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ゆれるこころたち

一面にローズマリーの咲く丘のまばゆさにこころあとずさりする     浅野 美紀 

以前、歌集中に出てくる「こころ」を引いたが、

一面にローズマリーの咲く丘のまばゆさにこころあとずさりする  

この歌のこころは、「まばゆさ」にも「あとずさり」してしまうというのだという。丘一面に咲くローズマリーの緑。光があたって、風が吹いていたかもしれない。             

自然の清らかさ。うつくしさ。それへの畏怖。

「こころあとずさりする」、
こころだけでなく、立っていたのか、たたずんでいたのかする      作中主体のころのあたりも後ろに すっと退(の)くような身体の「あとずさり」も感じる。

まばゆさにこころあとずさりする、という素直な体感、感受性。     この性質も、きっと必要な、大切なものだと思いたい。

この歌集を読んでいるとき 

https://www.sunagoya.com/?pid=156425038 

茨木のり子「汲む」、                        中村佑子「マザリング」(集英社)、                 などが想起され、こころの中で、そのぜんぶが ひびきあって、まざる。

あとがきの、

私もこの小さな詩のかたちと出会えたことに感謝しつつ、少しずつ感性をみがいてゆきたいと思います。

この、貫禄のつかない謙虚さにおどろきながら、            ああ、これで いいんだな。と なにか ほっとした。 

             ☆ 

女学生のようにゆれるこころたちが、わたしには とてもなつかしかった。

他に印象に残った歌を以下に。

強がってから回りして蓮のはな浮かぶ水面のさざなみを見し       身めぐりのせまき世界に生きており春雨降ればやさしくなりぬ
中国茶ほのかに香り円卓を囲む会話をすこし逃げおり 
大切なことは何かと問われいるような初冬のあえかなひかり 
風渡りせせらぎに青葉散りゆくを主婦というだけの私が見つむ
 

※写真は今年の春に職場で制作した、                 自作のコラージュ「春が来た。ポスター」。字は子ども作。

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