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<山口朋子さん>第四回 本

ある日私は、動画をみていた。2013年4月。約9年前の動画だ。「私の人生を変えた一冊」というタイトルで、登壇者が自分のお気に入りの本を3分で紹介する企画。終了まで42分。画質も荒く、限定公開ということもあるのだろうが、視聴回数は9年で7回。セミナーの記録動画という事だし、情報も古いので、仕方がないといったところ。「そろそろ別のを見ようかな」と離脱しようとしたその時、聞き覚えのある声がした。

ー 皆さんこんばんは。山口朋子です。

へえ。どんな本を紹介するのだろう。手を止めることにした。

語り出しは意外だった。

ー この度、「普通の主婦がネットで4900万円稼ぐ方法」という本を初出版しまして、みなさんにたくさん応援いただきました。そのおかげで、Amazonビジネスカテゴリーで1位、総合4位という素晴らしい結果を得ることができまして、本当に感謝しております。

デビュー作についての話だった。テロップもほぼなく、シンプルな作りな動画だからだろうか。本人の喜びのエネルギーが伝わってくる。ああ、他の動画に飛ばなくてよかった。その後、こう続ける。

ー 皆さんにもすごく、たくさん応援を頂いたんですが、実は、1番応援してくれたのがうちの夫でした。私が全然気づかないところを、いろんな人がここでブログで紹介してくれてるよ。メルマガで紹介してくれてるよって私に全部教えてくれて。夫がすごい協力してくれて、素晴らしい結果を得ることができました。

ー今でこそ、私たち2人とも応援し合う夫婦になっているんですけれども、私が起業した当初は、相手の欠点を探し出し、非難しあい、かなり冷え切った夫婦だったんです。何度もぶつかって離婚するしかない、とお互いに思ったこともありました。

ー会話するのも、喧嘩になるから食事の用意ができたら、メールで連絡するような有様で。それで、夫が自分の部屋からでてきて、食事を自分の部屋にもっていくような。そんな感じでした。

この経緯は、インタビュー中にも出てきた。他のエピソードも多く聞いた。言葉にしてしまえば、いろいろあって〜とか、紆余曲折あって〜と端折ることもできるが、当事者に取ってはそれではすまない。今でも第三者の私にリアリティを持って伝えることができるほど、強くのこっているものだ。

ーそんな中、1冊の本に出会ったんです。それが、これです。

自分の小さな”箱”から脱出する方法

この言葉が耳にとどいた瞬間、私はぞわぁっと鳥肌がたった。なぜか。この動画から、9年後。私が初めてインタビューをしたその日と同じことを彼女は私に伝えたからだ。

「人生を変えた本」というのは、誰しも持っている。何かに思い悩み、迷った時、人ではない何かにすがりたくなったとき、本はその役を買って出てくれる。私にも何冊か心当たりはある。だが、9年間それが更新しないというのはすごい。私には無い。

加えて言えば、彼女は大の本好き。心理学やコミニュケーション、ビジネス書、占星術や宗教、哲学書もかなり読む。詳しく何冊という話は聞いてはいないが、1000冊ではきかないはずだ。

新しい知識・情報はどんどん蓄積され、辛い思いも、楽しい経験もどんどん上書きされていくはず。にも関わらず、まだなお、この本の話がまず最初に出てくる。その本に「救われた」という実感が彼女の記憶と身体に染み付いているのだろう。

画面の中の彼女は晴れ晴れとした様子で、192秒のプレゼンを終えて壇上を降りた。本自体の紹介はたったの18秒程。自分にしかないストーリーを込めて、その本の価値を上乗せし、魅力的なものに仕上げた。余韻の残る会場。次の登壇者は少々やりにくそうにしていた。

「この動画を見終え、私は自然とAmazonの購入ボタンを押していた。」となれば、とても良いエッセイの締めくくりとなるのだが、私はそんなに都合が良い人間ではない。でも、この本の存在を2度聞いた。今も止まない鳥肌とともに、体には刻み込まれている。

この本に頼るほど、悩むようなことは起きてほしくないなと思いながら、いざという時の1冊として、手帳に記録した。


編集後記
こんにちは、アイダです。山口朋子さん(MOMOさん)のインタビューエッセイ。4回目です。いかがでしたでしょうか。私は、今そんなにコミニュケーションに困るほど、交わしていないので読んでいませんが、いつか読んでみようと思っています。

文章の内容は、MOMOさん本人の修正依頼がある以外は、基本的にそのまま残す予定です。どこまで、いけるものか、楽しみです。私の文章で、一人でも、MOMOさんのことに興味を持っていただけるとうれしいです。

では、また次回。

双極系男子
アイダ

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