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More tea, Vicar? -『子ども向け』について

今更ですが…というまえがき

 お疲れ様です。あいなです。

 当アカウントは、現在、千葉県警の交通安全啓発動画がとある団体の抗議を受けて削除された件について、関係している地方公共団体に情報開示請求をしています。

 このコーナーでは、少し情報開示請求の話から離れて、私個人が考えている『そもそも論』を記事にしてみようと思います。

  恐らくこの記事をご覧になる方は、おおかたの情報も前提知識もご存じだと思うので詳しい経緯はさくっと省きますが、情報公開請求で得た資料や、SNS・ニュース等で当事者さん達が公開しているコメントなどを見返してみると、認識の違いを修正できない/しないままに、相手を批判したり訂正を回避したりしており、どうにも話し合いのテーブルに座る以前の『そもそも』的な部分が食い違ったまま、延焼を続けているような印象があります。

 今回はその『そもそも』の部分の一つである『子ども向け』についての記事を書いています。
 知識としては拙く、話としては周回遅れなのですが、今後の情報開示請求の総まとめをするにあたって個人的に必要なことだと感じましたので、記事にして残しておこうと思います。


『子ども向け』って何を指してるの?

 「何をいまさら…あの動画は子ども向けなんでしょ?」
 と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、私は『あの動画は子ども向けではない』と思っています。
 (ただし、子どもが見ても大丈夫な動画、ではあると思います) 

 『胸が揺れている!』『子どもの教育に悪い!』というフ議連の指摘も、『子どもはこういうの好きですけど?』『子どもに交通ルールを覚えて欲しくて動画を作りました』というVtuber側や警察側の説明も、的外れであるからこそ、根本の議論が始まらないのではないんでしょうか?ということを、これからご説明できればと思います。

この動画は何のために作られた?

 まず、該当の動画は『松戸警察署(と松戸東警察署)が松戸市のご当地Vtuberと協力して非接触型の交通安全啓発運動をする』という目的で作られています。

細かく区分けしてみると、この動画には…
 ①交通安全運動の実績
 ②コロナ禍で直接集まるイベントが困難
 ③松戸市民への啓発
 ④Vtuberの知名度向上
…という4つの目的があるということが分かります。

 つまり、
①交通安全運動をしたいのに
②現地開催型のイベントができず、
③市民への啓発活動をどうすればいいのか悩んでいた警察署と、
④ご当地Vtuberという存在の認知度を高めたいVtuber事務所が既知の関係であることを活用して、
 結果、お互いのメリットを満たす形で作成したのが、例の交通安全啓発の動画ということになります。

 お気付きだと思いますが、
 この目的の中には『子ども向け』という要素がありません。

動画の内容ってどんなだったっけ?

 次は、作成された動画の中の『子ども向け』要素を探してみます。

登場人物

 まずは、動画の登場人物を確認しましょう。

 この動画に登場するのは、金髪ロングヘアで、胸元の赤く大きなリボンが特徴的な女性キャラクターと、白い布を被って魔女の三角帽子を頭に載せたおばけの姿をしている、所謂ゆるキャラと呼ばれる系のマスコットです。

 Vtuberの女性は、最初の3秒ほどは腰から上のアップで、その後はずっと頭から足まで全身が映る姿で登場します。
 Vtuberが作成している通常の動画と同様に、モーションキャプチャーを使い演者の動きを細かく反映させているので、髪や服の裾が揺れたり、繊細で人間的な動きをしている様子がうかがえます。

 おばけキャラのほうは、Vtuberのように動くことはなく、Vtuberのナレーションに合わせておばけキャラのイラストが画面に映し出されます。

イラスト

 動画に使われているおばけキャラのイラストは、3分動画と30秒動画併せると13枚ほど用意されています。
 背景は、自転車とおばけキャラと松戸市の形をデザインした、ピンク系で可愛い印象の背景です。
 これらの画像素材は、動画のために全て1から作成したものだと思われます。

