間宮兄弟

間宮兄弟 江国香織

兄・明信35歳、弟・徹信32歳
「恰好わるい、気持ちわるい、おたくっぽい、むさくるしい、だいたい兄弟2人で住んでるのが変」
「そもそも範疇外、ありえない。いい人かもしれないけど恋愛関係には絶対ならない」
読書と音楽と野球と映画をビデオで見ることプラモデルにパズルが趣味。

この兄弟が、なんともいとおしいのです!

昔馴染みの商店街で毎日買い物をし、母親の誕生日には必ず二人で(母親がリクエストする)レストランへ一緒に行き、花火大会を計画したら二人で浴衣を作りにいく。
年に一度、静岡に住んでいる母親に贈るために二人で写真をとりに行く。
二人で一時間かけて3本ずつビデオを借りて、一日中見る週末。
パズルは始めると止まらないので「おもしろ地獄」
本や音楽の嗜好は違うけど、お互いの嗜好を尊重し、感想を述べ合う。
ひょろっとした兄と、こぶとりの弟。
気持ちを伝えられない兄と、性急に思いを伝えすぎる弟。
切ない恋を一杯して、一杯傷ついて、それでもまた誰かに運命を感じてしまう兄弟。

ビデオ屋の直美ちゃんもその妹も、先生の依子さんも、同僚の大垣さんやその奥さんも
彼らと出会った人は、彼らの愛にこたえてあげられないけど、かわりにささやかだけど大切なものをもらう。
それはまわりがどう思うとか関係なく彼らが毎日こつこつと築き上げてきた生活からにじみ出る、
ほんとうの居心地のよさと、ちょっとした品のよさ。
誰かの悪口も愚痴も言わない、失恋しても弟は一人新幹線を見に行く。
こどものころは苦手な相撲を取らされたり、学生の頃は彼女を作らなくちゃとコンパに行きまくったり、
でも、もうそんなことしなくていいんだ。
兄は海の見える縁側でスイカを食べながら思う。
子供の頃から同じ思い出を共有し、同じことでくすくす笑ったり、お互いの違いを認め合える。
兄弟っていいよね。そして、間宮兄弟がうらやましいと思える。

読んだ後、なぜかわからないけど、トトロを思い出した。
街の中に住んでる、不思議な二人。もし出会えて、カレーパーティーに呼ばれたら、
それはきっと素敵なことがはじまるしるし。

カテゴリ>芸術と人文>文学>小説(2005年レビューより)

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