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【展覧会記録】Chim↑Pom展:ハッピースプリング

▼訪問展覧会

Chim↑Pom展:ハッピースプリング@森美術館

▼参考/展覧会解説記事 (作品画像等)

▼感想①:ちゃんと衝撃を受けられた事に安心

私にとって、展覧会とは”自分のアンテナの感度”を確かめる場所だと思っています。

美術史を勉強していた大学時代、Chim↑Pomさんをはじめ、ラディカルな表現をするアーティスト・作品たちと沢山触れる環境に身を置き、日々様々な刺激を受けていました。

ところが社会人になってから十数年、気づけば見に行く展覧会は大型美術館で行われる古典ばかりになっていて、コンテンポラリーなものとの接点が何故か激減していました。

仕事に全エネルギーを注ぎすぎるあまり、自分が身を置く社会の中で、見て見ぬふりをしていることと向き合う元気が残っていなかったのかな…。

”もしかしたら、前衛的なアプロ―チの作品からは、何かを感じ取る力が衰えてしまっているかもしれない"そんな思いが、ますますコンテンポラリーなものから足を遠ざけていました。

その意味で今回、『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』を見て、ちゃんと衝撃を受け、感動し、自分の中で見たものを咀嚼して行動を変えたいと思えた事は、変な言い方なのですが、少し安心した気持ちになりました。

▼感想②:印象に残った作品


『道』

『道』

工事現場のような天井の低い狭い空間から足場を上ると、そこにはアスファルトの道が!!道って誰のもの?(私見:そこは皆の場所であるべきで、様様な活動が生まれる場所なのだ)という、道の持つ公共性を問う作品でした。

不思議なもので、普段、実際の道を歩いている時は目的地に向かうための通過点として意識もしていない場所なのに、美術館の中という特異空間にあるだけで、そこに居合わせた人々の動きや頭の中がとても気になる!

道には本来、様々な人が居て、その人々にはひとつひとつの物語があって、それが行き交う特異な場所なのだということに改めて気づかされました。

『Don't Follow the Wind』

『Don't Follow the Wind』
『Don't Follow the Wind』キャプション

この作品からは、頭をガツンと殴られたような衝撃を受けました。

早々たるアーティストやキュレーターが作った作品は、東日本大震災の福島原発の事故により、帰宅困難地域の中に設置されており、今日までまだ一人も鑑賞者がいない。

そういう場所があること、それと戦う人々がいることを、東京の景色を見ながら思いを馳せてください、という非常にメッセージ性の高い作品でした。

私は東北出身で東日本大震災の時も、いろんな事に恐怖を感じ、胸を痛めたのに、いつの間にか、正直に言って関心が薄れていたことを恥ずかしく思いました。

こういう事ができるのがアーティスト、アートの力だと改めて強く感じた作品です。

『パビリオン』

『パビリオン』
『パビリオン』内部

Chim↑Pomさんは、『ヒロシマ』などの作品でメディアの批判を多く受けた過去があります。でも多くの批判にさらされている最中、彼らに声をかけて励ましてくれたのは、他の誰でもない、実際の被爆者の方々だったと言います。

この作品と向き合いながら、他人の感情を決めつけてはいないか、善とは何か、偽善とは何か、そんな事に思いを巡らせました。

忘れないこと、風化させないこと、次の世代に向けて、胸を張って受け継げる世の中を作ること。大きな事な何もできないけれど、より良い未来を創る一員でありたいという気持ち・感度だけは、少なくともちゃんと持っておきたいと感じました。

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会期は5月29日まで。是非、音声ガイドと共にご覧になることをおススメします!Chim↑Pomさんの実際のメッセージなども聞くことができます。

#Chim↑Pom #Happy Spring #森美術館  #コンテンポラリーアート

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