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『こっくりさん代行、はじめました!』

「こっくりさん、こっくりさん、おいでください」
 十円玉に乗せた指にちからが入る。机を囲んでいる残りのふたりの顔もこわばっている。蝋燭の炎がゆらめき、暗幕を締め切った理科準備室に影が踊る。はい、いいえ、鳥居、数字、それに五十音のひらがな。
「こっくりさん、こっくりさん、おいでください」
 古いおまじない。信じているわけではないが、いまのわたしたちは藁にもすがる思いだった。おとなに相談はできない。ネットなんてなおさら。でも、こっくりさんなら。かみさまならば、相談しても誰かに漏れることはない。だから、わたしたちはこんな儀式を行うことにした。
「同級生のヨミちゃんが妊娠をしてしまいました。どうしたらいいのでしょうか。わたしたちでは決めることができません。こっくりさん、こっくりさん、教えて下さい」
 隣に座っているヨミちゃんの指が震えている。そのひみつを打ち明けられたときには驚いたが、結局なにもできないまま、大きくなったおなかを誤魔化せないところまで来てしまった。産む、堕ろす、退学、結婚。いずれもまだ高校に入ったばかりのわたしたちにはあまりに重い単語であって、どうすることもできなかった。
 影が踊るばかりで、十円玉は動かない。
 みんな無言で視線をかわす。やっぱり。こんなお遊びしている場合じゃない。みんな、わかってる。『もう止めよう』と誰かが言い出すのを待っている。せめてこの話を言い出したわたしが幕を引くのが責任だよな、と思い、口を開いた瞬間。
「えっ、」
 不意に部屋のなかの空気がしんと冷え切ったのを感じた。侵入者に吠える犬のように、蝋燭の影が暴れている。明らかに何かが起こっていた。怖くなって十円玉から手を離そうとするが、どうしても離れない。残りのふたりが怯えた表情でわたしを見つめる。もう止めよう、と切り出そうとするが、口も動かない。
 す……。
 と、指を乗せていた十円玉が滑る。『う』。わたしたちは指を乗せてはいるが、それは明らかに何者かの意志で動かされていた。戸惑うわたしたちをよそに、十円玉は次の文字を目指して動いていった。『む』。『の』。

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『は』。
「まったく。呼び出しておいて怖がるんじゃないよ。傷つくじゃないか」
 ふあ、と大きなあくびをして、狐耳の青年は手に持っていた11インチの石版をスワイプした。長い石階段を抜けた先にある、ひとけのない寂れた神社。賽銭箱に行儀悪く腰掛けて、めんどくさそうに石版に指を滑らせる。すると、それに合わせて十円玉が動き、右下の枠に表示されている少女たちの顔がおどろきに染まる。
「はい、おしまいっと。こちとら花見の途中なんだ」
 軽やかにタップをし、交信終了。呑みかけの酒に手を伸ばそうとしたら、巫女服の少女がこちらを睨みつけているのに気がついた。
「賽銭箱から降りてください。罰当たりですよ」
「いいじゃないか。どうせ、誰も来ないよ、こんな神社」
 まったく。と、山田 一四(イヨ)はおおげさにため息をつく。この狐耳の青年はいつもこうへらへらしている。誰も来ないのに境内を毎日掃除しているわたしの身にもなってほしい。
「かみさまなんですから、少しは真面目に働いたらどうですか。こっくりさん」
「なんだって、真面目に働いているさ。さっきだってな、」
「見てましたよ、さっきの」
 少女たちのこっくりさんを呼ぶ声は、石版のスピーカーから流れていた。同級生が妊娠をしてしまった。深刻な相談だ。こっくりさんという古めかしい儀式に頼ったのも、おそらくその秘密は誰にも相談できないと思ってのことだろう。
 しかし、そのこっくりさんの返事は。わたしほどにもなると、石版を上を滑るこっくりさんの指の動きから、画面を見なくとも何を伝えたかはわかる。
『うむのは じぶんで きめろ』
「無責任すぎませんか。せっかく頼ってくれたのに」
 そんなことを言うと、怒られたこどものように唇を尖らせた。
「だって、ああ言うしかないだろ?」
「それにしたって、言い方があるでしょう」
「だいたい、悩み事なんて誰かに相談しようと言語化できた時点で解決なんだよ」
 それはいままでにこっくりさんから何度も言われていることだった。こんなやり取りになると、すぐにそういうことを言う。わたしの気持ちも知らないで。
「それじゃあ、こっくりさんなんていらないじゃないですか」
「そーだよ、俺はいらないの」
 いつも投げやりにそんなことを言う。まったく。わたしだって巫女の端くれ。忘れ去られたかみさまがどうなるのかなんて、十分すぎるほど知っている。少しは自分の身を案じて、『こっくりさんってすごい、ほんとうにいたんだ!』という都市伝説を復活させるような努力をしてほしいものだ。

