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質より量だ、とりあえず

中学生の頃、バレーボール部に所属していた。
きっかけは、友達が入ると言ったから。
じゃあ、俺も。
そんな感覚でなんとなく入った。

それまでバレーをやったことはなかったのだが、1年生で入部した部員はみんなそうだった。
当時人気のない部活だったらしく、2年生と3年生を足しても9人しかいなかった。ただ、1年生は僕を含めて13人が入部した。
4月に入部して、6月には夏の大会が開催される。
当時のバレー部のレギュラーはサブも含めて12人。上級生を全員レギュラーにカウントしても1年生から3人は選ばれることになる。1年生13人中で3人。僕は足が遅くて運動神経も悪い。バレー部のくせにジャンプ力も無い方だったので、何も期待することはなかった。

ただひとつ。
上級生達がコートで、レシーブからの連携を練習する時だけ、サーブをするのが僕の役目になっていた。

「お前のサーブ、無回転なんだよな」

言われてその時に初めて知った。ちなみに僕は「無回転を打とう」なんて、意識したことはない。僕が意識していたのは、ボールをコートに入れることだけ。部員全員で行なうサーブの練習の時に、ただ無心に人よりも多く数をこなし続けていた。

どうやったら入るかな。
あ、これじゃダメか。
こんなのは?…あ、入った。
なるほど。こんな感じだと入るんだな。

当時の顧問はみんなに「コースを狙って打て」と言っていた。でも、コースを狙うと一本一本打つのに時間がかかる。だから僕は全然狙っていなかった。コースを狙うのではなく、コート内に入れることだけを考えてひたすら何本も何本も打っていた。

入ればいいじゃん。
コースなんてどこでもいい。

僕は、自分で打ったボールがどこにいくのか分かっていなかった。むしろ「どこに行くのかなぁ」と楽しみにしていたくらいだ。だからこそ、無回転のサーブが打てていたのかもしれない。

結果、夏の大会で12番のユニフォームをもらった。レギュラー枠ギリギリのサブ。評価されたのはサーブだけではあったのだが。

社会に出ても、これと同じようなことは結構ある。勝つか負けるか、成功するか失敗するか。仕事によって色んな結果が生まれてくる。
ここで「大事なのは、質なのか量なのか」問題が出てくるのだが、僕はとりあえず量をこなすことに時間を使う。ある程度の量をこなさないと、基本が身につかない気がするからだ。

かの有名な本田圭佑さんも言っている。
「量をこなしていないヤツに、質を語る権利はない」と。

今回、仕事でCM案を考えるという機会があった。これがコンペ形式。競合他社もいる中で自分の会社の案が選ばれて初めて仕事になるというものだ。提案数に限りはないということだったので、チームで13案を捻り出し提出することにした。ちなみに、普通は2〜3案らしい。

とにかく相手の懐に届けることだけを考えた。「どれか引っかかってくれればいい」と、量で勝負する作戦。
いつのまにか、あの時の無回転サーブのように決まればいいなと思っている。

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