されたのだろうと想像される。

画像2

『Patagonia』の撮影でウェールズにいる時に、本作への出演が決ったらしく、当時のナウエルさん本人と同じく、フランス語があまり話せない役柄。

最初に見た時は、確かに歯も爪も黒いナウエルさんは強烈なキャラクターに思えたけれど、それ以上に相手役のJoséphineが怖くてたまらなかった。催眠術にかかったように肉体の自由を奪われて、硬直しながら操られて笑うような前半がホントに…怪演という形容はむしろ彼女に…。

画像4


映画に教訓や主張を明言してもらいたい人には全くの不評作だろうけれど、たくさんの「意外」な行動が続く本作、結局ストーリー的にはナウエルさんが誘拐犯ということになってしまうけれど、どちらがどちらを操っていたのか、二人の関係の充足感の描写やクールな別離の理由など、色々想像できるストーリーで、考えて行くと面白い。そしてこの「汚い」ナウエルさんは瞳の美しさが映えまくっていて、ものすごく美しい。あなた絵画かよ!

画像3


ジャコー監督の映画は私はこれ以外は『シングルガール』しか見てないのだけれど、注目作だったようで、本作は各国の映画祭に出品されており、プレミアだったロカルノではナウエルさんも登壇。

当時のインタビュー。

とにかく120BPMで賞をとった際のスピーチでも、フランス映画の世界に自分を招き入れてくれたジャコー監督へ感謝を示していたナウエルさん。最初は戸惑う映画だけれど、見返すと愛着が沸いてきた。


予告編


日本語字幕付きDVD入手可能!!


#NahuelPerezBiscayart

#フランス映画

#note映画部