IT資産管理できている?対象や目的、効率的に行う方法
「IT資産管理って聞いたことはあるけれど詳しくは分からない…」
「IT資産管理の目的はなんだろう?」
「IT資産管理って具体的に何をするんだろう…」
IT化が進む現代において欠かせない「IT資産管理」。
ソフトウェアの利用が拡大し始めている近年において、企業は適切なIT資産管理を行う必要があります。
IT資産管理を適切に行わなければ、不正なソフトウェアの未発見等によってセキュリティインシデントにつながる可能性も考えられます。
本記事を読めば、IT資産管理とは何かを知った上で、IT資産管理ツールの機能や選ぶ基準が明確になります。
ぜひ最後までご覧ください。
IT資産管理とは
株式会社SheepDogの調査によると、30代~50代経営者の42%がIT資産という概念を知らないと回答しています。
参考:30代~50代経営者の58%がIT資産という概念を知っていると回答 IT資産管理ツールで管理しているのは15%【IT資産に関するアンケート】
そのため、まずはIT資産管理とは何かを知る必要があるのです。
IT資産管理とは、企業や団体が保有する資産の中でも、特にIT関連の機器やシステムを管理することです。
管理の対象となる資産には、パソコンやサーバ等の「ハードウェア」、システムやライセンス等の「ソフトウェア」、周辺機器・USB等の「記憶媒体」といったものがあります。
特にソフトウェアに関しては、OSやofficeアプリケーション等のソフトウェア本体だけでなく、ライセンス証書やサービス契約等も管理対象です。
IT資産が適切に管理されていないと、コストがかさんだり、生産性が低下したりする要因になります。そのため、IT資産管理システムを導入し、IT資産管理の手間を大幅に削減する必要があるのです。
IT資産管理の3つの目的
本章ではIT資産管理を実施する目的について解説します。
IT資産管理を行う目的は大きく3つです。
・IT資産管理の有効活用
・コンプライアンス・内部統制の強化
・セキュリティの強化
以下で、上記のそれぞれの目的について詳しく見ていきます。
IT資産の有効活用
IT資産管理を行う目的の一つが、IT資産の有効活用です。
IT資産管理を行うと、企業が保有するIT資産を一括して管理・運用できます。
IT資産の状況を正しく知っておくことは、コスト削減や業務の効率化の面において、様々なメリットがあります。
例えば、余っているPCの重複した購入を防いだり、新規ソフトの正確な導入数を把握したりできます。
ポイントは、PC等のハードウェアだけでなく、現物確認しにくいソフトウェアも管理しておくことです。現代で事業を継続していくうえでは、ソフトウェアの利用は避けられません。
そのため、IT資産の有効活用は、すべての企業に求められているといっても過言ではないのです。
コンプライアンス・内部統制の強化
IT資産管理を行う目的として、コンプライアンス遵守・内部統制の強化が挙げられます。
ライセンスの使用期限を超えて利用している等、コンプライアンス違反が発覚した場合は、ソフトウェアメーカーから多額のペナルティが課されます。
加えて、コンプライアンス違反の発覚は、会社のブランドイメージにも響くでしょう。特に現代はSNSであっという間に情報が広がってしまいます。
例え故意でなくても、コンプライアンスに対する認識の甘さ等から知らない間にライセンス違反をしてしまう恐れはあります。ライセンスの適切な使用や監査をスムーズに進めるために、IT資産管理システムは役立ちます。
セキュリティの強化
IT資産管理を行う目的として、セキュリティの強化も挙げられます。セキュリティの面から、IT資産は正しく管理される必要があります。
例えば、怪しいソフトウェアがPCに入っていると、社内の機密情報が漏洩してしまうリスクがあります。情報漏洩は企業の存続に関わる事態にもなり得るため絶対に避けなければなりません。
また、最新のソフトウェアを利用することもセキュリティの観点から非常に重要です。これは、OSやミドルウェア、ウイルス対策ソフトが最新の状態にアップデートされていなければ、ウイルスに感染する危険性があるためです。
そのため、IT資産管理を適切に行い、セキュリティを強化するのが重要なのです。
IT資産管理ツールを導入する5つのメリット
本章では、IT資産管理ツールを導入するメリットについて解説します。IT資産管理ツールを導入する主なメリットは、下記の5つです。
・IT資産管理に関する業務の効率化
・IT資産への投資を最適化
・セキュリティの強化
・セキュリティポリシーの策定と遵守
・不正行為の抑制
以下で、それぞれ詳しく解説していきます。
IT資産管理に関する業務の効率化
IT資産管理ツールを導入することで、業務の効率化が期待できます。例えば、会社で保有しているPCの数をIT資産管理ツールで管理すれば、いちいち数える必要はありません。
また、ソフトウェアやライセンス関係も管理できるため、更新の際など、各管理ページへアクセスして確認しなくても大丈夫です。
定期的な確認は重なると膨大な手間になってしまうため、業務が効率化されるのはメリットといえます。
IT資産への投資を最適化
IT資産管理ツールを導入すると、投資の最適化に役立ちます。具体的には、使用されていないまたは過剰なIT資産を特定し、再配置または廃棄することで、コストを削減可能です。