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 こっくりさん。
 ひとむかしまえのオカルトブームのときに、日本だけではなく世界中を席巻したおまじないだ。海外ではウィジャ盤だとか、テーブルターニングとか呼ばれているものだったが、日本ではこっくりさんという名称が充てられた。可愛らしい響きではあるが、漢字に直せば『狐狗狸さん』。狐に、狗に、狸。ひとを騙すあやかしのオンパレードな名前だ。
 都市伝説として口伝えに広まっていき、多くのひとが、十円玉を動かす何者かの存在を認識していった。最初は偶然だったり、よく科学的な面から指摘される不覚筋動、つまり無意識における筋肉の緊張だったのかもしれない。でも、たしかに『それらしい』ことが少しずつ起こりはじめ、『こっくりさんが降りてきてくれた』と思うひとは増えていった。
 百匹目の猿現象ではないが、それがある値を超えた時点で、彼は神様として顕現することになった。いや、『むかしからいることになった』。どうやら神様の理屈は時系列を無視して組み立てられているようで、このあたりの話は何度聞いてもちんぷんかんぷん。
 どうして、わたしが巫女として務めているこの神社に棲み着いているのかはいまでもわからないが、たぶんわたしの血筋がむかしから『狐憑き』と呼ばれていたことに関係があるのかもしれない。
「こっくりさんは男のひとなの?」
 と幼いころに聞いたことがあった。
「ふふん。お前にはそう見えるのか。じゃあ、そうなんだろうぜ」
 どうやら狐耳のだらしない青年を思い浮かべているのは、自分の脳、というか性癖らしかった。まあ、それは否定しない。怠けていなければ、ほんとうに神様だと思うくらいきれいな顔立ちをしているし。それにどことなくむかし好きだったアニメのキャラクターにも似ている。
 タブレットを使っているのも、わたしの脳が認識しやすいように変換されているものらしい。では、その正体は? ほんとうはどんなすがたをしているのだろう。何を使っているんだろう。尋ねたことがあったが、いつもはぐらかされていた。

