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全国通訳案内士試験ってこれでいいのか?

・ツアーガイドを有償で本業として3年の実働。(=経験有り)
・仕事をセーブして試験勉強に専念。(=試験勉強に費やせる時間確保)
・独身、独り暮らし。(=試験勉強に専念できる環境有り)

この三つの要素を持ってしても受からない全国通訳案内士試験。

その原因は、
資格制度設計にあるのでしょうか?
それとも本人(僕自身)に通訳案内士としての適正がないのでしょうか?

今一度この試験の在り方について書いてみました。

(原因は)まぁおそらくどちらもなんでしょうけど…

やっぱりおかしい

正直、今回の受験を決めて試験内容を知ったときから試験については言いたいことがとにかくたくさんあったのですが、さすがに受けてもいないヤツが言うのもどうかと思ったので、そうした想いを押し殺しながら受験しましたが、やはり違和感だらけの内容でした。

あまりにも違和感を覚えたのでこの場を借りて提案したい内容をいかにまとめました。(愚痴っぽくなったこと先にお詫びします)

1.なぜ、試験は外国語で行われないのか?

一応知らない人のために、簡単に全国通訳案内士試験の概要を説明しておくと、一次試験(筆記)と二次試験(口述)の二段階になっていて、一次試験は5つ(外国語、日本地理、日本歴史、一般常識、実務)あり、この全てがマークシート形式で行われます。
そして外国語を除いた残りは全て日本語で行われるのですが、これに違和感を感じるのです。
資格取得後、訪日外国人に対して外国語で案内をすることが通訳案内士の役割です。なので、日本の地理や歴史その他日本に関するあらゆる情報をアウトプットするのは当たり前ですが日本語ではなく外国語です。
にもかかわらず、その知識を問う試験が日本語で行われるのはなぜなのでしょうか。
試験内容はできるだけ通訳案内士としての実践を想定したものであるべきですし、そうであるならば試験は必然的に外国語でなくてはいけないと思うのです。
もちろん試験に合格するために(そして、その先に全国通訳案内士として活躍するためにも)日本の歴史や地理の知識自体はとても大切なことだとは思いますが、それを日本語で行われる試験で合否判定をし、その先の実際に現場で外国語でアウトプットするのは各自に委ねられているのは少々無責任な感じがしますし、資格取得の制度設計としていかがなものかと感じています。

おそらく反対の設計側の言い分としては、一次試験ではあくまでも知識を問う内容であり、説明などのスキルを問うものとして二次試験が設けられているというのがあるかもしれません。
それに対しての個人的な感覚としては、(試験勉強として)インプットをする段階であえて(意図的に)日本語ではなく外国語でするべきだと思います。アウトプットを外国語でするのであれば、インプットを日本語でする必要性がありませんし、そもそもそれではお客様の立場になって考えて通訳案内をすることはできないように思います。
というのも、前提として、日本の歴史(あるいは地理)を日本語が理解できる人に説明する時と日本語が全く分からない人に説明するのでは内容は同じではなく、むしろ大きく変えなくてはいけないのです。
なので、日本の知識を日本語で(かぎりなく広く)インプットしたところで、訪日外国人(お客さん)が理解し納得できる言い回しや表現ができなければ全く意味が無いわけです。

試験を外国語で行ってでも答えられる知識を持つことこそ、全国通訳案内士に本当に必要なスキルではないでしょうか?
外国語で試験内容を作ればきっと現行の試験で問われているような内容の正当性を見直す良いキッカケにもなると思います。

