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黄色い花

あれ、黄色い花、あの子が好きだった花だ。どうして海の近くに咲いているんだろう。眩しい日差しに透ける葉っぱ越しに除く、君の横顔が好きだった。柔らかくて、いい匂いのする髪の毛。触りたくても、見えない何かが邪魔をした。覚えているんだけど、

ああ、確か、君はよく絵を描いていた。地面にも描いていた。僕も一度、腕に小さな動物を描かれた。耳のぴんと立った犬。飼っている犬は耳が垂れているけど、本当はこういう耳の犬がほしかったんだ、って悲しそうな顔をしてた。思い出したんだけど、

そう、僕は、よく夜の海で、足を濡らす夢を見た。静かな波が白い泡を抱えながら、たゆたっていた。細かな砂は僕の足を徐々に包んだ。僕は動かなかった。だって、動いてしまったらこの永遠みたいな今はないことになるのだから。言いづらいんだけど、

ねえ、僕は、今さっき見つけた黄色い花を、海にあげてしまった。君はきっと、ほんの少しだけ悲しい顔をするのだろう。花びらを散らして流すなんて、悪意を感じる。おとなになった君は耳の垂れた犬を飼えているのだろうか。どっちでもいいんだけど、

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