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斯くしてその男は冥府の階段を降りていく。オルフェゴールの話(後編)

(えみる)おはえみる。
(山田)前回の続きです。
(えみる)まとめてまとめて。

(山田)前回のあらすじ。

妖精リースに取り込まれ、結果として自死を選んだ妹。兄は科学文明の遺産を使って、彼女を模した人形とその軍勢を創りあげた。すべては『星杖』を落として地殻を割り、生と死を司る『星櫃』を目覚めさせるため。

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地殻が割れ、この惑星の核に封じ込められた『神の力』なるものが溢れ出します。

遥か昔、天の運行を司る神がいた。神は眷属である竜を使いとし、
(中略)
神は自らの手による天の運行はこれ以上不可能の判断。
創造の力をもって、幾重もの固い地殻の檻を生み出し、破壊の力をその中心に閉じ込めた。

(これらはマスターガイド6でようやくわかったことです。早めに言ってよね……。守護竜の話あたりからよくわからなくなっていたんですが、この前提があればスッと整理が出来ます)

というわけで、七つ存在する星遺物は、それぞれ対応する『守護竜』としてすがたを変えました。命名規則はカトリック教会における七元徳。七つの大罪がモチーフだったトロイメアと対象的ですね。

その中には通常モンスターが一体含まれていて(『星杯』に相当。星杯は通常モンスターテーマだからでしょうか)、通常モンスターということは、フレーバーテキストがあるということです。御覧ください。

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星鍵は流れぬ涙を流し、天命は果たされる。
神の門は嘶き崩れ、蛇は守人の夢幻を喰らう。
其の魂は始まりの地に、彼の魂は終極の地に。
――此処に神獄たる星は闢かれん。

(山田)はい。
(えみる)はいじゃないが。
(山田)このフレーバーテキスト、かなり難しいんですよ。しかし、事態が進行すれば理解できる部分もあります。マスターガイド6の力も借りて。なので、ここではスルー。あとで触れます。

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斯くして神の力の前に、妹の亡骸を捧げるお兄さん(ここで登場している三体の守護竜は、お兄さんが身につけている3種の星遺物に対応します)。しかし、そこに舞い降りたのは、妹を模して作った機械人形の姿ではなく。

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またおまえか。
イヴの亡骸の中に残っていた、妖精リースの残滓が再び解放され(Reリース)、活動を開始。ちなみに『オルフェゴール・リリース』は秀逸なカードで、他にも以下の意味がかかっています。

◯「リリース(生贄)」(効果の通り)
◯「リリース(解放)」(解き放つの意)
◯「Re.リース」(《オルフェゴール・トロイメア》に《星杯の妖精リース》の要素が見られる事から)
◯「リリース(音楽用語の『音の終わり』)」(トロイメアやオルフェゴールはカード名やデザインに音楽要素が見られる)
◯「リリス(悪魔)」(「イブ」より最初のアダムの妻であり後に「サキュバス」になったという話もある)

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イドリースとしての姿として生まれ変わります。衝動(イド)に導かれるまま、リースは再び活動を開始。その目的は『大いなる闇』を降臨させるため。次の魔法カードはその場面のデザインで、『大いなる闇』を呼び出すために、デッキからレベル9のモンスターを呼び出します。

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レベル9。
それは遊戯王のデザイン上からも、星遺物ストーリー上からの非常に特異な存在です。20年続いたカードゲームで数えるほどしか存在せず、神の権能の具現と言われる『星遺物』よりもレベルが高い。

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しかし、ここで先の『守護竜ユスティア』が、イドリースからイヴの肉体を引き剥がすことに成功します。イドリースの画像を見ればわかるのですが、胸に金の繭のような塊があるのがわかります。それと比較をすると、イドリースがどれだけ巨大化がわかりますね。

当たり前のように描かれているこのシーンですが、マスターガイドを読まないとわからない裏事情がありました。イドリースに変貌した時点でイヴの魂は消滅していたところ、自我に目覚めたガラテアが身代わりになっていたというもの。イヴの魂は星杯に転送され、ユスティアとなり、肉体を取り戻しに来たんですね。

これは山田の勝手な解釈(妄想)なのですが、ここでイヴ(レベル2)を完全に吸収できていれば、イドリースはレベル11になれたんじゃないでしょうか。

過去二回、こうしたサイドストーリーが繰り広げられたんですが、そのクライマックスには必ずレベル11の創星神が降臨し、リセットをしていきました。

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レベル9というデザインは、遊戯王において何かしらの意図がないとやらないデザインです。ただ単純に神ならレベル10にしますし(それでも創星神より低いから、ちょうどいいでしょう)。カードゲームのゲーム性の事情もあるとは思いますが(最近やたらレベル9多いし)、星遺物ストーリーとしてみれば、9+2=11の創星神を意識しているような気がしてならないのです。

話を戻して。イヴが引き剥がされて、イドリースは弱体化。

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お兄さんは『星槍』と『星杖』のちからでバベルとオルフェゴールの残骸を錬成し、ディンギルスとして進化。妹を弄ぶ邪悪なる妖精に鉄槌を下すため、直接対決となっていくのです。

