見出し画像

#このハヤカワ文庫がすごい総選挙の結果発表と、おすすめ本の紹介!

おはえみ!

『#このハヤカワ文庫がすごい総選挙』の結果が先日発表されたので、おすすめ本を紹介します。ちなみにわたしは以下のとおりエントリーしていました。

さてさて、結果は。

ランキングの詳細は先のブログを見ていただくとして、その中でも特におすすめな作品をピックアップします。

地球を訪れたエイリアンとのコンタクトを担当した言語学者ルイーズは、まったく異なる言語を理解するにつれ、驚くべき運命にまきこまれていく……ネビュラ賞を受賞した感動の表題作をはじめ、天使の降臨とともにもたらされる災厄と奇跡を描くヒューゴー賞受賞作「地獄とは神の不在なり」、天まで届く塔を建設する驚天動地の物語--ネビュラ賞を受賞したデビュー作「バビロンの塔」ほか、本邦初訳を含む八篇を収録する傑作集。

堂々一位! 通称ばかうけです。

画像1

前から読みたい作品だったので、映画化されるときにこれはチャンスと思って読んだ記憶があります。結局映画は見ていないのですが。文章であるから書けているような宇宙人の描写があって、あれって映画だとどうしていたんだろうとずっと思っています。

ヘプタポッド(7本脚)と呼称されるそれらは2つの言語を持っていた。発話言語であるヘプタポッドAは自由語順と中央に埋め込まれた句による多くのレベルの存在が特徴となっている。一方で書法体系であるヘプタポッドBは発話言語とは全く異なる構造であり、単一の表義文字(セマグラム)を文章全体の意味を変えることなく抜き出すことができないという複雑なものであった。

上位にランクインするとは思っていましたが、まさか一位とは予想外でした。夏への扉とかだと思ってた。この未来視的なSF短編はそもそもが大好物なので、印象深く記憶に残っている作品です。


人類は火星へ火星へと寄せ波のように押し寄せ、やがて地球人の村ができ、町ができ、哀れな火星人たちは、その廃墟からしだいに姿を消していった……抒情と幻想の詩人が、オムニバス中・短篇によって紡ぎあげた、SF文学史上に燦然と輝く永遠の記念碑。新たな序文と二短篇を加えた〔新版〕を底本とする電子書籍版登場

pixivオリジナル小説クラスタの自主企画で、あるSF短編を投稿したところ、講評で『やっていることはブラッドベリの火星年代記。このテーマでやっておいてこれを読んでいないとは言わせないし、もう少し個性が欲しかった』というコメントがありました。慌てて図書館に行って読んだ記憶があります。なつかし。

西方の辺境の村にて「アトランティス王国滅亡の原因はこの世の外にある」と知らされた哲学者プラトンは、いまだ一度も感じたことのなかった不思議な緊張と不安を覚えた……プラトン、悉達多、ナザレのイエス、そして阿修羅王は、世界が創世から滅亡へと向かう、万物の流転と悠久の時の流れの中でいかなる役割を果たしたのか?——壮大な時空間を舞台に、この宇宙を統べる「神」を追い求めた日本SFの金字塔。

寄せては返し、返しては寄せ。何度読み返したかわかりません。
SF小説を書くときにはすきあらばオマージュを入れています。

新星雲記 双大陽 青93より黄17の夏 アスタータ50における惑星開発委員会は「シ」の命を受けアイ星域第三惑星にヘリオ・セス・ベータ型の開発を試みる事になっ・・・・・・た これによって惑星開発委員会が原住民に与える影響 すなわち「神」としての宗教の発生 神が実在であると説くより なぜ惑星開発委員会が実在すると説かなかったのだ!!」
なぜ弥勒はだまって自分の出番まで待っている!? なぜ弥勒は説明しない? どんな末世が来るものか? どんな破滅が起こるのか? ・・・ まこと 救いの神ならば 破滅の到来をこそ防ぐべきだ!」

もう何度読み返したかわからないくらい好きなSFです。プラトンとゴータマ・シッダールタとナザレのイエスと阿修羅王の、時空を超えた冒険譚ですよ!? ポストアポカリプスものを書くときには必ず意識をしている作品で、特に弥勒の未来仏にSF的な設定を持たせたのが好きです。あと、ロボになったオリオナエのせりふが全部カタカナなの、ほんとに読みづらい!!!

