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分子ガストロノミー

 料理は科学である、、、。とよく聞きますが、本当のところそうなのだろうか?確かに火を使って食材を調理するけれども一体どんな化学反応が起きているのかは正直わからない。好奇心から、料理を科学的アプローチで理解したくてこの本を選びました。

目次
1、料理と科学の歴史
料理人が科学と出会う時。科学者が料理と出会う時。料理と科学の未来、の3点について語っています。

2、’美味しく感じる’ の科学
美味しいは脳で感じる。味と匂いの関係。テクスチャーと温度。

3、美味しい料理
美味しい料理を構成する4分子。鍵を握るのは味・香り・そして色である。化学反応、酵素と三態。

4、美味しく料理を作る
心構え。道具。調理操作。

5、美味しすぎる料理
ステーキ。おにぎり。オムレツ。

以上5章から構成されており、1章づつ3つのポイントがあります。始めに料理と科学の歴史から始めて、美味しく人間はどのように感じているかという生物科学的な説明をします。おいしい料理とはどんな要素を含んでいるのか。ではその料理を作るためにはどうしたらいいのか。具体的に3つの世界一の料理で締めくくっています。

 この本を読んで変わったこと、成長したこと’美味しい’をどのように人間は感じているのか、美味しい料理の必須条件とは、美味しい料理を作るためにはどうしたら良いのか。’美味しい’ という一つの言葉に対して3つの側面からアプローチして分析できることを学びました。また、美味しい料理には5つの要素がとても大切であるという、相原雄二オリジナルのチャートも作成することができました。美味しい料理の5要素とは、ビジュアル、香り、味、テクスチャー、そして外的要因+αです。ワインのテイスティングと同じで、料理はまず目から楽しみます。それから鼻で香りを楽しみます。そしてそれを口で味わうのです。例えばこんなエピソードがあります。熱々の鉄板の上で肉厚の最高級A5ランクの神戸牛が目の前で焼かれています。香ばしい華やかな香りが館内の中に漂っています。それをコック帽をかぶった男性が丁寧に取り分け、お皿に乗せてくれました。口に運ぶと、肉汁があふれ出てとても柔らかく美味しく幸せな気持ちになった。隣の幸せそうな子供の顔を見るともっと幸せになった。という話です。これは先ほど話した5つの要素を全て含んでいます。

ビジュアル=肉厚の最古級お肉が鉄板の上で焼かれている。外はこんがり茶色だが、中はレアで綺麗なピンク色。
香り=芳醇なお肉の香り
=肉
テクスチャー=ジューシーさ、柔らかさ
外的環境=最愛の子供と共に過ごす時間、A5ランクというブランド効果、その人の空腹具合や心理的状況。

ということです。図にするとこんな感じです。

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1、料理と科学の歴史
-料理人が科学と出会う時。
-科学者が料理と出会う時。
-料理と科学の未来。

 分子ガストロノミーで有名なレストランがスペインにあります。名前はel bulli;エル ブリ。シェグはフェランアドリアさんで、伝統的な料理を一つ一つ分解して新しいものを再構築するという、なんとも超かっこいい考えの持ち主です。僕もとても感化されます。彼はガストロノミー界に3つの革命を起こしました。それは、オープンソース化、チーム知、そして異分野導入です。彼はレシピなどはすべてネット上に公開したり本で出版したりして知識の共有を図ります。また、一人の圧倒的な能力ではなく、少人数のチームを作成して新たなレシピの開発を行います。そしてもう一つは理科実験室にあるような本格的な道具を用いて料理をするということ。料理に科学的なアプローチをしているとい事です。
 僕は将来、和食のエッセンスを残しながらも新しい料理を作りたいと思っています。和食の一つ一つの技術や知識を分解してそれをまた新しく再構築したいです。3年間、和食を日本国内でそしてそれからフレンチを学びたいと思っています。例えば日本の肉じゃがをヨーロッパで取れる食材で行うとどんな新しいものが出来上がるのか?和食のテリーヌやパテがあってもいいのではないか。そんな話です。
 すべての料理は2つの要素で説明できる。gas, water, oil and solid. 空気、水、油そして個体。状態として、分散/、併存+、包合U、そして重層αです。例えば、スーパーで買う液体状の生クリームを式で表してみましょう。

液体の生クリーム=O/w

油である油脂が液体状に分散しているということをこの式は表します。
ではこれをかき混ぜて砂糖を加えよく見る生クリームにしたらどうなるのか?

