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毒を薬に変えて生きていく僕ら
明確な目的も持たず、ただ日々を消費していた大学生のころ。
入社して数年経ち、社会人としての役割を理解し始めたころ。
結婚して少し経ち、当たり前のような毎日が繰り返されていたころ。
人生の中でたびたび訪れる「慣れ」の時期に、僕はふと「ソラニン」という曲の歌詞を思い出す。
たとえばゆるい幸せがだらっと続いたとする
きっと悪い種が芽を出して
もう さよならなんだ
一見、別れの歌詞に思える。
でも、僕には「進め!」と聞こえる。
学生生活でも、社会人生活でも、結婚生活でも、なんでもいい。気が付けば、居心地が良くなった「ゆるい幸せ」が続く場所があったとして。
「このままでいいや」「ここでいいや」と、僕らはつい、そこに留まりたくなってしまう。でも「留まる」ことを決めた瞬間、そこには惰性という種が生まれる。いつしか根を張った惰性は、足に絡みつきそこから動けなくなってしまう。
だから、進め!
ソラニンの歌詞からは、そう言われている気がする。その時に居心地が良くても、時が経てば心も体も変わる。幸せの尺度も変わってくる。それまで幸せだと思っていた場所からでさえも、いつしか不満は滲み出てくる。そうなってしまったら「もう さよなら」しか、選択肢は無くなってしまう。人は、どんな不幸からも喜びを拾いあげる才能を持っている。でも同時に、どんな幸せからも不満を拾いあげる才能も持ち合わせていると思う。
さよならだけが人生だ。
そんな言葉を聞いたことがある。「ゆるい幸せ」に留まっても、先に進んでも、結局訪れるのは別れ。それなら、「留まる」ことよりも「進む」ことを選びたい。それが、その時感じた「ゆるい幸せ」を幸せのままにしておく方法だと思う。
ちなみに、ソラニンとはジャガイモの芽に含まれる毒のこと。中毒症状を招いたりする危険な成分だが、一方でジャガイモの成長には欠かせない成分でもある。
「ゆるい幸せ」の中に潜む「惰性」。
ソラニンと同じく、それは僕らを動けなくする毒のようで、成長するのに欠かせない薬でもある気がする。ふと足を止めたくなってしまう時に、この曲を聴く。すると「もう一歩だけ前に進んでみようか」と思える。
すべて抱えて、一歩先へ。
ロック調のバンドサウンドが、聴く度にそう導いてくれる気がしている。
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