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ずる休みを1回だけ認めます

夜、自分の部屋でスマホをいじっていると小学3年の息子が入ってきた。

「どうした?」

手元のスマホから顔を上げて聞いてみる。

「明日体育休んでいい?」

「なんで?」

今日の様子をみる限り、体調が悪そうには見えない。ただ、最近朝に「学校に行きたくない」ということは増えているのは気になっていた。

「なんか、昼の給食くらいからお腹痛いんだよね」

そうは言うものの、1時間ほど前にコーンアイスを美味しそうに食べている息子の姿を僕は見ている。

「…本当は?」

声のトーンを少し落として、改めて聞いてみた。

「…めんどくさい」

はぁ…。やっぱりか。
詳しく聞いてみると、最近の体育は男女関係なく色んな運動や体操をするらしい。男女でペアになってストレッチをしたり、手をつないで歩いたり。それが嫌らしいのだ。

「女の子と一緒に手でハートマーク作ったりするんだよ。嫌すぎるやろ」

なるほど。息子には姉や妹がいるわけではない。異性との接し方がよく分からないのかもしれない。特に同年代の女の子と触れることに苦手意識があるらしい。

とはいえ、親からすると「そっか、分かった。休んでいいよ」と簡単に言えるものではない。これからも続く長い学生生活を考えると、それを理由に休みを認めたらキリがなくなる。

その後も、ひと通り色々と話して説得を試みるが、息子は納得しない。しまいには「学校行きたくない」と泣き始める始末。

あ〜…どうしたものかなぁ。
少し悩んだ末に、ひとつの案を思いついた。

「分かった。いいよ、体育休んで」

「…え?」

泣いていた息子が顔を上げる。

「いいの?」

「いいよ。その代わり、コレを使えるのは1年に1回だけな」

それを聞いた息子は「う〜ん」と唸った。
体調が悪くて休むのは、しょうがない。咳が止まらないとか、熱が出たとか。それは本当に必要のある休みだ。ただ、コレはただのずる休み。だから「1年に1回だけ」という制限をつけてみた。ポイントは、ずる休みでも1回は認めると親としての公式見解を示したところだ。

「この1回を明日使うのか、もっと先で使うのか。それはお前が決めなよ」

少し悩み始めた息子。

「わかった。考えてみる」

そう言うと、自分の部屋に戻っていった。

正直なところ、体育を休んだって、学校を休んだって、そんなに大した問題じゃない…と思っている。休みたかったら、休めばいいじゃんとさえ思う。
ただ、このままだと常習化しそうだし、安易に逃げを選ぶようなことはしないでほしいなと思った。だから「ずる休み1回」を選択肢として加えてあげることで、「本当に休みでいいのか」を自分で一度考えてみてほしかった。

翌日の夕方。
小学校から帰ってきた息子に聞いてみた。

「今日、体育休んだの?」

すると息子は首を横に振った。

「休まなかった」

「へぇ、なんで?」

「まだ後に取っておくわ」

とりあえず、急ごしらえのアイデアにしては功を奏した…のかな。

4月は、何かと大変だ。

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