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『しるか じぶんできめろ』
 また石版をすいすいと、もうタブレットでいいか、タブレットをすいすいとスワイプして、そんなやる気のないメッセージを送っていた。どうやら例の女子生徒がいる学校で、にわかにこっくりさんの都市伝説が活気づいてきたらしい。そりゃそうだ。実際に目の前で不思議なちからによって十円玉が動き、(やる気がないとはいえ)偶然ではない、意味のあるメッセージが返ってきたのだから。
「でも、こんなメッセージばかりじゃ飽きられちゃいますよ」
「知るか」
 こっくりさんは縁側でごろんと背を向けた。春のうららかな日差しが暖かい昼下がりだった。わたしは境内の掃除が残ってはいるが、何もなければ、彼のもふもふの尻尾に抱きついて、幼い頃のようにお昼寝がしたかった。とりあえずそんな背中を足袋で蹴りつける。
「真面目にやってくださいよ」
「いって」
 こっくりさんはこちらを振り返らずに、乱暴にあたまをかいた。
「だいたい真面目にやってもキリがないぜ。19世紀末には寝る暇もなかった。まあ、そのおかげであのころは神通力もあったんだがな。いまではこのありさま」
 わたしが生まれた頃には、もうこっくりさんは『古いおまじない』のカテゴリに入っていた。だからバリバリやっているころのこっくりさんを知らない。1999年の夏を境にノストラダムスさんがやらかしたせいでオカルトブームは下火となり、それから再び火がつくことはなかった。あのころは消えゆくかみさまを多く見た。みんなどこか満足げだったのが印象に残っている。あんなふうにこっくりさんが消える。そんなことを思うだけで、背筋が冷たくなる。
「ほどほどがいちばんさ」
「……おじいちゃんみたい」
「まあ、そんなもんだ。長生きすりゃわかる」
 掛ける言葉が見つからなくて、陽光の当たる縁側で寝転ぶかみさまの背中をじっと見つめていた。不意に気をそらせば、いま目の前に確かにあるこの存在が、ふっと消えてしまいそうな気がしてならなかった。まあ、いびきとかしはじめたし、そんなセンチな気分は消え失せたんだけど。
 もう少ししっかりしてくれれば、素敵なんだけどな。
 そんなことは本人には絶対に言ってやらないけど。
「少しだけ、わたしもサボる」
 と、起こさないように縁側に腰掛けた。

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「こっくりさん、こっくりさん、おいでください」

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「ちょっと。タブレット、鳴ってますよ。交信来てますって」
 と、かみさまを揺するのだけど、いびきをかくばかりで一向に起きる気配がない。というか、こっくりさんのマイペースが崩されたところは、いままで一度も見たことがなかった。……どうしよう。いままでは滅多に呼び出されることがなかったからよかったものの、いまはたぶんあの学校で話題になってしまっている。興味本位で『やってみようぜ』となっているか、あるいはどうしても抱えきれない悩みを持っていて藁にもすがる思いで十円玉に指を乗せているか、そのどちらなのかはわからないが、いずれにせよ、ここでこっくりさんが降りてこなければ、がっかりさせてしまう。
「……どうすれば」
 焦るわたしを急かすように、タブレットは鳴動し続けている。ちなみに着メロはかごめかごめだった。画面には『交信』のポップアイコンが踊り、こっくりさんの儀式が行われている住所が表示されている。さらに鍵のようなアイコンも表示されていて、『下にスワイプしてロックを解除』と表示されていた。まじでタブレットじゃん。
「起きないなら、やっちゃいますよ。わたし」
 これもこっくりさんを思ってのことだ。と内心で言い訳をして、鍵のアイコンをスワイプ。指紋やパスワードを要求されると思ったのだけど、拍子抜けするほど簡単にロックが解除された。『LINNE』とか『Faithbook』とか書かれたアイコンが並び、壁紙はなんと幼い頃のわたしだった。
 わたしだった。
 巫女服の。
 しかも、カメラに気づいていない、若干盗撮チックな。
「もう」
 なんだかよくわからない感情を胸に抱きながら、鳴動するタブレットで我に返る。それどころじゃなかった。ようやくこっくりさんの信仰が一部地域で戻りかけているところだ。彼をこの世界から消さないためにも、学校七不思議くらいになるまで定着させてやらないといけない。ふんすと気合を入れて、『交信』のボタンを押した。
『こっくりさん、こっくりさん、おいでください』
 画面に映し出されたのは、学校の教室のようだった。部屋の隅に掃除道具やなんやらが雑に置かれている辺り、倉庫として使われている空き教室なのかもしれない。暗幕が引かれていて、蝋燭の明かりだけが光源だ。教室の中央にぽつんと置かれた机を囲むように、三人の人間が座っている。
「あ、」
 驚いたのは、そのひとたちが制服を着ていなかったことだ。生徒じゃない。スーツに身を包んだ女性教師が三人、こっくりさんを執り行っていたのだ。これは、イケる。おとながやりだすくらいまで、この学校ではこっくりさんが知れ渡っている。だが、これで安心しちゃいけない。結局こっくりさんに聞いても『自分で考えろ』みたな返事しか返ってこないとなると、水の泡だ。ここでガツンとベストアンサーを返してやらないといけない。
『こっくりさん、こっくりさん、おいでください』
 はい、いいえ、鳥居、数字、それに五十音のひらがな。三人の人差し指が置かれた十円玉は、まだ鳥居の位置にある。わたしが持っているタブレットの画面は、その盤面を俯瞰するようなかたちになり、十円玉に当たるエリアが点滅していた。
「……ええと、」
 指を当てようとして躊躇う。ここに指を乗せれば、きっと、わたしがこっくりさんとしてメッセージを伝える役となる。それは、こっくりさんの仕事。いわば、神の御業だ。ほんとうにいいんだろうか。戸惑いながらこっくりさんを見れば、まだいびきをかいて眠っていた。
「もう!」
 わたしは思い切って、人差し指を画面に当てる。すると、画面の奥の風景が揺らぎ、《access complete》なんて表示がされた。英語なんだ。画面右下にワイプで抜かれた教室の映像では、三人が戸惑いながら目を合わせている。席から離れようとする者もいるが、指が離れない。どうやらこれでこっくりさんが降り立った、ということらしかった。
 よし、と指を動かそうとするが、そういえばまだ相談事を聞いていない。さあ、このこっくりさん代行に何でも相談しなさい。と胸を張っていると、スピーカーに僅かなノイズが走った。
『こ、こっくりさん、こっくりさん。わたしは……』