テロップ

 ナレーションのセリフには大体にテロップが付けられていて、音が無い状態でも何を喋っているのかが分かり易くなっています。
 重要だと思われる箇所には、漢字にふりがなも振られています。

動画タイトル

 開始すぐに、動画のタイトルと思われる青地に白い字のテロップが挿入されます。
 『ゆずりあう 心で走る ちばの道』
 これは、千葉県内の交通安全運動のスローガンで、各自治体が毎月10日に交通安全の呼びかけに使っていることが確認できます。

内容

 動画の内容は、千葉県自転車条例の施行をきっかけに、県民に守って欲しい自転車の安全利用ルールを、自転車に乗る前と後で5つずつ、合計10項目にまとめた『ちばサイクルール』と呼ばれる規則の紹介をしている、というものです。

 ちばサイクルールの内容というのは、教習所等で免許を取得する時に初めて教わるほど詳しい内容だと個人的に感じました。
 説明は解り易く嚙み砕かれているものの、『自転車保険の加入義務』や『飲酒運転の禁止』等、明らかに成人を対象としているものもあります。

 もう一つ、確認していただきたいものは、千葉県の交通安全県民運動基本方針です。
 子供と高齢者の安全確保、飲酒運転の根絶、ちばサイクルールの広報等、動画とほぼ一致する内容を読むと、県民一人一人の交通安全意識の向上を図りたいという行政側の要求であるということが分かります。

翌年のパウパトコラボとの内容比較

 また、動画の削除から1年経過した2022年の千葉県警公式チャンネルでは、子ども向けの交通安全啓発動画として、アニメ・パウパトロールとコラボした動画をいくつも作成しています。
 アニメのキャラクターの画像はありますが、動画の為にオリジナルで作成したものではなく、権利元から使用許可が出た商業用の画像のようです。
 ナレーションや寸劇などで分かり易く説明しているのは、キャラクターではなく警察署の職員の方々です。
 テロップには漢字は使われておらず、画像素材の漢字には全てふりがなが振られています。
 ちばサイクルール編も紹介されていますが、その中の『自転車保険』に関しては「ほけんがよくわからなかったらおうちのひとにきいてみてね」と補足して最後には保護者宛てにも説明していますし、『飲酒運転』に関しては、パウパトロールコラボを外して作成されています。

想定対象のズレ&利害の一致

 もうお分かりですよね。
 動画の内容にも『子ども向け』要素がありませんでした。

 一般的に、動画を作成するときには、誰に/どんな人に見てもらいたいのかという事も事前に想定していると思います。

●『松戸市民』に『交通ルールを守って欲しい』
●『松戸市民』に『ご当地Vtuberを好きになって欲しい』
 削除されたこの動画も、そういった想定をして動画を作成していることは明らかです。

 にもかかわらず、警察側もVtuber側もフ議連側も、三者三様の『子ども向け』要素の事について釈明しています。
 まるで『全ての交通安全啓発動画は子ども向けに作らなければならない』という暗黙ルールが存在するかのようです。

 これは、『女性や子どもを批判のダシに使いたい』フ議連側と、『女児を性的搾取していると絶対に思われたくない』警察側と、『大事なことだから子どもにぜひ見て欲しい』Vtuber側の、思惑の食い違い&奇跡の利害一致なのだと思っていますが…みなさんはどのように思われましたでしょうか。

【追記】めっちゃ言ってる…っていうのを集めてみました。

次回は…『フ議連』という認識

 ただ、忘れてはいけないなと思うのは、『胸揺れ』も『子ども向け』も、フ議連側が先に提示したカードであるという点です。

 そういった事情やノウハウがフ議連にはあるのだろうな…というのが、次回の記事の内容になる予定です。
 よろしければ、当アカウントをフォローしていただき、気長に続きをお待ちください。

 それでは、また。 

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