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寝袋で寝る女

私と夫はまだ正式には一緒に住んでない。2週間後に新居への引っ越しを控えているところだ。でも色々と事情あって、引っ越しまでの2週間、夫は私の家に住んでいる。

私の部屋は23m2の1DK。つまり狭い単身用の物件だ。少しでも部屋を広く見せるため、ベッドは買わずに、簀子の上にマットレスを置いている。マットレスは当然シングルサイズ。

そうすると、問題が発生する。お泊まりなら我慢できた(?)シングルのマットレスも、住むとなるとたとえ2週間でもお互いにストレスがたまる。圧倒的に狭い。シングルはやはり、おひとり様用なのだ。好きな姿勢で眠れないことに加えて、掛け布団の取り合いが起きる。私たちは背中を向け合って少しでも広く陣取ろうとしあうので、シングルの掛け布団は両端に引っ張られ、そこに防寒の隙が生じる。しかも、マットレスは窓際に置かれているため、冬季の今、床に溜まる冷気が容赦なく間隙をついてくるのだ。これが原因で、布団を取った取ってないの小競り合いが勃発する。実に深刻な最近の課題であった。

引越しまでたとえあと2週間でも、このままではお互いの心と体によくない。特に最近の寒波に鑑みれば、1日でも早い事態の改善が必要だ。さもなければ、我々の精神は気付かぬうちに蝕まれ、不要な喧嘩の遠因となるだろう。早急な対応が求められる。そう思った私は、解決策を考えた。

私が思うに、最も重要なのはかけ布団と敷布団の間に隙間を生じさせないことである。マットレスの小ささはまだ我慢できる。でも、深夜から明け方にかけて、布団の側面から冷気が襲ってくるのは耐え難い。夜中に何度も目を覚ます。もし、この点を解決できれば布団を引っ張ることなくなるはずだ。そうすれば、夫との小競り合いもなくなるだろう。

でもそのためにどうすれば?!

そこで思いついたのが寝袋である。なんと私は今の家に越してきてすぐ、来客用と防災用を兼ねた寝袋を購入していた(!) その名も「ねぶくろん」。買ったはいいけど、コロナで関東の友達の誰も泊まりにきてくれなくて、「邪魔だなぁメルカリで売っちゃおうかなぁ」なんて思っていたこのねぶくろん。今こそ出番!!

そうと決まれば、思い立ったが吉日だ。

今日、帰宅したらさっそくねぶくろんを出してみた。購入以来、実に10ヶ月ぶりの登場である。狭い物件に収まるくらいコンパクトに収納されていたねぶくろん。広げてみると、思ったよりふかふかしていて厚みがあり、しかも思ったより大きい。シングルマットレスの端に、寝袋をぼんと広げた。

さっそく蓑虫よろしく潜り込んでみると、ぬくくて実に快適。私のサイズならば、頭からすっぽり潜り込める。ちょっとした秘密基地を手に入れた気分で、とても楽しくなってくる。実際に眠るのはこれからだけど、今このnoteは寝袋に寝転がって執筆している。すでにお気に入りの場所となりつつある。

来客用でも防災用でもなく、夫と一つベッドの上で寝るために、寝袋で寝る。新居に移る前の珍エピソードになりそうだ。20年後くらいに笑い話になったら、ちょっとおもしろい。

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