西暦2803年、植民星メニー・メニー・シープは入植300周年を迎えようとしていた。しかし臨時総督のユレイン三世は、地中深くに眠る植民船シェパード号の発電炉不調を理由に、植民地全域に配電制限などの弾圧を加えつつあった。そんな状況下、セナーセー市の医師カドムは、《海の一統》のアクリラから緊急の要請を受ける。街に謎の疫病が蔓延しているというのだが……小川一水が満を持して放つ全10巻の新シリーズ開幕篇。

この歴史に残るであろう長編SFを途中からとはいえ、リアルタイムで追えたことには感謝しかありません。小川一水がやりたいことをすべて詰め込んだ長編シリーズ。どうか、みなさん、1巻上下をわずかな違和感とともに読み終え、そして2巻のあらすじを読んでください。「そこから!?」ぼくと同じおどろきを味わって欲しいのです。

そして『そこから』の物語を一緒に歩んでいきましょう。絶望とともに。
ーーミスチフ、ミスチフ。


時空を超えたあらゆる時と場所に波動現象として存在する、ウィンストン・ナイルズ・ラムファードは、神のような力を使って、さまざまな計画を実行し、人類を導いていた。その計画で操られる最大の受難者が、全米一の大富豪マラカイ・コンスタントだった。富も記憶も奪われ、地球から火星、水星へと太陽系を流浪させられるコンスタントの行く末と、人類の究極の運命とは? 巨匠がシニカルかつユーモラスに描いた感動作。

シニカル。シニカルとはまさにこのこと。この壮大な物語の、ことばを失うような終わり方を味わってほしい。それをポジティブに捉えられるのなら、きっと人生観が変わるような一冊になると思います。

爆笑問題の事務所『タイタン』の元ネタでも有名ですよね。

「時間等曲率漏斗」(クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム)とか「そうなろうとする万有意志」 (Universal Will to Become, UWTB) などのネーミングが好きで、よく自作に引用しています。

ぼくの母さんは中国人だった。母さんがクリスマス・ギフトの包装紙をつかって作ってくれる折り紙の虎や水牛は、みな命を吹きこまれて生き生きと動いていた……。ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝いた表題作ほか、地球へと小惑星が迫り来る日々を宇宙船の日本人乗組員が穏やかに回顧するヒューゴー賞受賞作「もののあはれ」、中国の片隅の村で出会った妖狐の娘と妖怪退治師の「ぼく」との触れあいを描く「良い狩りを」など、怜悧な知性と優しい眼差しが交差する全15篇を収録した、テッド・チャンに続く現代アメリカSFの新鋭がおくる短篇集

いま大躍進を遂げている中華SFの急先鋒、ケンリュウです。これがはじめての中華SFだったので、ここまでの完成度で……と驚きました。『三体』も熱いですよね。まとまった時間で一気に読みたいものです。

ここまで。
名前は聞いたことはあるけど読んだことがない本も多く(ハインラインとか)、死ぬまでに読んでおかないといけない本がめちゃくちゃあるのだと気付かされましたね。

このあいだの記事でも書きましたが、本読みの醍醐味は出逢いだと思うのです。こういうランキングだったり、以下のアンソロジーだったりで、自分のこころに刺さるような作者を見つけたときには、胸が踊りますよね。

「2010年代、世界で最もSFを愛した作家」と称された伴名練が、全身全霊で贈る傑作アンソロジー。日常的に血まみれになってしまう奇妙な家族のドタバタを描いた津原泰水の表題作、中島らもの怪物的なロックノベル「DECO-CHIN」、幻の第一世代SF作家・光波耀子の「黄金珊瑚」など、幻想・怪奇テーマの隠れた名作11本を精選。全作解題のほか、日本SF短篇史60年を現代の読者へと再接続する渾身の編者解説1万字超を併録。

中島らも、名前は知っていたんですが、『DECO-CHIN』が読めてほんとう良かった。まだうまく言語化できていないし、飲み込めてもいないのですが、こういうガツンと来る短編は久しぶりで、それだけで満足しちゃいました。

以下は、ランクインしていなかったけれど、ツイートで書いた山田のおすすめのSFです。

超情報化対策として、人造の脳葉〈電子葉〉の移植が義務化された2081年の日本・京都。
情報庁で働く官僚の御野・連レルは、情報素子のコードのなかに恩師であり現在は行方不明の研究者、道終・常イチが残した暗号を発見する。
その“啓示"に誘われた先で待っていたのは、ひとりの少女だった。
道終の真意もわからぬまま、御野は「すべてを知る」ため彼女と行動をともにする。それは、世界が変わる4日間の始まりだった――

サイバーパンク系のぶっ飛んでるSFならこれ。野崎まどですし。

なにかと話題の野崎まどです。『正解するカド』、懐かしいですよね。ヤハクイザシュニナはもっと最後まで超然としていてほしかったです。さて、『know』ですが、ほんとうにおすすめです。一冊で完結するSFを勧めるなら、必ず話題に出します。特にラストバトルの超常さと、最後のページを捲ったところに書いてある一文。ぜひ読んでください。まさに知るための物語です。

西暦二〇〇六年、水星から突如噴き上げられた鉱物資源は、太陽をとりまく巨大なリングを形成しはじめた。日照量の激減により、破滅の危機に瀕する人類。いったい何者が、何の目的で創造したのか? 異星文明への憧れと人類救済という使命の狭間で葛藤する科学者・白石亜紀は、破壊ミッションへと旅立つが……。

わりとガチめなハードSFがお好きならこちら。野尻さんですし。

勝手にひとの恒星にダイソン球を建造するんじゃないよ!って物語です。これでピンとセンサーが反応した方は読んで損はない作品です。ぼくは一度読んだことも忘れて、あらすじだけで「おっ、面白そうじゃん」と二回買ってしまったほど、びんびんくる設定です。

