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ステルヴィオ・チプリアーニ の ベニスの愛

 どうしようもなく心惹かれる音楽、メロディーというものが、誰にでもあるのではないだろうか?
 それは映画のサントラというジャンルにも、たくさんあるだろう。忘れられない映像作品とともに記憶される音楽は、それを愛した人にとって特別なものになる。映画の製作者は、映像と音楽の相乗効果について熟知していて、成功のための重要な要因となり得る音楽への期待は自ずと強くなる。だから、映画音楽ほど、作曲家の力量が試される分野はないと言ってもいいかもしれない。

前回、Papik による名曲 “ベニスの愛 ” (Anonimo Veneziano)  を、投稿した時、どうしても書き足りなく不満を感じたので、このテキストを起こすことにした。
 Anonimo Veneziano を、検索すると、“ベニスの愛 ” と、いう 1970年の古いイタリア映画に行き着いた。もともとはインストゥルメンタルだった映画音楽に、後に歌詞が付けられたものを Papik が、演奏していたようだ。作曲者は、ステルヴィオ・チプリアーニ。日本人にとっては、エンニオ・モリコーネと違って、あまり馴染みのない人ではないだろうか。ぼくは、知らなかった。それでも、この曲を聴いた時、なぜか、切なくも懐かしく思ったのは、ひょっとしたら、どこかで聴いていたせいだったのかもしれない。

Stelvio Cipriani - Anonimo Veneziano


 それは、一度も観たことのない映画だった。
 白血病で死を宣告されたオーボエ奏者が、別離していた妻とベニスで再会し、残された時間を使って精一杯、忘れ去っていた愛を取り戻そうとする物語だった。だが、ベニスはかつての美しさを失い、薄汚れた街になっていたという……
 
 取り戻せない時間、人生。 切なく、苦しい、つかの間の喜びと絶望。 すべて承知した上での、その果てでの生への執着。
 そんな二人に寄り添うような音楽だったのだろう。

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