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送り出し事業のこれまでとこれから - OB×現役対談記事 Vol.2

こんにちは。
アイセックは100以上の国と地域の仲間と共に、若者のリーダーシップを育む事業を行っている、学生による非営利組織です。私たちは、海外に渡航して、現地での社会課題に向き合いながら自分ができることを考え、解決に取り組むインターンシッププログラムを運営しています。

2023年度、ついにパンデミックの影響により停止していた海外インターンシップ事業が再開しました。アイセック・ジャパンで長く続く海外インターンシップ事業の変遷とこれからの可能性について、事業停止時の事務局次長兼送り出し事業統括を務めた小西快様をお招きし、2023年度事務局長高橋祐哉とともに語っていただきました。

今回は前回に続き、第二回となります。

ぜひご覧ください。


高橋:その他コロナ期間で印象に残っている出来事はありますか。

小西様:アイセック全体の話だけど、そもそもの事業モデルの見直しがなされましたよね。

送り出し事業はNPOに若者を送り出すというという事業モデルで、そもそもNPOからは基本的には紹介費用を貰っていませんでした。即ち、活動の財源を渡航者からの事業参加費に依存するモデルだったんです。加えて、渡航者からも参加費をそんなには貰えていないというような事象も発生していました。日本人の渡航者はよく払ってくれますが、それも世界共通というわけではありませんでした。とにかく送り出し事業の収益性が悪すぎて、回せば回すほど赤字だったという実情がありました。

持続的に収益が出せるモデルに変更しなければいけないというのはコロナ禍で炙り出された問題でしたが、そうでなければいずれ破綻してたんだろうなと思うので、コロナが考え直すきっかけだったのだと思います。

当時の事務局送り出し事業チーム

高橋:当時海外インターンシップは合計で3万件ほど回っていましたが、今は全体でも1万行ないくらい、アイセック全体で8,000件程度なので、件数としてはかなり差があります。

その分、持続可能な事業ではないことを、見つめるいいチャンスだったというのはグローバルもそうですし、そもそも送り出し事業の土台を見直したりとか、長期的に必要な議題をコロナ禍のアイセック・ジャパンは見つめていましたよね。

コロナの影響で直近でオペレーションが回らないからこそ長期的な観点から取り組んだことはありましたか?

小西様:それだと、法務論点とかもあると思います。観光ビザで受け入れてるけど、本来は研修ビザを取得する必要があるのではないか、このプログラムの内容だとVISAはこうしなければいけないんじゃないのか、というようなことですかね。

滞在先も電気が通っていないとか、事前情報と異なる環境だったりとか、よりひどい時は現地に行ってみたらプログラムが変更されたりとか、過去には運営が杜撰なところがありました。だから一から基準を定めて、この基準を満たさないと研修の価値として最低限担保されてませんよ、ちゃんとスタンダードを作って遵守していきましょうねっていう流れがグローバル全体で起きた、これはパンデミックをきっかけにに直されたことだったと思います。

アイセック・ジャパンはパンデミック前からその問題を認識していて、他の支部に問題提起していたのですが、送り出し件数の少なさを理由になかなか意見を取り合ってもらえていませんでした。だからこそ、今もし送り出し事業でそういう同じようなトラブルがあるなら過去を振り返ってちゃんと見直すことをぜひしてみてほしいと思います。

アジア・太平洋地域の代表が集まるオンラインミーティングにて

高橋:安全面や法務論点に関しては2020年以降、今も引き継がれている大きな流れなのかなと思います。特に内部のオペレーションを見直しや、送り出し事業が運営されていたらできないような、制度の見直しなどがしっかりと行われたからこそ、今実際に、当時(コロナ前)よりも委員会レベルまで厳格に運営しようとしているなっていうのは感じています。

パンデミック前の運営を経験していない世代がインターンシップを運営するということで、彼らの責任感はむしろ強まっているのではないかとも思います。そういう意識が根付いたのはコロナ禍の努力の賜物ですかね。コロナ禍の努力が反映された一つの証なのかなと感じています。

あと、事業は停止しているけれど送り出し事業ってこんな価値があったよね、みたいな価値の伝承はすごく大切にされていたのではないかと思います。

小西様:当時は渡航経験のあるメンバーとして、送り出し事業の価値をちゃんと伝え切りましょうという趣旨のプロジェクトも立ち上げて活動していました。委員会、事務局の両メンバーが頑張ってくれました。事務局としてもやっぱり根幹は送り出し/受け入れ事業で異文化理解の価値観を育むことは絶対揺らがなくて、当時開発していた新規事業も、そこに行き着いてもらうためという動線設計を想定していました。でも僕らとしても怖かったです。僕らの世代をきっかけに、渡航の価値が見出されなくなり、海外インターンシップが衰退してしまうのを何としても避けなければいけない、という思いで語り部を担っていました。