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古バビロニア時代にはニンウルタ(ニヌルタ)・ニンギルスと同一視され、ヘレニズム期に蠍の尾を持つ半人半馬の姿で表されるようになる。ケンタウロスの原型であると言われる。メソポタミアの星座の1つともなっており、いて座の元となった。

この後、イドリースが呼び出した『大いなる闇』と『双穹の騎士アストラム』の戦いがあるのですが、それは省略して。

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大戦の後、彼はジャックナイツ=星の管理者として、世界の裏側で活動することになります。その手には、イヴのリボン。そしてその傍らには(見えづらいですが左手の上)小さな妖精『ガラテア』が。

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余談ですが、カードゲームのデザイン上、このカードは非常に面白い動きをします。彼女を模した機械人形ガラテアを含め、イヴには進化形態が3種類あるのですが、このカード一枚でそのいずれにもなることができます(厳密には一枚だけ一手余分にかかりますが)。どんだけ妹好きなのさ。

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斯くして、冥府の階段を降りていった男の話は終わるのですが、ここでユスティアに立ち返りましょう。

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星鍵は流れぬ涙を流し、天命は果たされる。
神の門は嘶き崩れ、蛇は守人の夢幻を喰らう。
其の魂は始まりの地に、彼の魂は終極の地に。
――此処に神獄たる星は闢かれん。

遊戯王wikiがあてにならないことで有名なこのフレーバーです。

星鍵は巫女イヴが持っている、この世界におけるキーアイテムです。なのでイヴそのものを表すと言っていいでしょう。彼女はイヴリースという姿となり、自死し、お兄さんの手で機械人形となり(流れぬ涙)、意志が芽生えます(流れぬ(はずの)涙を流し)

神の門は若干困ったのですが、メソポタミア神話ベースであることを考えると、以下の文から、バベルであることは間違いないでしょう(神の門は嘶き崩れ)。すると天命というのは、天から星杖を落とす計画だと推測します。あるいは封じられた星遺物=竜が現出することか。

アッカド語で「神の門」を意味するバーブ・イリ(ム)(𒆍𒀭𒊏𒆠、Bāb-ili(m)[5])に由来する。古代ペルシア語: 𐎲𐎠𐎲𐎡𐎽𐎢𐏁 Bābiruš、古代ギリシア語: Βαβυλών Babylōn、ヘブライ語: בָּבֶל‎ Bāvel、アラビア語: بابل‎ Bābil などはその借用である。バビロニア(古代ギリシア語: Βαβυλωνία Babylōnia)の語はバベルにもとづく。

=人類に知恵を授けた者は、まちがいなく妖精リースです。バベルの崩壊により(神の門は嘶き崩れ)、星遺物は解き放たれ、リースは鍵の守人=イヴ=ガラテアを依り代に自我を喰らい、夢幻転星イドリースとなりました(蛇は守人の夢幻を喰らう)。

其の魂は始まりの地に、彼の魂は終極の地に。

ここの読み方が難しいのですが、マスターガイド6によるとイドリースになったときにガラテアが身代わりとなり、イヴの魂は星杯(始まりの地)に転送され、ユスティアとなったという記載があります。

一方で、イヴが抜けたイドリースは、星神の器『デミウルギア』となって暴走、最終決戦へ(=終極)。その中にはリースの科学文明時代の過去のすがたがあったことから、彼の魂は終極の地に。というのは、彼女のことかと。

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――此処に神獄たる星は闢かれん。

この一文もマスターガイド6で腑に落ちました。もともと神(破壊の力)を地殻の内部に封じ込めていた設定だったのですから(最初に言って!)

星鍵は流れぬ涙を流し、天命は果たされる。
神の門は嘶き崩れ、蛇は守人の夢幻を喰らう。
其の魂は始まりの地に、彼の魂は終極の地に。
――此処に神獄たる星は闢かれん。

というわけで。
星鍵を守る巫女であるイヴは、機械人形ガラテアとなり、やがて自我を持つ。彼女にまつわる一連の計画は果たされ、星杖が地殻を穿ち、バベルは崩壊する。リースは守人イヴ=ガラテアの自我を依代として転生する。しかし、イヴの魂は星杯にあり、リースの魂は星神の器の中にある。神を封じ込めていた星は解放され、星遺物の本来の姿である守護竜が目覚める。

と読みます!

(えみる)長い!
(山田)マスターガイドないと無理ですこれ。ユスティアが出てきた当初にも色々考えたのですが、やっぱり無理で。フレーズが七つあるから、それぞれの星遺物に対応するのかなとか色々考えたんですよ(wikiはその解釈)。

とはいえ、この記事で言語化できて、わりとすっきりしました。

いま読んでる本はこれ!

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(山田)ユスティアのフレーバーにまで触れるつもりはなかったんですが、ついつい熱くなってしまいました。つかれた。

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