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UNOを探して3件目

「UNOでも買いに行くか?」

そう聞くと、8歳の息子はニンテンドースイッチから顔を上げた。

「今やってるスイカゲームが終わったら行く」

息子のゲームが1セット終わるまでの間に着替えて、出かける用意をする。
「UNOが欲しい」と言われたのは、少し前だった気がする。児童クラブで遊んだのが楽しかったようで、家族でやりたいと最近息子が言っていた。それをふと思い出した。

僕がIgA血管炎という病気になって以来、息子と一緒に出かけることがほぼ無くなった。そのせいか、休みの日はほぼゲームかYouTubeで時間を潰すようになってしまった。
この日もソファに寝転がりニンテンドースイッチの画面を見つめる息子を見て「たまには外に連れ出してやりたい」と思った。そこでUNOの話題を持ち出したのだった。

2人で車に乗り込んでエンジンをかけたものの、そこでふと思った。

「UNOって、どこに売ってるんだっけ?」

おもちゃ屋?
車で往復40分かかるな。遠い。
イオン?
おもちゃ屋と同じくらい時間がかかる。遠い。

スマホで検索するとセリアやダイソーにもあると書いてあった。
よし、ダイソーに行こう。そこなら車で5分だ。
意気揚々と行ってみるが、見つからない。

「UNOってありますか?」

「ありませんね」

次に、そこから車で2分のセリアに行ってみた。

「UNOってありますか?」

「ありませんね」

ロールプレイングゲーム(RPG)に出てくる村人かなと思うくらい同じトーン、同じ口調だった。

「次はどこ行く〜?」

なぜか息子は楽しそうだ。
でもUNOは見つからない。
スマホで調べたサイトには、セリアやダイソーに続いてローソンの名前も書いてあった。
次はローソンか。近所を思い浮かべたが、少し冷静に考えてみた。

…いや、無いだろ。

都会のローソンにはあるかもしれん。でも、宮崎のローソンにはない気がする。なんとなくだ。
ローソンはスキップして、他にありそうなお店は無いかを改めて考える。

あ、ヤマダ電機があるな。
近くのヤマダには、本やゲーム、おもちゃが売られているスペースがあったことを思い出した。
とりあえず行ってみるか。
ヤマダ方面へ車を走らせていると、息子が話し始めた。

「学校がめんどくさいんだよね。先生がイヤでさぁ…」

あー、こういうの久しぶりだな。
2人で車の中で会話するこの感じ。ちょっとしたドライブみたいになっている。
病気になる前は、結構色んなところに一緒に行ってたんだけどな。そんなことを思いながら、運転していた。

お店に着いて駐車場から店内に入るまでの間、息子が隣でそっと手を握ってきた。

へぇ、まだ手をつないだりするんだな。

8歳になって随分大人びてきた気がしていたけど、こういうところはまだこどもなんだなと思い、少しホッとした。
それと同時に、最近息子と向き合えていないなぁということに改めて気付いた。

「あ!あった」

2階のおもちゃコーナーで、無事にUNOを見つけることができた。何種類かあったが、一番オーソドックスなUNOを手に取ってレジに向かう。

「1,200円です」

…え、UNOってそんなにするの?
内心、驚いたことを悟られないように平然を装って会計をした。

「ありがとう!」

お店を3件回ってやっと見つけたUNO。
息子に手渡すと喜んでいた。

そうか。この金額なら、そりゃあセリアやダイソーで見つかるはずが無い。
店員さんに聞いた時の口調の意味が、その時初めて分かった気がした。

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