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【相談】

 恋をしています。片思い、だと思います。ええと、お恥ずかしい話なんですが、わたしが恋をしているのは同僚ではなく、生徒会長の。ええ、生徒です。生徒と先生の関係で。想っちゃいけないと何度も自分を戒めましたが、仕事柄、彼と触れ合う機会が多く、もうこの恋の炎は止められないところまで来てしまいました。墓場まで持っていくつもりだったのですが、このあいだの飲み会で箍が外れ、同僚のふたりに漏らしてしまったのです。そこで、いま生徒のなかでにわかに噂になっている『こっくりさん』の話を聞き、子供のころ以来ですが、半信半疑でやってみようと。まさか。ほんとに。あの、わたしのこの想いは伝えるべきでしょうか。こっくりさん、こっくりさん、教えて下さい。

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「ええと……」
 タブレットを前に固まるわたし。どうしよう。困った。思ったよりも重めのやつがきた。とはいえ、他の誰にも話せないような、わざわざこっくりさんをするしかないような悩みが飛んでくるのだから、こういうものなのかもしれない。
 さて、どうしよう。
 眠りこけているこっくりさんを見ると、まだいびきをかいている。二、三回蹴り上げたが、反応なし。いっそ見なかったことにして電源(?)を切ろうかとも思ったが、さきの自分の決意を思い出して、踏みとどまる。こっくりさんの実在を信じ込ませる千載一遇のチャンスだった。しかも、学生ではなく、大人。学生よりも広いネットワークを持っている。
 女性教師の独白をあたまの中で反芻し、わたしは指を動かした。
『え』『え』『と』。

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【回答】

 ええと あなたの きもちは よくわかりました そういうのって つらいですよね いたばさみといいますか わたしもよくわかります ああ わたしっていっても わたしは こっくりさんなのですが はじめまして わがはいが こっくりさんです さて なんじのしつもんにこたえるとしましょうか ええと あなたのおもいはほんものですから せいととせんせいなんてもんだいではないとおもいます そっちょくにつたえるべきかと ああでも そういう ふしょうじきくなー にゅーすでみるなー こっくりさんのせいでつかまったとかはまずいよなー こほん おとなになってからのほうが そうだ そつぎょうしてからてをだすのはどうでしょうか てをだすなんてげひんないいかたでした すみません つつしんでていせいします その あたかく じゃない あたたかくみまもってですね そこでかれがこいをみつけてもいいじゃないですか かれのじんせいです それとどうじに あなたはあなたのじんせいをいきているのです ときがきたら しんしにつたえる それをあいてがうけいれてくれるかどうかは あいてのもんだいだとおもいます それと