アジア・太平洋地域ディレクターとのミーティングにて

高橋:任期の終わりに快さんや他の副委員長の方が、やはり送り出し/受け入れ事業には価値があると語っていたのが印象に残っています。そしてその価値が失われてはいけないのだなという感覚は世代を超えて引き継がれていたんじゃないかなと思います。

時を前に進めて、回復に至った経緯やアイセックの現状、事務局長として送り出し事業に対して持っていた思いや二年間の取り組みについてお話させて頂きます。

2023年1月にコロナ後初の参加者が渡航しました。2022年ずっと再開させるために動いていたものの、再開に至ったのは次の年という流れで、当時はそもそも送り出し事業を再開させるべきかの議論もかなりありました。自分自身が事務局長に選ばれた2022年度の選挙の時にも様々な観点から論点になっていて今の安全管理の状態でいいのかの問題だったり、実際に戦略として、送り出し事業を遂行するべきなのかという観点も含めて議論されていました。

僕が事務局長にを2回目の立候補をした段階では送り出し/受け入れ事業の復活のきざしは見えていたので、コロナ前の両事業が回っている状態をを知っている自分がもう一年担う意味がすごくあるなと感じていたからでした。しかし、両事業が再開した2年目のはじめ、初期の反応って委員会のメンバーからはマイナスな反応というか、特に件数を増やしていこうという提言に対する反対もあって、まずは一件で精一杯なのではないかと両事業の運営に注力を戻すことへの不安みたいなものも結構感じました。それは海外インターンシップじゃない事業も色々模索してきたからこそ、ここで改めて送り出し/受け入れ事業に戻して本格的にやっていく上で、知らないから故の不安みたいなのが組織全体にあったからだと思うんです。それが丁度一年前でした。

だから、最初はいかに海外インターンシップに価値があるのかっていうのをメンバー全員に語りましたし、全く海外インターンシップの運営を見ていない世代にその価値を信じてもらうにはどうすればいいのかを試行錯誤したなっていうのはよく覚えてますね。

海外インターンシップが全面再開した2023年度夏期の一部渡航者が集まったイベント

小西様:ゆうやに2つ聞きたいことがあるんですよね。

一つ目は、2期連に関してで、2期連は本当にすごい。僕からしたら本当に信じられないですよね。一年でも、もう二度とやりたくない。2期連やるのはやっぱり異常だと思うんですよ。いい意味で異常だな、すごいなと。
さっき、コロナ前を知ってる自分が再開まで見届ける、という使命感と言っていましたが、そこを具体的に聞きたいです。

あと、自分がもう一度やらなければと思ったのはいつだったのかを聞きたいです。

高橋:一番の要因として、アイセック・ジャパン60周年のタイミングで事務局長をできたのが大きかったです。

いろんな世代のOB・OGの方にお話を聞く機会やインタビューする機会があって、その方々がアイセックの価値を語ってくださったり、当時はこんなすごい事をしていた、未来にはこんな期待をしているという話を伺った時に、これだけ歴史が長い組織なんだと、アイセックの価値を感じると共に、実際にどうにかできるのは現役メンバーで、僕たちが作っていかなければいけないんだなっていうのはすごい感じたのました。重圧というよりかはむしろ、もっとできる、と式典を通して感じ、自分がそこで改めて立ち上がる姿を示すことが、今できるOB・OGの方々への感謝の示し方だと思ったことが一つの理由です。

アイセック・ジャパン60周年式典にて

小西:そうですよね、紡いできた価値を、巨人の肩に乗って自分も価値を経験してきたからこそ、それを次世代にちゃんと伝えなければいけないという責任感や使命感というのはやはりあるんだろうなと改めて思いました。

もう一つの質問が、事業を再開させる中で生み出したかった変化についてです。僕らの時代に大事にしていた言葉で、元々はバイデン大統領の言葉だったんですけど、"Build Back Better”っていうのがあって、ただ戻すのではなくてよりよく作り変えていく、運営数をまたすぐに戻すんじゃなくて、これを機にいかにいいものに作りかえるかという意識で、活動をしていました。

そういうより良いものに向けて起こしたい変化、生み出したかった変化ってありますか?

