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夜中柘榴をむく

平日の夜、家人が眠っているのを邪魔しないように、キッチンの明かりだけを点けて、駅前のスーパーで買ってきた柘榴を剥く。ひたすら、指先に神経を集中させて、ナイフで傷をつけた表皮から指を入れ、薄皮にへばりついた赤いタネを一つ一つボウルの中に落としていく。無心になる。

高崎駅の駅ビル、「モントレ」一階の食料品売り場の品揃えは、これがなかなかあなどれない。特に果物売り場の担当の人はかなりの目利きではないかと常日頃から思っている。
福島産の幻の梨、コミスが2個たったの298円で売られていたりする。博多産のいちじく、とよみつ姫は甘かったなぁ。買わなかったけどハロウィンの時期には人の指のように細長い奇妙な葡萄が売られていた。

今の私の一押しはアメリカ産の柘榴だ。剥くのに手間がかかるけど、大好物だからつい手が伸びてしまう。昨日も、一度通り過ぎてから、えいっと買い物かごに入れてしまった。

柘榴は、ゴムのような肌触りの表皮と仕切りのような薄皮に繊細なタネが守られている。タネはルビーのように透明な赤い果肉を纏っている。てっきり絞ってジュースにするのだと思っていた。タネは、渋みもえぐみもなく、バリバリ噛んで食べられる。柘榴は女性に優しいエストロゲンが含まれていると聞いていたが、タネにも植物繊維とか体に良いものが入っている気がする。

赤い果肉を潰さぬように、注意深く指の先を使い、薄皮から果肉を削ぎ落とす作業が終わる頃には日付が変わっていた。ボウルの中の赤いルビーに、大さじのスプーンできび砂糖を加えて軽く混ぜる。冷蔵庫で馴染ませたものをヨーグルトにかけて食べるのが定番だ。

生の果物は、生命をいただいている気がする。ごちそうさまでした。

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