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「第10話 再会と団結」最終回

小惑星がいよいよ地球に近づいてきて、空にはっきりと見えるようになり、
誰が見ても、地球の危機は明らかだった。
宇宙人は、ガリとタマを観察しながらすべてを見ていた。

人間は、生物の頂点に立っているが、仲間同士での争いごとが絶えない。
宇宙人は人間は進化のできない、問題が多い生物だと思っていた。
しかし、皆が皆そうではなかった。

いよいよ時間が迫ってくると、その日を静かに迎えようとする姿に変わっていった。
鎖につないだ犬や動物たちも放してやり、自由にさせている。
家猫でもノラ猫でも犬でも何であっても、食べ物を分け与えている。
皆同じ地球に暮らす運命共同体で仲間だと考え始めた。

宇宙人はそれを見て、この地球を少し見直した。
円盤から目に見えないビームが小惑星に発射され、
全世界が一致団結して知恵を絞れば地球の科学技術でも回避できる
ギリギリのチャンスを与えることにした。

一方、タマとガリはあともう少しの所まで来ていた。
タマが西に向かう旅の途中、鳥たちが新しい情報を次々ともたらしてくれる。
ガリと思われるネコは、もう近くまで来ている。
タマがガリに再会する場面を見たいと、町を通り過ぎるたびに、
ネコや蝶々たちまでが、付いて来るようになった。
最初は、2~3匹だったのが、いつの間にか集団になりタマの後ろに繋がってきた。
空には、鳥たちも集まっていた。
あまりにも異様な光景に、人間も気付き、一体何事が起っているのかとこの集団に
注目するようになった。
ガリの方も同じような集団ができていた。
向こうに見える丘の上に、黒い集団が現れた。どうやら、ガリのようだ。
タマは、急ぎ近づいて行った。
集団と集団がまるで生き物の様に、一つに合わさった真ん中には、タマとガリがいた。

「ガリ、やっと会えたよ。タマだよ。」と声をかけた。

その瞬間、ガリの体の奥深くに押し込められていた魂が大きくせりあがってきた。
宇宙人は、もはや支配できないと悟った。
「もうだめです。制御できない大きな力が働いています。緊急に脱出します。」
と連絡をした瞬間、宇宙人の支配は解けた。

「タマ、ありがとう。」とガリは一言いうと満面の笑みを浮かべた。
周りの見物者は、一斉に声を上げた。
「よかった。」「おめでとう。」「最高。」などいろんな言葉が飛び交った。
タマの目にもガリの目にもうれし涙が浮かんでいた。
そして周りの者も感激で一緒に泣いた。

円盤に戻った宇宙人は、不思議な感情を経験していた。
何故か、とてもうれしくて楽しい。力がみなぎってくる感覚がした。
これが感動かと、口では説明できないエネルギーを感じた。

この気持ちは、円盤にいるすべての仲間にも伝わった。
この地球には心優しいい生物が多く存在する。
感動や友情など宇宙人にとって未知の体験だった。
そして宇宙人は地球に来たからこそ経験できた感情を持って
自分たちの銀河に帰っていった。

人間達が団結したおかげで地球は無事危機を回避する事ができ、平和が戻った。
タマとガリは大人になるまで一緒に仲良く暮らしていくのでした。

終わり



第1話〜第10話の物語はyoshiが書きました。→ https://note.com/xyz4477


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