甘いクリームタイプの生クリーム
=(G+O+S1)/ w  

ガスである空気と油脂そしてsolidである砂糖を混ぜました。
この方程式の良いところはパーツを一つ変えるだけで、何か新しいものを創造できるということです。


2、’美味しく感じる’ の科学
美味しいは脳で感じる。味と匂いの関係。テクスチャーと温度。


料理の美味しさ=食べ物×食べる人

料理を美味しく感じるというのはその人の食体験や精神的状況なども大きく作用しています。また人間が抱える料理のジレンマとして

なぜ人間は何か新しくユニークで食べたことがないようなものを好むのか

という問いがあります。なぜでしょうか?
 それは日々の日常にワクワクやドキドキを求めているという説があります。人間は雑食性動物です。コアラは笹の葉のイメージがありますが、人間は何でも食べます。ですが、新しいものを食べるときにはリスクが伴います。なぜなら人間が食べれるのかわからないからです。要は可食なのか、毒はないのか、アレルギーはないのかそのような食物新規性恐怖がある反面、でも刺激を求めて歩いは好奇心からという食物新規性嗜好の間に僕たち人間は存在しているということです。

 日本の食文化はのどごし文化とも言われ、テクスチャーを非常に大事にします。うどんのコシや、天ぷらのサクッというような食感のことです。

テクスチャー=食感x 物理的特性

オノマトペに見られるように食感とその食べ物自体がどんな性質を持っているかということです。そしてそのテクスチャーは風味にも影響を与えます。(香り)

イルカはフレーバーを感じることはできない

実はアロマとフレーバーは違う言葉で、アロマは食べる前の香りのこと。フレーバーは食べた後の鼻に残る香りです。人間は鼻と口がつながる構造を取っているのでそれを感じることができる。他方、イルカがそのような構造になっていないためフレーバーを感じることができないそうです。

なぜ味噌汁は冷めるとしょっぱくなってしまうのでしょうか?

これはとても面白い質問です。この質問に答えるために重要なのは味の受容体と温度の関係性です。味は5つあります。塩、甘み、酸味、苦味、そしてうまみです。そして塩と酸味の受容体はイオンチャンネルです。それ以外はgタンパク質共役型受容体です。そしてこのイオンチャンネルは温度の影響をあまり受けない一方で、gタンパク質共役型受容体は温度の影響を受けます。味噌汁に含まれるのは塩とうまみです。温度が下がることによって、うまみの受容体であるgタンパク質共役型受容体の機能が下がる一方、塩味はしっかりいつも通り機能するのでバランスが取れなくなり、しょっぱく感じてしまうという理屈です。これはとても面白いですね。


3、美味しい料理
-美味しい料理を構成する4分子。
-鍵を握るのは味・香り・そして色である。
-化学反応、酵素と三態。

美味しい料理は水・脂質・糖質そしてタンパク質から出来ている。それぞれ人間が生きるために必要なものです。

味に関してthe flavor star という5つの味のそれぞれの8つの関係性を表したものがあるので紹介します。薄い矢印は強めるもの。濃い矢印はバランスを取ってくれるものです。例えば、塩と甘いものはお互いに効果を強めてくれます、味の対立効果と呼ばれるものです。スイカに塩を加えると甘く感じるのはこの効果を利用したものです。また苦いコーヒーに砂糖を入れると苦味が減少します。これは苦みと甘さがバランスを取っているという味の相殺効果が働いています。

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 化学反応で有名なのはメイラード反応です。140度の高熱で加熱した際にアミノ酸と糖が結合して香ばしさを生み出します。例えば、カラメライズした甘い玉ねぎなんかです。三態とは物体の相の事で、固体・液体・気体のことです。


4、美味しく料理を作る
心構え。道具。調理操作。

 虫の目と鳥の目を持つ人は出世するといいうように言われています。マクロで大局的に全体を、ミクロで細かいところを見る視座のことを言います。では料理の鳥の目とはなんでしょうか?
僕たちがいつも食べている料理を前後にどんな背景があるのでしょうか?
僕たち料理人は調理に、お客さんは食事にミクロ的に目が行きがちです。料理のプロセスを見てみましょう。以下の9つのステップがあります。

生産→採取→加工→流通→調理→摂取→消化→吸収→代謝

ここで大切なのはどのように食材が生産されて、どのような経緯で流通されスーパーに食材が並んでいるかということです。星の王子様でも言っていますが、大切なことは本当に目に見えづらいです。ですが、見ようとすれば見えてくるものがあります。

 このクリームパスタコクがあって美味しい!よく聞くコクという言葉。さてコクを分解するとどのような要素になるでしょうか?本質を探っていきましょう。

コク=脂質・甘み・うまみ

うまみは3種類あって、グルタミン酸・イノシン酸・グアニル酸です。例えば食材は上から昆布・カツオぶし・干し椎茸です。ちなみに先日、ベーコンとアスパラガスの生クリームパスタを作らせて頂いたのですがそれが濃厚でコクがすごくて美味しかったのです。そのコクの正体である、
脂質=バター、生クリーム
甘み=生クリーム
うまみ=グルタミン酸はマッシュルームから、イノシン酸はベーコンから。この二つのうまみの相乗効果が生んでいた。というように後から分析するとなぜコクがあったのかということがわかります。次回はうまみをグアニル酸であるポルチーニ茸で出そう、イノシン酸を肉ではなく、アンチョビといった魚介からとってコクを出して複雑な味を作り出そうというようにレシピを考えることがたやすくなります。

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何か面白い科学的な料理本があれば教えてください!!!

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