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「長い長い長い」
 夢中で指を動かしていると、いつのまにか起きてきたこっくりさんにタブレットを取り上げられた。ぴょんぴょん跳ねて取り返そうとするが届かない。
「なんですか、いまいいところだったのに」
「いくらなんでも長すぎるだろ。術者の指は十円玉から離れられないんだからさ、そんな速度で長文打ったらダメだって。ほら、みんな椅子に座ってられずに立ち上がってる」
「……ほんとだ」
 その画面を見せられてはぐうの音も出ない。たしかに張り切って入力しすぎた。しかもひらがな入力だから(当たり前だ)、ひとつ伝えるにしてもどうしても移動が多くなってしまう。指が離せないところでぐいぐいと振り回されて、女性教師たちには悪いことをした。気のせいか、三人の立ち位置も変わってるし。わたしが夢中で入力しているあいだに、ぐるぐると机の周りを回っていたのかも知れない。
 こっくりさんが画面を何度か操作すると、スピーカーから《your kokkurisann is disconnected》ってすごい流暢な英語が流れてきた。中華イヤホンのBluetoothみたい。
「あの。勝手に触ってごめんなさい」
「ん。まあ、寝てた俺も悪い。それにイヨのこっくりさんも悪くはなかったぞ」
「ほんとに?」
 わたしの回答をリアルタイムで三人のおとなが注視していると思うと、半ばパニックのようになってしまって(しかもバックスペースとかできないじゃん?)、後半自分でも何を言っているのかよくわからなかったけど。
「俺はさっさとこっくりさんなんて忘れ去られて欲しいんだけどさ。まあ、イヨがそこまで熱心にやりたいのなら止めはしない。鳴ってたら好きに使っていいぞ、このタブレット」
「はい?」
「頑張れよ、こっくりさん代行」
 タブレットを手渡され、わたしは首を傾げたまま。なんか、うまくしてやられた気がする。あのとき起きなかったのはわざとなんじゃないかとも思う。でも、いずれにせよ、こっくりさんは、この神様は、この世界から消えようとしている。それは絶対にダメだ。わたしがおばあちゃんになって寿命で死ぬまで、しっかりとここで存在してもらわないといけない。そのためには、わたしがこの指を駆使して、こっくりさん代行を遂行するしかないのだ。
「……わかりました。この山田イヨにお任せください。こっくりさんの知名度を復活させて、そうですね、いずれノストラダムスくらいにこっくりさんでこの世界を恐怖に陥れてやりますから」
 わたしの真面目な決意表明に、かみさまは『楽しみだよ』と言って笑うのだった。

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『こっくりさん代行、はじめました!』

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『こっくりさん、こっくりさん、おいでください』
 またどこかでわたしを呼ぶ声がする。もう聞き慣れたかごめかごめのメロディーに掃除をしている手をピタリと止め、社へと走った。こっくりさん、どこですか。タブレット貸してください。今日はどんな相談事が来るのだろうとあたまのなかで考えながら、音の鳴る方へと。
 厠の扉の向こうから、震えるような声が聞こえてきた。
「ええと、今回はパスとか出来ないかな。ちょっとお腹の調子が……。このあいだ押し入れから見つけたプリンがいけなかったのかな。賞味期限、昭和だったもんな。ちょっとすぐには、うっ、出られなくてさ」
 どんどんどんどん扉を叩く。
「いいから。タブレット、渡してください。務めを果たしますから」
「いや、ちょっといまひとにはお見せできない状態でして……」
「この扉、鍵が壊れてて外から開けれるんですよ。はい、開けますよー」
「やめてー!」
 かごめかごめの音色に混じり、神様の情けない悲鳴が4月の空にこだまするのだった。

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続く?
続かない?
こっくりさんに聞いてみよう。

(たぶん第三話くらいで、どこかの座敷わらしとかが相談に来る)

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