意外に自社のIT資産を管理できておらず、思ったより無駄なコストがかかっている可能性があります。IT資産管理ツールを導入して投資を最適化し、これらの問題を解決できるのはメリットです。
セキュリティの強化
IT資産管理ツールの導入は、企業のセキュリティを強化するための重要な役割を果たします。
具体的には、IT資産の追跡や監視を通じて使われていない端末やアカウントを把握でき、削除するなどの対応が可能です。
使用されていないPCやアカウントでも情報が残っているため、不正に利用される可能性があります。そのため、IT資産管理ツールを導入することは、セキュリティの強化につながるのです。
セキュリティポリシーの策定と遵守
IT資産管理は、セキュリティポリシーの策定と遵守を支援します。IT資産の詳細なインベントリを持つことで、企業はセキュリティポリシーを具体的に策定し、遵守しやすくなります。
具体的には、社内PCの持ち運びについての扱いや使用するソフトウェアのルールなどです。
IT資産管理ツールを導入すれば、セキュリティポリシーを違反していることに気付きやすくなり、社内全体で遵守する雰囲気を作りやすくなるのです。
不正行為の抑制
IT資産管理ツールの導入には、不正行為を抑制する効果もあります。IT資産の使用状況を定期的に監視することで、不正な使用や盗難を早期に発見し、防止可能です。
例えば、社内PCの盗難やITツールの個人的な利用などです。不正行為を放置しておくと、企業は重大な損失を被る可能性があります。
IT資産管理ツールを導入することで不正行為を抑制できるのは、大きなメリットといえます。
IT資産管理を行う方法
IT資産管理のためには、資産管理台帳の作成が必要です。資産管理台帳を作成する方法として、次の2つがあげられます。
・Excelを利用する
・IT資産管理システムを利用する
それぞれの方法について詳しく説明していきます。
Excelで台帳を作成して管理
資産管理台帳には3種類あります。それぞれの特徴と記載内容は以下の通りです。
【資産管理台帳】
特徴:最も基本的な情報を管理する台帳
記載内容:管理番号、機器情報、所在、導入日、固定資産番号、リース番号、リース期限
【リース管理台帳】
特徴:リース情報の詳細を管理する台帳
記載内容:案件名、リース会社名、リース料金、契約日、契約番号、リース機器の所在
【ソフトウェア管理台帳】
特徴:ソフトウェアに関する情報を管理する台帳
記載内容:ソフトウェア名、ベンダー名、料金、導入日、バージョン、ライセンス情報
これらの台帳を管理するツールの一つに、Excelがあります。Excelは多くの企業で利用されているため、追加費用なしで手軽に開始できる方法です。しかし、Excelでの管理は現実的には難しく、非効率的である場合が多いです。
例えば、台帳内に古い情報があると管理できなくなってしまいます。また、機器のバージョンアップは行っていても、台帳の更新は後回しになっているケースもおきがちです。
このように、Excelでの管理は、手間がかかる上に情報の更新が難しいというデメリットがあります。
IT管理システムの導入
IT資産管理システムを導入することによって、快適に資産管理ができるようになります。
IT資産管理システムは、その利用形態からクラウド型とオンプレミス型の2種類に分けられます。
クラウド型は、システム提供会社のサーバーを借りて使う形態であるため、導入コストの低さが特徴です。
一方でオンプレミス型は、システムが自社で完結するため高度なセキュリティを期待できます。また、カスタマイズが容易であるという特徴があります。
IT資産管理ツールの主な6つの機能
本章では、IT資産管理ツールの主な機能について解説します。
IT資産管理の基本的な機能には、以下のようなものがあります。
・インベントリ管理
・ライセンス管理
・セキュリティパッチ管理
・操作ログ管理
・デバイス制御
・検疫システム
それぞれ詳しく説明していきます。
【インベントリ管理】IT資産の実数を把握
IT資産管理ツールの中心的な機能に、インベントリ管理があります。
インベントリ管理とは、IT資産に関する情報を一元的に管理する機能です。
IT資産に関する情報は、ハードウェアやソフトウェア、ライセンスと多岐に渡ります。
これらをまとめて可視化できるインベントリ管理機能は、無駄なライセンスの購入を防ぐことができ、資産の効率的な運用を可能にします。
また、セキュリティリスクのあるソフトウェアがインストールされていると情報漏洩につながるため、ソフトウェアの利用状況を把握することはセキュリティの観点からも重要です。
【ライセンス管理】ライセンスの過不足を把握
ソフトウェアのライセンスの契約内容や使用状況の管理を行うことを、ライセンス管理といいます。
メーカーがもつ監査権によって、使用期限を超えて利用している等のライセンス違反が発覚した場合、賠償金の支払いのリスクがあります。
権利侵害のリスクを回避するためにも、企業は適切にライセンスを管理して実態を把握しなければなりません。
ライセンス管理では、インストールしているソフトウェア別に集計ができ、ソフトウェアライセンスの過不足が一目で分かるようになります。
契約通りにソフトウェアを管理するため、ライセンス管理は重要な機能だといえるでしょう。
【セキュリティパッチ管理】常時最新のバッジを適用
