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魔法の粉をかける時間

誰にも理解されないだろうし、誰かにわざわざいうようなことではないけれど、密かに愛でている自分だけの大切な時間や作業というものはありますか?

私にとってのそんな時間や作業は、お気に入りの透明のコップを洗って、そしてぴかぴかになったそのコップに透明なお水を注ぐことです。

私のそのお気に入りの透明のコップというのは、大阪に引っ越してきた時に百貨店で買ったスイス製の耐熱コップ。お水もお白湯もどちらも飲めるし、やわらかいフォルムが絶妙で、おうちにいるときは常に手元に置いているくらい気に入って使っています。

常に何か飲み物を入れているので(しかもたいていがお水です)、うっかり洗う機会を逃してしまうこともしばしば。その「うっかり」の隙間に「そうだ、洗っておこう」と思って洗うその時間が、私は好きなのです。

洗うといっても、ただ食器用スポンジに洗剤をつけて洗うだけではだめ。日頃リップクリームのついた口で水を飲むので、どれだけ擦ってもコップの淵についた油分は簡単には落ちなくて、くすみが残ってしまいます。

私のとっておきの秘密は、スポンジに「魔法の粉」を一振りかけてから洗うこと。この「魔法の粉」をかけると、どんな食器もぴかぴかになる。洗った仕上がりがいつもと違うことを実感できるのです。「魔法の粉」を一振り分混ぜた洗剤で透明のコップを丁寧に洗えば、まるで新品のように、光を浴びてぴっかぴかに輝くのです。

その「魔法の粉」とは・・・そう、重曹。

炭酸水素ナトリウムである重曹は弱アルカリ性のため、酸性の汚れを中和してくれるそうです。透明のコップをくすませている「手垢」「皮脂」「リップの油分」は全て酸性の汚れなので、重曹を混ぜて洗うと汚れが中和されて綺麗に落ちます。しかも粉なので、研磨効果も発揮されます。つまり重曹は化学と物理のダブル攻撃で、食器たちに新品同然の輝きを取り戻してくれるのです。科学こそ魔法!

こんな私の好きな作業は、誰にも理解されないだろうし、ものすごーく地味なことなのだけど、それでも私は好きなのです。重曹を一振りスポンジにつけて、自分の透明のコップをぴっかぴかに磨いて、そうして、輝くコップにミネラルウォーターをとくとくと注ぐその瞬間が。


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