虹 世界の旅4 吉本ばなな

大阪から飛行機で帰る途中、空港でみつけた。
吉本ばななさんの世界の旅シリーズ、そういえば不倫と南米は東京駅で買った。
移動しているとき読むと、とても身にしみる感じがする。

タヒチとボラボラ島が舞台。
「日本で幸福を見つけるためにもがいているまじめな男女の話」
主人公の女性は南の島で、新しい生き方を選択する準備をしている。

ばななさんの精神的な洞察はいつもはっとさせられる。
「人は旅先ではしょっちゅう子供に戻ってしまう」
すっかり違って見える世界では、子供に戻って改めて体験するしかない。彼女は水上コテージに泊まり、ラグナリウムツアーでレモン色の鮫をみる。
「よく知らない人なのに縁があってなぜかちょっとだけの時間を深く共有する存在と、
たまに出会うことがある。そういう人たちは、なにかしら、そのときの生き方にかかわるヒントを持っている。」
「問題はたくさんある。しかし、芯にある本当の姿を見極めることができてさえいれば・・・」


「自然な時間の流れに乗っていない、都会人のあわてた、欲深い行動、何もかもが有償であることがとてもりかいできなかった。」
「わざわざものごとをややこしくして、楽しみを求めすぎているように見える」
「たとえば観光客を呼ぶためにお金をかけて作った新しくてぴかぴかの施設でも、その場所を愛情持って育てていこうとしなければ、その施設はたいていつぶれた。
ところがそこに、誰か一人でも土地にも客にも覚えてもらえるような、力のある人物がいさえすれば、
面白いほど効果があって、その施設はたいてい悪天候とか不況たどかのいろいろなことを乗り切って続いていくのだった。」

10年近くリゾートホテルに勤めていた時、この言葉に何度も助けられた。地震など自然現象でお客さんが激減しても、毎年一日は神主さんに来ていただいてご祈祷をしたり、観光協会の飲み会にちゃんと参加しているだけでも、なんとかリピーターのお客様などに助けていただいたりして乗り切っていったりする。非日常を日常とする仕事は、人の表とも裏とも接しなくてはいけないから、つらさやしんどさがあっても続けてしまうのは、夜のとばりが下りる山の空気や、暖炉の炎、その土地の光を観る世界をともに創り上げているという自負だったのかもしれない。

ボラボラ島の水上コテージで、毎日海を見て過ごす。
真っ青な空と海、燃えるような夕焼け。理想だと思うけど、
「よほど精神性を鍛えていないと、ああいう研ぎ澄まされた美しさがそこかしこにあるところに調和して暮らせない」

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