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[小説]アイロボ

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2021年9月の記事一覧

[アイロボ]5章1 源さん

どれくらいそうやって思いに更けていたことだろう。
日は登り街は暖かな陽気に溢れていた。
1人でいた子供に母親が駆け寄りきつく抱きしめていた。
子供はそれとともに大きな声をあげて泣いていた。
子供らしい泣き方だった。
しばらくして2人は手を繋ぎその場をあとにした。
それにしても今日は暖かな日だった。
穏やか時間が流れるこの場所で引き寄せられるように人が集まりそれぞれがそれぞれの時間を過ごしていた。

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[アイロボ]5章2 もりさん

公衆電話を見つけ指定された番号にかける。
電話口に出た男の指示通り指定の場所に向かう。
しばらくすると男がやってきた。
50を過ぎたくらいだろうか?
白髪と灰のごましおの短髪で、背は普通で小太りで人懐っこい顔をしていた。
黒のスラックスに黒のTシャツ、そして黒のジャケットに黒のハンドバックという出で立ちだった。
一見するま金融の取り立て屋のような出で立ちだ。
「おう、あんたかい?よしさんの知り合い

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[アイロボ]6章1 占い師あけみ

夕方の賑やかさはなく、暗闇が支配していた。
きっとさっきより更に寒さが増しているのだろう。
河川敷で走っている人の白い息だけが辺りをさ迷っていた。
そして河川敷に沿って煌めく光と橋の車からのライトが闇の中にはっきりと浮かびあがる。そして空を見上げるとそこには、新宿でみたよりも更に綺麗な星空が広がっていた。
僕はホームレスなのにこの中に身をおくと綺麗な景色を独り占めにしたようで誇らしくなった。
僕は

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