20分の忘年会
「忘年会をしよう」
奥さんから提案があった時、ソファに座っていた僕も8歳の息子も「はい?」と聞き返した。
土曜の夕方5時。晩ご飯をどうするかを考えるようなタイミングだ。
「家族で、忘年会をするぞ」
奥さんはもう一度言った。
「…別に、いいけど」という僕。「ぼうねんかいって何?」と聞く息子。突然の提案に、とりあえず店を探してみるかとスマホで検索してみる。
「今日は超満員です!」
インスタでいくつか居酒屋を見てみるが、そんなストーリーズがアップされている。クリスマスも近く、年末のこの時期だ。今から居酒屋を予約するのは難しそうだ。
3人で話した結果「好きなものを食べよう」となり、息子と奥さんの好きな「ガンジスカレー」を食べに行くことにした。
空港まで行くのは遠かったので、宮交シティという宮崎老舗のショッピングモールに出かけた。その中にもガンジスは店舗として入っている。ここのカレーは、本当においしい。カウンター越しにカレーを作るシェフ達も、年配だが味がある。雰囲気も良い。3人でカレーを食べている時に、奥さんが言った。
「この後、スタバでドリンクを飲もう」
言われるがままに移動する。ショッピングモールを出た後はスタバに車で向かった。3人それぞれ頼んだドリンクを店内で飲むことにした。
「カンパーイ」
それぞれグラスを合わせる。息子はフラペチーノ、僕はチャイティラテ。何ともかわいらしい忘年会だ。
「今年は大変な一年だったね」
奥さんが話し始める。
確かに、そう。ウチの家族はみんな今年一年、とても大変だった。
僕は去年の今頃に足に紫斑が出現し、IgA血管炎を発症。そのまま症状が悪化して元旦から入院。その後4月末までは外に出ることすらできなかった。
奥さんは10月に子宮内膜症を患い、入院&手術。その後2週間は自宅安静となった。
飼い猫のまるおは、尿道炎で3日間の入院。
8歳の息子に何もなかったのが、唯一の救いだ。
「来年はいい年になる。絶対」
奥さんの願いにも似た、断固たる決意。
そうなればいいなと、僕も思う。
「ねぇ、もう帰ろう。家のソファで寝転びたい」
フラペチーノを飲み終えた息子が言う。店に来てまだ20分も経っていない。その発言に、僕も奥さんも笑ってしまった。そもそも、忘年会の意味も知らない息子だ。こうなるのは当然の結果とも言える。
まぁ、家族3人で今年を振り返る時間ができたということで良しとするか。
ウチの家族としては、今年の分を踏まえて2025年に期待大。同じ方向を向いて頑張ろうと思う。