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Youth × leadership

遠い地域での悲惨な出来事が他人事ではないと思いながらも、大半を忘れて生きていることに罪悪感を時折覚えるのはなぜだろうか。
世界、グローバルという言葉が指す世界が包括的ではないと思ってしまうのはなぜだろうか。
本当は言葉にしたいのに、同調圧力や「意識高い系」という言葉ゆえに躊躇ってしまうのはなぜだろう。

些細な違和感を意識せず、社会というゲームの法則に則って生きていけば良いのかもしれない。
でも、そんな人生になぜか面白みを感じないのはなぜだろうか。

皆さん初めまして、2022年度並びに2023年度AIESEC in Japanの代表を務めます、東京外国語大学4年の高橋祐哉です。

冒頭の問いかけは、たまに浮かんでくる疑問です。
(いつも考えてたら、今週の新着のアニメを楽しめなくなってしまうので!笑)

常に頭の片隅にあって、ふとした時に現れてくるモヤモヤ。
これを読んでくれている人も、一度は似たような気持ちになったことがあるかもしれません。

悔しいけれど、これらの投げかけに対する答えを示し(そもそもあるのかもわからないが)、皆さんに伝えるほどの知識も力も僕には一切ありません。

その代わり、僕の大学生活の大半の時間を投下し、答えの見えないこれらの問いに対峙するきっかけをくれた組織を紹介します。

大学生までの自分

本題に入る前に、少しだけ自分の話をさせてください。

ストレートに言ってしまえば、苦労のない成功だらけの人生でした。
決して裕福な家庭とは言えないものの、やりたいことはさせてもらえて、特別不自由のない暮らしをしてきました。

幼い頃からサッカー・水泳・塾などの習い事に通わせてもらい、生徒会・学級委員長・部長などいわゆるリーダーの立場を経験し、高校は県内のトップ校に入り、大学は第一志望の国立大学に入学しました。

昔から負けず嫌いで努力を惜しまない性格と、集団の中で上手く立ち回れる能力、そして周りの人々に恵まれて、良好な人間関係を築き、何一つ後悔のない学生生活でした。

その一方で、所謂敷かれたレールや世の中の「優等生像」に少なからず縛られて生きてきたようにも思います。

努力をしないのは怠惰であり、努力をすれば必ず報われて夢は叶う。
将来は外交官として、世界・日本のために働く。
自己成長のために、評価されるような経験を選択する。

そう思って生きることが心地よかったし、正義とすら錯覚していた節があります。

AIESECで学んだこと

大学に入学した後の4年間で、その考え方は180°変わりました。

AIESECとは、世界100以上の国と地域​に​支部を持ち​、​約30,000人の学生が所属する非営利組織です。
海外インターンシップやオンラインの国際交流イベントなどの運営と参加を通じて、平和で人々の可能性が最大限発揮された社会の実現を目指しています。

大学入学時にこの紹介文を読み、「なんとなく成長できそう」と軽い気持ちで入ることを決めました。
でもその「なんとなく」の意思決定は、全く予想もしていなかった大切なことを教えてくれたように思います。

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「自分は非常に無力である」

成長できる機会を探していた僕は、1年生の夏に、ガーナの農村で2ヶ月間コミュニティ開発に取り組む、アイセックが運営する海外インターンシッププログラムに参加しました。現地の子どもたちの可能性を広げたい、現地の人たちを助けたい、という漠然としたプランを胸に渡航しましたが、結果的には、世の中の複雑性に圧倒され、村の子どもたちの笑顔に癒されて帰国しました。

今思えばよくあるストーリーですが、当時の自分にとっては当たり前の価値観がひっくり返るような経験でした。「現地の課題を解決する」という言葉の重みを理解すると同時に、それまでの捉え方の甘さを痛感しました。

しかし、それでよかったと思います。彼らには彼らなりの幸せがあり、朝からジャンキーなローカルフードを口にし、片道5時間の畑へと向かい、週末になれば引くほど真剣な大人同士のサッカーを楽しむのです。靴がない、家の手伝いで学校に通えない、飲み水すら十分に買えない、そんな子供たちは、日本の子供たちよりも毎日楽しそうに生きているのです。自分が介入することすらおこがましく思えてくるようなリアルに触れたことで、残酷な世界の一面を少しだけ直視できるようになったと思います。

「異文化理解とは、平和の最小単位」

AIESECは、1948年の第二次世界大戦後にヨーロッパで国籍の違う7人の若者によって設立された組織です。発足当初から “Peace and Fulfillment of Humankind's Potential.”というVisionを掲げています。

壮大すぎるがゆえにあまり現実味がなく、活動の目的が矮小化されてしまう時もあります。
僕も本気で理想を目指しているつもりでいたものの、どこかで納得していない自分がいました。