セキュリティパッチとは、公開されているソフトウェアで脆弱性が発見された際に、それを解消するために利用者に配布される修正プログラムのことです。
セキュリティホール(セキュリティ上の欠陥)を放置したままにしておくと、マルウェアによるサイバー攻撃の標的になりやすくなります。
セキュリティホールの脅威を防ぐための一つの方法が、常に最新のパッチを適用することです。
IT資産管理システムによって、少ない人員で効率的にセキュリティパッチを管理・運用できるようになります。
情報漏洩やデータ改ざんといったリスクを防ぐために、脆弱性に対応することはセキュリティの観点から非常に重要です。
【操作ログ管理】トラブル時に状況を把握できる
IT資産管理ツールには、PC上で行われる様々な操作履歴である操作ログを記録する機能があります。
メールの送受信やファイルのダウンロード等、PC上では様々な操作が日々行われています。
操作ログを管理することにより、怪しい操作があった際に、誰が、いつ、どんな操作をしたのかを過去に遡ってチェック可能です。
操作ログ管理機能によって、トラブル時に求められる正確で迅速な問題解決が可能になります。
加えて、このような操作ログの機能を従業員に事前に知らせておけば、不正行動の抑止力としても役立つでしょう。
【デバイス制御】情報漏洩リスクを抑える
デバイス制御は、PCにUSBメモリやSDカード、外付けハードディスク等のデバイスが接続された時に、それをログとして記録する機能です。
コンパクトサイズであるUSBやSDカードは、簡単に重要な情報を大量に持ち出すことができる一方、紛失しやすく情報漏洩リスクが高いというデメリットもあります。
デバイス制御機能では、USBやSDカード等の外部記憶デバイスごとに「使用可能」「読み取り専用」「使用禁止」の3種類のうちいずれかの利定用制限を設定できます。
情報漏洩リスクを抑えるためにデバイス制御は重要な機能だといえるでしょう。情報漏えいについては、「メールによる個人情報漏えいはまだある?現状と対策、メールに変わるデータ共有手段まで」で詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
【検疫システム】セキュリティポリシーの統一
検疫システムは、PC等を社内ネットワークに接続する際に、事前に社内で定めたセキュリティポリシーとの適合性をチェックする機能です。
問題がある場合には社内ネットワークへの接続を拒否し、仮のネットワークに接続させて問題点を修正します。
セキュリティ上の問題点のチェック項目には、以下のようなものがあります。
・マルウェアに感染していないか
・セキュリティ対策ソフトのパターンファイルは最新か
・重要なセキュリティパッチは適用されているか
検疫システムでは、これらの項目に合格した問題のないPCのみを社内ネットワークに接続します。セキュリティを保つうえでは重要な機能です。
IT資産管理ツールを選ぶ基準
本章では、IT資産管理ツールを選ぶ上で重要な基準を3つ紹介します。IT資産管理ツールを選ぶ主な基準は、下記の3つです。
・導入目的
・収集精度
・連携機能
それぞれ詳しく見ていきましょう。
導入目的
IT資産管理ツールの導入は、何を目的とするかによって必要な機能が大きく異なります。
例えば、セキュリティ強化を目指すのか、コンプライアンス・内部統制の強化を目指すのかによっても効果的なツールは異なります。
反対に、余分な機能がついているツールを高いコストをかけて購入するのは、コスパが悪いといえます。
導入目的に沿って、IT資産管理ツールを選択しましょう。
収集精度
IT資産管理システムの収集精度も、重要な基準になります。
例えば、機密情報の持ち出しを防ぎたいのであれば、ファイルサーバーへのアクセスログや検索履歴、できれば印刷の利用有無やメールへの添付記録までチェックできるものがおすすめです。
IT資産管理ツールにどこまでの機能を求めているのか、はっきりさせると選択しやすいです。
連携機能
導入したIT資産管理システムが活かしきれていない場合は、収集した情報を上手く活用できるツールと連携させて使うことも大事なポイントとなります。
IT資産管理ツールは単体で使用もできますが、他のツールと組み合わせて使うと、よりその機能を生かしやすくなるのです。
そのため、他のツールと連携できるかは、IT資産管理ツールを選ぶ基準の一つになります。
まとめ:コストの最適化、コンプライアンスやセキュリティの強化のためにIT資産管理システムを導入しましょう
IT資産管理とは、企業や団体が保有するIT関連の機器やシステムを管理することです。
ExcelでIT資産を管理する場合、情報の更新が困難であるといったデメリットがあります。特に管理対象が多い場合は、作業量が多くなり非効率的です。
そこで、IT資産管理システムを導入すると、コスト最適化の実現だけでなく、コンプライアンスやセキュリティの強化までできるようになります。
まずは小規模に展開したいという場合は導入コストの低いクラウド型、大規模な導入を実施したい場合は高度なセキュリティを期待できるオンプレミス型が良いでしょう。
Excelでの管理に頭を悩ませている企業は、自社にIT資産管理システムの導入を検討してみてください。
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