近未来麻雀小説（27）過去からの刺客 VI
これまでのあらすじ
マチルダのダブリーでの『しずか牌』切りは、和了太のお気に入りの『しずか一色』を挑発している打ち方に見えた。ところが、この一打はツキが落ち目のベイズの勝麻が、和了太の『しずか一色』を阻止する為に、しずか牌を手牌に積み込むことを予想していたベイズの勝麻を狙い撃ちするための布石だった。
麻邪羅・第一戦・東2局１本場
狙い打ちされたことに愕然としたベイズの勝麻は『マチルダちゃん！ 私たちはこれまで一緒に戦ってきた仲間じゃない！ 私たち敵は、どこの馬の骨だかわからない邪羅ゴロの和了太でしょう！』と、さっきまでは、和了太に媚びていたことなど、まるでなかったかのように、マチルダにすり寄ってきた。『勝ち馬に乗る』が勝麻の座右の銘であり、勝麻家の家訓だった。
『みんなでコンビ打ちなんて、フェアな遊び方じゃないよ！ みんなで楽しく遊ぶのが麻邪羅シップだよ！』と、『しずか一色』を阻止されて２位に転落した和了太が抗議した。
『フェアとは生存の余裕を持つ者の贅沢な考えだぜ。俺は少佐の命令に従うだけだ。麻邪羅シップなんぞ関係ねぇ！』と、モリエホン元伍長はあからさまに、マチルダ少佐とコンビ打ちしていることを吐露した。
『フェアな遊び？ 麻邪羅シップにゃ？ あンたが、フェアと言うにゃら、それはあンたが弱いからにゃり。強い者が勝つにゃ。それが真の麻邪羅道にゃり。あンたのような弱者に麻邪羅を語る資格はないにゃり』と、マチルダまでもが容赦なく和了太の主張を否定した。
三家に否定されてしまっては、『掟変更ができるのが麻邪羅の掟』の麻邪羅勝負においても、和了太の主張は通りそうになかったので、『ねぇ、銅鑼右衛門！ なにか秘密道具は無いの？』と何時ものように銅鑼右衛門に何とかしてもらおうとした。
『ジャジャーン！ スタンド・ブースター！ このブースト矢で和了太くんのスタンド、あっ、和了太くんは、スタンドが何だか知らなかったね。和了太くんが麻邪羅で勝てるように手伝ってくれている、その #幽波紋 みたいのが、スタンドっていうんだけど、この矢には、そのスタンドから未知の能力を引き出してくれるはずだよ』と説明してから、和了太のスタンドの♬Take On Meをブースト矢で突き刺すと、♬テイクオンミー・レクイエムが出現した。
親のマチルダ少佐の第一打は、今度はスネ夫牌を捨牌したダブル立直。立直を掛けないと上がれない掟の麻邪羅においては、天和や地和はあり得ないので、親の第一打の捨牌は、どの牌でも完全な安全牌である。
しかし、この捨牌は『スネ夫一色』を狙っていたベイズの勝麻にとっては、強烈な一打だった。
『なんだ。スネ夫牌が通るのかよ。じゃぁ俺も、スネ夫牌切りでダブル立直だ！』とモリエホン元伍長も、追っかけ立直を掛けた。
ここで、和了太の進化したスタンドの♬テイクオンミー・レクイエムが『スネ夫牌よこどり』に動いた。『よこどり』とは、麻雀における碰（ポン）のことであり、和了太はベイズの勝麻の順を飛ばして、ジャイアン牌を切って立直を掛けた。スネ夫牌を哭いたということは、二色セット、三色セットのような安い上がり以外には、のび太セット・ドラえもんセット・スネ夫セットで『仲良しセット』の15万点狙いの可能性が高い。
１位のマチルダと２位の和了太の点差は、1,061,000-969,000=92,000。この点差であれば、『仲良しセット』の15万点を狙わなくても、のび太牌と、しずか牌を絡めた『大好きセット』の６万点をマチルダに振り込ませることができれば、１位に返り咲くことができるので、ドラえもん牌、のび太牌、しずか牌の三つが危険牌である。
和了太は自信をもって『ジャイ子牌』を捨牌して立直を通りした。その後、マチルダ少佐、モリエホン元伍長も、『ジャイ子牌』の自摸切りだった。
『スネ夫一色』狙いに失敗して弱気になっていたベイズの勝麻は、『ここはベタオリするしかない』と思い、スネ夫牌対子落としで『スネ夫牌』を捨牌した。
『 #御無礼 。ドンジャラにゃり』とマチルダが晒した牌は、のび太暗刻・ドラえもん暗刻・スネ夫牌・四次元ポケット牌で、スネ夫牌の地獄待ちだった。『仲良しセット。150,000にゃり』
これで１位のマチルダ少佐は１位と連荘を守りながら、ベイズの勝麻の同点３位から単独４位に叩き落して、モリエホン元伍長を援護射撃した形になった。
能力の知れなかった和了太の進化したスタンドの♬テイクオンミー・レクイエムの能力は、『よこどり』能力の可能性が見えてきた。しかし、進化したスタンドがそんなショボい能力のはずはないので、依然として和了太のスタンド能力は要注意だった。
１位：マチルダ 1,211,000点（1,061,000＋150,000）
２位：役満和了太 969,000点
３位：モリエホン 461,000点
４位：ベイズの勝麻 311,000点（461,000－150,000）
つづく…
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