けれども、ある本と出会い、自身の経験とVisionを繋げて考えられるようになりました。

想像してみてください。些細なことに見えるかもしれませんが、あなたが何かを5ユーロで買う選択をしたとします。しかし、その場合、あなたがその製品を5ユーロで買うと子供たちが死んでいくことをよく理解していたらどうでしょうか。

ー 『全体主義の克服』マルクス・ガブリエル /  Markus Gabriel ー

私たちが倫理観・異文化理解力を育むことで、普遍的な平和に近づくことができる。

AIESECは、我々の凝り固まった偏見を壊し、地球規模の想像力を養う経験を若者に届けてきました。

ミャンマー支部のZawは、軍のクーデターによって、2年経った今でも大学へ通うことができず、国内の一部の地域では激しい戦闘が起こっていると教えてくれました。
マレーシア支部のLeeは、多民族多宗教国家という背景から“#United Malaysia”を掲げて、若者の結束を目指していると語ってくれました。
カンボジア支部のHoksrunは、カンボジア大虐殺に言及しながら2度とこのような悲劇を起こさないために、この組織で活動していると伝えてくれました。

アルゼンチン支部では、多くの学生がプログラムにお金が払えない現状だということ。
南アフリカ共和国支部では、白人主義の影響を受けてきた歴史が存在していること。
ウクライナ支部では、“Courage in the face of danger”を掲げて、今も多くの若者が活動を続けていること。

そのような現実が、今の世界には存在していること。

あの時、軽い気持ちで入ろうと決めていなければ知り得なかった、繋がるはずのなかった人々との出会いは、世界の捉え方を変えてくれました。それは、メディアで報道されることのない世界や誰しもが無意識のうちに抱えているバイアスの存在に気づかせてくれ、時間がかかったとしても対話によって分かり合えることを訴えかけてくれます。

もちろんそのような事実を知ったところで、今すぐ目の前の生活を手放すことはありませんし、
そんな必要もありません。

けれど、自らが特権を持ち合わせていること、それらをどう使うかは私たちの手に委ねられていることは自覚すべきだと思います。

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これらは、自分の経験の一部を切り取ったものに過ぎません。
少々偏っているエピソードであり、まとまりのない文章に感じると思います。

しかし、このアイセックでの経験によって、世の中の明るいものだけをみていた高校生の頃の自分から大きく変わったことは確かです。

いかに自分がちっぽけで、甘い人間なのかを自覚させられました。
世界とは時に残酷で、想像よりも遥かに複雑であると実感しました。

最後に

人はその才能に市場が与えるどんな富にも値するという能力主義的な信念は、連帯をほとんど不可能なプロジェクトにしてしまう。
いったいなぜ、成功者が社会の恵まれないメンバーに負うものがあるというのだろうか?

その問いに答えるためには、われわれはどれほど頑張ったにしても、自分だけの力で身を立て、生きているのではないこと、才能を認めてくれる社会に生まれた幸運のおかげで、自分の手柄ではないことを認めなくてはならない。

自分の運命が偶然の産物であることを身にしみて感じれば、ある種の謙虚さが生まれ、こんなふうに思うのではないだろうか。

「神の恩龍か、出自の偶然か、運命の神秘がなかったら、私もああなっていた。」

そのような謙虚さが、われわれを分断する冷酷な成功の倫理から引き返すきっかけとなる。
能力の専制を超えて、怨嗟の少ない、より寛容な公共生活へ向かわせてくれるのだ。

ー 『実力も運のうち 能力主義は正義か?』マイケル・サンデル /  Michael Joseph Sandel ー

これは、自分がこれからも忘れたくない文章です。

先日タンザニア支部の代表のRichardと1時間ほど雑談した時に、
「スラム街や比較的貧しい地域出身の学生が、アイセックに入会してコミュニティに還元したいという強い意志のもとで推進しているんだ」
と言っていました。

その人たちがどれほど困難な人生の果てに、この組織で社会に貢献するために活動しているかは完全にはわかりませんが、そういう若者がいることを決して忘れたくないと強く思いました。

一つひとつの世の中の矛盾や痛みを解消する術は、課題の数だけあると思います。
でも、問題の本質は、本当はもっとシンプルなのかもしれません。

皆が謙虚な心を持ち、直接は見えない他人への想像力を働かせるだけで、世界は今よりもっと色鮮やかなものになる。

「結論がそれでは、頭がお花畑すぎるのでは?」と自分でも突っ込みを入れたくなりますが、これこそ、平和で人々の可能性が最大限発揮された社会を目指すアイセックの根幹であり、75年間変わらずに世の中に訴え続けてきた力強いメッセージです。

痛みに満ちたこの世の中で、眩しすぎるほど真っ直ぐな理想を掲げ、世界100以上の国と地域に存在する同志と共に世界を変える挑戦への一歩を踏み出しませんか?


2022・2023年度 AIESEC in Japan 代表 高橋祐哉

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