高橋:質問ありがとうございます。
結論としては、そこの段階にまで至れていないのが現状です。

まずはちゃんとオペレーションを運営するという部分に注力したので、何か目新しい変化を起こせたかというとそうではないです。実際にできたこととしては、事業を再開させ、メンバーを渡航させること、そこで価値を感じて組織全体が勢いづいてきたというところです。そして、過去にぶつかったような課題に今もぶつかってしまっています。例えば渡航した参加者の期待値がずれてしまう事例は、自分が一年生の時にも思ってたことでした。先程の話の中で海外の運営基準が見直された話がありましたが、アイセック全体でほぼ0件だったところから、今年8,000件くらいまで戻ったのですが、何件かのトラブルも起こってしまっています。

事業モデル自体も見直されたのですが、考えていたことがうまくいかずにサステイナブルな運営が難しい海外支部もあるなどと苦戦するポイントは同じで、やはりこのままではいけないんだなという思いは強くなっています。一つ思うのは、どこの支部とどういう事業を展開するのかにもっとこだわらなきゃいけないなというのは思っています。多分それはコロナ禍前も考えられていたとは思うんですけど、今の国際情勢とかを鑑みた時に、日本の学生ってどの国に行って何を学ぶことが、その若者にとって、そして社会にも意義のあることになるのかという観点が大事だなと感じています。そして、そんな意義のある事業を作るにはどうしたら良いのかを日々考えているところです。

2022年度アイセック・ジャパン事務局長選挙にて

小西様:今のリアルを聞けて面白いなと思ったんですけど、送り出し事業の中身に対する期待値ズレって、やはり構造的な問題だなと思ったことです。というのも、送り出し側と受け入れ側が違う組織じゃないですか。アイセック・ジャパンとアイセック・ベトナムとか、送り出す側と受け入れる側で組織が違うことで絶対に認識のずれが起きるはずなんですよね。時には同じ組織の委員会のメンバーですら「そんなこと言ってないじゃん」みたいな行き違いが起きることがあるのに、違う組織で違う言語を話す人たちと同じような期待値でできるわけがないと思っていて、僕が当時思ってたのは、じゃあ同じ組織にすればいいじゃん、てことですね。アイセックのアジア・太平洋連合みたいなものを作って、一つの母体で送り出しも受け入れ事業も担えば基本的には認識ずれ起きないじゃん、みたいに思っていました。でも現実は、違う組織としてそれぞれがメンバーを集めることによってメンバーも増えているし、事業の運営もできているという側面があります。なので、他の解決の仕方としては、人の流動性が答えだと思います。それこそゆうやがアイセック国際本部のサポートメンバーをやろうとして支部の敷居を飛び越えようとしているように、今はオンラインで他の国の支部のメンバーとして活動するっていうことも容易にできますよね。

これは僕らの時代や世代ではありえなかったことで、だからこそ、ぜひ今のメンバーには海外支部のメンバーとして活動して、もちろんそれに並行してアイセック・ジャパンのメンバーとしても活動してみることで、運営母体が違うことによるインターンシップへの期待値ズレを無くしたりだとか、運営のスタンダードを揃えていくことが事業の質に繋がると思います。是非新しいアイセックの形として僕らのできていない経験を得て、アイセックの海外インターンシップの質もよくしてほしいです。僕が今メンバーだったら絶対それやるなと、一つ思ったことですね。

アジア・太平洋地域の代表と一部の副代表が集まる国際会議にて

高橋:そうですね、僕も2期連続で事務局長を務める中で他の支部のリアルみたいなものもだいぶ見えてきました。インドの人と香港の人が考える送り出し事業に違いがあったりとか、彼らの捉えている質の高さや送り出し事業に感じている価値も全て違う中で、画一的なものに当てはめられないと思います。ただ、そうはいっても、人間関係とか信頼関係を築くことで、歩み寄れることが沢山あるとも感じています。システム的に解決するところももちろんそうなのですが、どこかの支部が一つ良いものを生み出すと、それが事例となって広がっていくので、何か一つ、今とは違う新しいものを作るとそれがアジア・太平洋地域全体にも広げられると思いますし、それを仕掛けるのがアイセック・ジャパンであって欲しいなとは思います。そういう意味では今年の送り出し事業が合計70件くらい回ったんですけど、来年その数は伸ばしつつも、今までなかったような取り組みを少しずつ生み出してしていって欲しいと期待しています。


最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回に続くので、ぜひご覧ください。

また、海外インターンシップについて詳しく知りたい方はこちらのサイトをご覧ください。


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