星野源に救われた話

2020年のはじめ、2月18日。星野源さんのオールナイトニッポンで、私の曲「月のいんりょく」が流れた。
デモワングランプリというオリジナル曲のデモ音源を募集する企画だった。

私は8年前、津軽三味線でシンガーソングライターの活動をしていた。ギターやピアノの弾き語りと同じように、ライブハウスやイベント、ビアガーデンなどで歌っていた。(計算してみてもう8年も経ってることに驚いた。)その後子供が産まれてからは、津軽三味線の曲の演奏機会はあるけど、オリジナルの弾き語りはほんの数えるほどしかやっていない。

でもまたオリジナル曲をやりたい気持ちが沸々とあった。星野源さんのラジオのデモ音源募集という企画を聞いたとき、星野さんに直接楽曲を聴いてもらえるかもしれないまたとない機会、と小さく沸き立った。

実はその直前には、パラリンピックの開閉会式に応募しようとしていた。ケラリーノ・サンドロヴィッチさん、小林賢太郎さん演出で出演者を一般公募。またとない機会だと、何とか仕事と子育ての合間をぬって動画を撮ったけど、長いPR文も必要で応募の手順も多く、間に合わなかった。それが間に合わなかった分、星野源さんのラジオには必ず送る!と強く思っていた。まさか、その後パラリンピック&オリンピックが延期になるなんて思いもしなかったし、ケラさん、小林賢太郎さんの演出も無くなってしまうなんて。

2月18日のラジオゲストは、なんと三浦大知さん。昔folderで活動されていた小学生のときのハイトーンボイスは衝撃で、当時CDを買って何度も聴いていた。

デモワンGPへの応募は300通以上きたらしい。星野源さんはなんと、その全ての音源を聴き自ら選んだそう。多忙なはずなのに。星野さんらしい。
選ばれたのは11組。面白かったり、プロのような格好いい楽曲だったりと本当に多種多様。とにかく星野さんの琴線に触れたものが選ばれてるのだなと感じ、同時に私は無理かもと諦めの気持ちが大きくなっていた。もう普通にいろんな人が作った音楽を凄い、面白いと思いながら聴いていたら、最後の11曲目。「ハマジアイさんで、月のいんりょく」という言葉。ビックリして、ひゃあという声が本当に出た。Radikoのタイムフリーで聴いていたので、このスマホから流れてる私の曲は、ほんとにラジオ??と思った。

星野源さんと三浦大知さんが、真面目に私の曲について話してくれている。ひと言ふた言でなく、結構長く語ってくれていてもう夢のようだった。

星野源さんのおっしゃっていた事を書き出してみた。すみませんが、そうそう無い事なので。

・三味線で無理矢理やってるんじゃなく、オリジナルだからか、自然にポップス、妙に成立している。
・コード感をここまで3本の絃で表現できるのか。しかもフレットが無い。
・普通この楽器でやらないけど、これしかないからこれでやる、というのが凄く好き。そこから生まれる文化とかジャンルがある。誰も到達できないところに到達できる。

そして三浦大知さんからは

・スティールギター的な感じ
・津軽三味線のイメージの中には無い曲
・この楽器はこのジャンルをやるときに使うっていのがあるけど、そうじゃなく、自分の好きな音楽を自分の好きな楽器で演奏していく、すごく素敵だなと。

と言って頂いた。
今まで生きてきて、私が生み出したものにここまで評価をしてもらったのは初めてじゃないだろうか。
まさかそれが、星野源さんと三浦大知さんから。


私がライブをしなくなったのは、息子が生まれたのがひとつの理由だけど、それだけではなかった。
息子が9ヶ月になった頃、以前出させて頂いた飲食店からライブをやりませんかと連絡があった。
子供が9ヶ月というとまだ早いと思われるかもしれないけど、その2ヶ月前には既にとある新春イベントで私は津軽三味線と民謡、元夫は書家として展示販売をしていた。
そしてこの飲食店は集客ノルマは無く、お店のお客さんの人数によって出演料も頂ける。元ミュージシャンでもある元夫はokしてくれるだろうと楽観して、でも機嫌が良いときを選んでライブをしたい旨を話した。元夫の返事はこうだった。

それやって、何の意味があるの?

彼は若い頃、自身の作詞作曲でバンドでメジャーデビューしたこともあったし、感覚で動く、確実に私より才能ある人間だと当時思っていたので、その言葉は大きかった。

彼は私が津軽ものを弾くことは良しとし、オリジナルは意味ないとした。
私は弾き語りを再開するつもりでいたから凄くショックだった。もうライブは出来ないのか、とその日はかなり落ち込んだ。

私としては、津軽ものが私より上手い人は沢山いるわけで、自分の曲を歌って弾くことは私しか出来ないけど、大義名分はなく、ただ歌いたいというそれに意味が無いと言われれば、もう黙るしかなかった。

それが今回のラジオで、星野さんはさらにこんな事を言ってくれた。

・ハマジさんは全然そんなつもりじゃないと思うけど、自分は普通と思ってやってる→世の中を変えるような事を実はやっていたり、新しい文化みたいなものを実は生み出していたり、世の中に埋もれてるだけで実は変だったり新しかったりするものがあるんじゃないかと思わせてくれた。

星野源さんの言葉が、あの言葉から解き放ってくれた。意味を見出してくれた。
私が自分の曲をやることを認めてくれたのが誰でもない星野源さんであるということが、いま音楽をやれていない私の心を救ってくれた。

来年出来れば、ちょっとずつ自分の歌を録って表に出していきたいと思っている。
でもこの文章の元を書いたのも数ヶ月前だし、今も子供に折り紙の折り方を聞かれてるし、ほんとにちょっとずつになるかもしれないけど。

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