2.資格無し経験者に資格取得の優遇措置を

2018年に通訳案内士法が改定され資格の独占が緩和されたことで、通訳案内士の資格を持たなくても有償で通訳案内業を行えるようになりました。
緩和措置に対しては賛否両論ありますが、現実として資格無しで通訳案内業をしている人がいて、彼らの中には最大で丸3年(2018年1月から執筆時点で)の合法的に実践経験を積んでいる人もいるのも事実なのです。
そういった経験を十分に積んでいて十分とみなされる人材に対しては、全国通訳案内士の資格取得の優遇措置を設けるべきだと思います。
その目的は、ガイド業界からの優秀な人材の流出を防ぎ、通訳ガイド業界、ひいては国内観光業界全体を盛り上げるために必要なことだからです。
当然の異論として、経験が十分にあるなら全国通訳案内士試験を受ければいいだけじゃないかという意見もあるかもしれません。
それに対しては、前提として、無資格で過去3年間に通訳案内を本業に近い形でやってきたガイドは、おそらく資格が全く欲しくないと思って持っていないのではなく、なんらかの理由から取っていない、あるいは取れていないのだと思います。
その理由はおそらく以下のいずれか、あるいは全てにあると思います。
   1.試験が苦手(受からない)
   2.現行の試験への不満(モチベーション無し)
   3.資格がなくても仕事があるので仕事を優先
現行の全国通訳案内士の試験を突破するために必要な知識は、実際の現場で求められるスキルや知識と必ずしも一致しているとは限りません。
というか個人的には大きく乖離があると思っています。
こんなこと資格取得のプロセスが正当なものであれば起きづらい現象ですが、実際問題として現場でバリバリ仕事ができても試験には受からない人が一定数いるのです。また、年一度しかない試験のために(しかも実践ではあまり役に立たない)勉強で時間を割くくらいならその間にバリバリ働いてお金を稼いだ方がいいと思う人もいると思います。
そういうと当然、合法的に仕事もできていて試験にパスする能力が無い人にわざわざ全国通訳案内士の資格を与える必要はないという主張もあることでしょう。
それは一理ありますが、そうやって突き放してしまうことが業界にとって良い結果につながるでしょうか?
繰り返しますが、無資格の人も資格保持を拒否しているわけではなく、むしうろ資格保有することで得られるメリットがあることも重々承知しています。その大きなものが報酬と信頼度です。
通訳案内を仕事としてやる場合、多くの場合が個人事業主(フリーランス)という立場で旅行会社から業務委託で仕事を受けることになり、その際に資格があるかないかで受けられる仕事の幅や量、そして報酬が変わってくるのです。
一見ちょっとした差にも思えることですが、最終的にはそういう人材が長く通訳案内業界にいるかどうかにも関わると思いますし、それが業界の今後に大きく影響するはずなのです。

とはいえ、ガイド経験があるからといってなんの審査もなく無条件で資格を取得できるようにしろと言っているわけではありません。
例えばですが、ある一定のガイド実績が示せて、ガイド仕事を依頼した側からの推薦文がある者に対して、一次試験を免除し、二次試験あるいは別枠の面接などを行い、経験値を証明する機会を設けるなどがあるでしょう。

3.合格率の低さに目を向けるべき

2020年度の全国通訳案内士試験の合格者は1割を下回っています。誰でも受験資格がある試験にして間口を広げて多くを受験させ結果9割以上を落とすことはどういった意味があるのでしょうか?翌年に持ち越せる一部免除制度を設ける一方で受験科目数に関係なく受験料1万円超が掛かる実態は果たして健全なのでしょうか。
また、そんな数限られた合格者から実際にガイドとしての登録をして仕事を行う人がどれだけいるか、あるいはその稼働日数等のデータはないのでしょうか?そういうデータも含めて改めて精査してほしいものです。

現行の試験は、記念受験的に試験を受けて受かっても仕事をするつもりがそもそもない人や色んな理由で資格は取ったものの現場に出る気がない人を増やすことに(仮に意図していなくても)重きが置かれている気がしてなりません。
現場ですでに頑張っている無資格ガイドが、資格を得ることでより質の高いガイディングができるようになったり、仕事の量が増えたり、稼げるようになるようにしてほしいと思います。

3.通訳案内士の実務は一次試験ではミスマッチ

2018年の法緩和の一環で、全国通訳案内士一次試験に「通訳案内士の実務」という科目が追加されました。他の科目と同様マークシート形式で20分20問の試験です。
この科目の試験で本当に通訳案内士の実務ができるかどうかを測れるのでしょうか? ー 個人的には全くそうは思いません。
日本の歴史や地理は知識という枠組みに収まるかもしれませんが、通訳案内士の実務は知識として知っているだけでは意味がないのです。現場で起きる様々な状況に臨機応変に対応できるスキルが本当の意味での“通訳案内士の実務”なわけです。
なので、現行の試験にあるような記述を読んで正しい選択肢を選ぶことができるのは実務スキルの証明には全くなっていないと思います。
ましてや試験を受けるタイミングではまだ通訳案内士として仕事をしていない人もいるはずなのに、マークシート形式の試験でできなかったからといってチャンスを潰すのはあまりにも理不尽だと思うのです。
この科目で求めるべきは知っていることの確認であり、試験で振り落とすことではないと思うのです。
なので、通訳案内士の実務に関しては、もはや試験で問うのではなく、法改正以前から通訳案内士の資格保有者が受けなくてはいけない講習がありますが、それに参加させれば良いのではないでしょうか?

育成にもっと力を

ここまで生意気にも言いたいことを好き勝手書きましたが、
結局のところ、想いはガイド業界が【若手がもっと活躍できる場】になってほしいということです。
それが今の通訳ガイド業界、その先には国内インバウンド観光業界を盛り上げることにつながるはずです。
そして、そういった環境を批判するばかりではなく、(自分を含む)若手一人一人が目標を高く持って、個人レベルでできることがたくさんあるはずです。

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