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ジャカルタ動乱(1998年5月暴動)

 1998年春、やや胡散臭い「写真塾」を頼りに報道カメラマンになるべく上京してきた私は、上石神井の1DKのアパートでニュースを見ていた。そこには、インドネシアのジャカルタで繰り広げられている大規模暴動の様子が映し出されていた。

(背景を簡単に書いておこう。当時インドネシアは30年以上スハルト大統領による独裁政権が続いており、経済危機を引き金に各地でデモが発生。5月に治安部隊が学生デモを弾圧し死者が出てからは、ドタバタと物事がドミノ倒しのように進んでいった。手軽に詳しく知りたければ[ジャカルタ5月暴動]で検索をかければ当時のことをまとめたブログやニュースのかけらに行き着くと思う。ちなみになぜかWikipediaには[1998年5月暴動]の日本語版はない。)

「…うっひゃー、めっさホットやな」

と当時の私が呟いたかどうかは置いておいて、翌々日くらいには成田空港の出発ゲートにいたと思う。初めての「報道現場」。初めてがジャカルタってのは我ながらムチャクチャや、とは思ったが、報道機関に雇われているわけではないから仕方がない。

また、この現場を面白い(愉快という意味だけではない)と思えるかどうかを試すことが目的にあった。面白いと思えなければ、この先報道カメラマンを目指して突き進むことができなくなるだろう、と。荒療治だが手っ取り早い。上京も突然だったが、目的があれば人はいくらでも大胆になれるのだ。

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