もともと中編小説だったのを膨らました作品なので、最初の一章だけ味わうのもありだと思います。きれいにまとまっています。

それは人間の普遍的な願い。彗星都市での生活に閉塞感を抱く少女と、緩衝林を守る不思議な少年の交流を描く「都市彗星のサエ」から、“祈りの力で育つ”という触れ込みで流行した謎の植物をめぐる、彼と彼女のひと冬の物語「グラスハートが割れないように」、人類から“未知の探求”という使命を与えられたAI宇宙船エクスの遙かな旅路を追う表題作まで、様々な時代における未知なるものとの出逢いを綴った全6篇を収録。

小川一水の話になるとついつい天冥の標の話ばかりしてしまうので、こちら。小川一水を勧められたときに、最初に紹介された短編集です。

AIクラスタ宇宙船が、好奇心を旗印に宇宙を旅する物語。数多くのAIがめいめいに議論しながら、宇宙人とコミュニケーションしたり、騙されたり、信じるかどうか迷ったりします。ハードな感じじゃなくて、わちゃわちゃ騒いでる感じが可愛くてとても好き。

ヒマラヤで氷河湖が決壊した。下流のダム湖に浮かび上がったのは、なんと古代の「方舟」だった。こんな高地になぜ文明の跡が?いぶかる調査隊をさらに驚愕させたのは内部から発見された大量の木簡。それらにはみな、不思議な蓮華模様が刻まれており、文字とも絵とも判然としなかったが、なんらかのメッセージを伝えているのは確かだった―。一体、何者が、何を伝えようというのか?第3回小松左京賞受賞作『神様のパズル』に続く、傑作長編SF、待望の文庫化。

機本伸司ばかり読んでた時代があります。ハードよりのSFで、ミステリ感覚でぐいぐい読まされます。ちなみにこのあらすじにある曼荼羅を解読すると遺伝情報が出てきて、それを合成すると、三つ目の赤子が誕生します。わくわくしますよね。『know』もそうですが、曼荼羅模様にSF的な情報量を組み込む設定が大好物です。まぁ、ハヤカワじゃないんですが。


さて、ハヤカワSFランキングの話はここで区切りです。


朝、Twitterで見て驚きました。

『プロジェクトぴあの』のあとがきにて、『脳梗塞を患い二桁の足し算もできなくなってしまったので、これはハードSF作家としての遺書だと思ってください』と書いてありました。

山本弘はむかしに父に勧められた『神は沈黙せず』が印象深く残っています。膨大な知識量から繰り出されるSF、哲学、オカルト……それらが結ばれていく物語。見どころをあげればキリがありません。ファフロッキーズ、サールの部屋、ライフゲーム、フェッセンデンの宇宙、いろんな単語をこの作品で知りました。

月面に突如として(あらゆる宗教の)神に見える顔が浮き出たり、ある物書きが世界の在り方に気づいて暴走したり、赤ん坊がファフロッキーズしてきたり。特にパイオニア減速問題に絡めたウェッブの網目(たぶんこれは創作)のくだりが好きでした。この宇宙は、地球を中心に一光年の範囲しかシミュレートされていない。そして、フェッセンデンの宇宙のように、それを覗き込んでいるのは……。覗き込まれている側である、我々の役割は。

ああ、実家で読んだのですから、もう15年近く前の読書体験なのに、ここまでしっかり思い出せます。当時のぼくには多くのことが衝撃的な作品でした。SFの原点です。山本弘はそんな思い入れの深い小説家です。

幼い頃に災害で両親を失い、神に不信感を抱くようになった和久優歌。フリーライターとなった彼女はUFOカルトを取材中、ボルトの雨が降るという超常現象に遭遇。それをきっかけにオカルトの取材を始めたが。

ご無事でなによりだったのですが、『ご存命の好きな作家』が亡くなってしまうということがあり得るのだといまさら実感しました。

今年は変な年で、小さな頃に面倒をよく見てくれた祖父が亡くなり、また、趣味のオフ会の主催者もまだ若いのに亡くなってしまいました。なんだか急で。祖父ともう会えないという実感は正直言ってまだないですし、彼とはまだデュエルができる気でいます(勝ち逃げされました、許されない!)。

ほんと、急にいなくなる。
なにかと『死』を意識してしまう一年です。

というわけで、いつか読もうと思っていた山本弘の短編集を買いました。

”宇宙の真の姿”について独創的な理論を構築した宇宙物理学者。だがこの理論に従うと宇宙はわずか8日前に誕生したことになる。恋人と自分の実在を確かめようとした彼は……表題作ほか4編収録。

前回の記事はこれ!

♡数で記事の自己評価をしています。ぜひぜひ♡を押してください(*´ω`*)


いただいたサポートは、山田とえみるさんの書籍代となります。これからも良い短編小説を提供できるよう、山田とえみるさんへの投資として感謝しつつ使わせていただきます!(*´ω`*)