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あたたかい親子丼に命を救われたといっても過言ではないのだ

あー、疲れた…。

宮崎空港を出て自宅へ帰るために車に乗り込んだ時には、既にかなりの疲労度だった。
ただでさえ前日からの宮崎福岡の往復で疲れていたのに、宮崎空港へ到着直前に滑走路トラブルでしばらくの間機体が上空を旋回することになってしまった。

もしかして、紫斑が多く出てきているかも…。
ふと頭をよぎったが、自宅まで足は見ずに帰ることを決めた。

去年12月末にIgA血管炎を発症して以来、ほぼずっと家の中での生活だった。外出もできなかったこともあり、体力もだいぶ落ちていたのだと思う。去年、当たり前のように県外へ仕事で行っていたのが懐かしく思えるくらいだ。

ただ、前日の福岡での専門医の受診は、結果として行って良かった。これから先に少し光が見えた気がしたからだ。まだ「すぐ良くなる」というわけではないが、寛解へ向けて前進はしている実感がある。

そんなこんなで、自分の体のことで頭がいっぱいだった僕は、家に帰った時に一つやらかしたことに気付いた。

「今日、ご飯いらなかったよね?」

家族からそう言われた時、一瞬頭に「?」が浮かんだ。そして、思い出した。「この日は晩ご飯は外で食べてくるよ」と言った過去の自分のことを。

「…あー、そうだね」

変な間があったので、明らかに忘れていたことがバレた様子だった。

「…え、用意してないよ?」

「あーうん、大丈夫」

生返事をしながら、いったん自分の部屋に戻った。時間は夕暮れ時。
しまった。今日の晩ご飯は過去の自分が丁寧に断っていたのだ。すでに息子を含めた家族は夕ご飯を食べた後だった。

いっそのこと、なんでもいいから外に出て食べてくるか。

そんなことを思いながら、ふとズボンをめくって足を見てみたが一瞬でさっきの考えを却下した。

…いやーダメだわ、これ。

前日からの移動と疲れが重なり、明らかに紫斑が増悪している。入院した時の状態をレベル10とすると、大体レベル8くらいか。点状の紫斑同士が繋がって一部「面」のようになっている箇所もある。これから新たに外出できる状態ではない。

まぁ、晩ご飯くらい食べなくていいか。

腹を括ってソファに横になる。10分くらい寝転がっていると、家族が様子を見にきた。

「残りものでよければあるけど」

…ありがてぇ。。
断る理由は無かった。

食卓について出されたのは親子丼だった。よそったばかりの温かい白ごはんに、鶏肉や玉子などの親子丼の具がたっぷりかかっている。

「いただきます」

口に運ぶと、それはもう体に沁みた。
福岡で食べたどんなものより美味しかった。
あたたかいご飯は、人を元気にするチカラがあると思う。
親子丼をかきこみながら、ここでようやくホッとできた自分に気付いたのだった。

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