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ニュースになるような活躍なんて出来ないけれど

夕食の時に、たまたまNHKのドキュメント72時間が放送されていた。僕はこの番組の総集編を年末に観るのが好きだ。年の瀬の一年を振り返る時期には、ドキュメントで描かれる人間模様がよく似合う。

今回は「真夜中のそば屋で」というタイトルで秋田県が舞台だった。
夜10時から開店して翌午前中まで営業するそば屋。ここに72時間密着したドキュメントだ。
スナックでもなく、バーでもなく、「そば屋」というのがたまらなく良い。飲み会の帰りだったり、深夜まで営業した飲食店の人達だったりが、そばを食べてお酒を飲む。その様子には、人間味があふれている。

「本日の主役」と書かれたタスキを肩から下げた男性。友人に誕生日を祝ってもらったらしい。奥さんに先立たれ、祝ってくれるのは友人しかいないと話していた。その表情には、嬉しさの中に寂しさも見える。こんな風に人ってやつは、だいたいグラデーションの中で生きている。白か黒かではっきり色分けされるのではなく、白も黒も入り混じった色。それが人間味なのだと思うし、そこがリアルだなと感じる。

一軒のそば屋を通して、色んな人の人生が垣間見える。ドキュメント72時間を観ていると思うのだ。「みんな、ちゃんと生きてるんだなぁ」と。
この番組を観たからといって、決して明日からの自分の人生が劇的に変わるわけではない。
それまでと変わらず、昼ごはん何食べようかなとぼーっとしたりするだろうし、人間関係で悩むこともあるだろう。
でも、その度に「みんな、こんな感じなんだろうなぁ」と思えるのだ。

嬉しかったり、寂しかったり、喜んだり、悲しんだり。日本を湧かせるような、ニュースになるような活躍なんてできないけど、僕らは今日も、自分が主役の人生をちゃんと生きている。

この番組を観ると、それを確かめることができるような気がして、いつも心を動かされる。

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