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星の音

星の光

お星様が光っている。
雲のない夜。
その子は突然きらめいた。

私は直感した。
もうすぐ出会えると。


爆音


寒空の下、落下地点。斜めに突き刺さった銀色の直線を月が照らしていた。
俺、俺は−−−あそこからおちたのか---
専用の定規で、正しく計算され書かれたような黄色い三日月を見上げ、
ただそれだけ思った。
他に何かノイズがあったけれど、すぐにそれは消えた。だけれども、何か大きな生き物が、暗がりからこちらを伺ってるような感じだったと思う。珍しくノイズが印象に残った。

カラダのどこにも外傷はない。
よし、行くか。と重たくて錆びた腕を振り上げる。
ぐいっと胴体が持ち上がる。
四角くて、小さな体が土から出てきた。

行くあてはわからない。
目の前には、まばらな街の光が散らばっていた。

歩いて、歩き回って、なんとなく山のてっぺんを目指す。俺が落ちたのは山の中みたいだ。けれどもそこまで険しくはない。
暗くて、この土地の成り立ちが全くつかめない。
わかったとしても役に立つことなど何もないのだけれど。
どうして歩いているのかもわからない。
どうしてだか、歩かなければ、歩き続けなければ、俺の住んでいた街どころか、この何か臭い地面までもが、溶け出して流されてしまいそうだと思っているのだ。
完全に恐怖心に歩かされている。

恐怖心?
俺は生まれてからそんなものを抱いたことはなかった。
そうか、これが恐怖なんだ。
噛みしめるように歩いていく。

ヒトがどういうときに恐怖を感じるか、学校で貰った辞典に載っていた。
得体の知れないものや圧倒的な力の差、とにかくわからないことが、恐怖を産むには大切らしい。
たしかに俺は今、わからないところにいる。
けれども、ヒトじゃない。
もしかしたら、ヒトの住むというこの星に落ちたから?伝染した?感情は伝染病なのか?
たくさんのはてなを抱えながら歩いていると、そこはもう頂上だった。
到達した途端−−−おわりだ−−−という言葉が、ぽつりと口から零れ落ちた。
あ、流れ星みたい。
それを景色になぞらえると、見渡す街は宇宙(そら)をうつしたかのような星の水面だ。
これからどこへ向かえばいいんだろう。
生まれてから、毎日工場でコピーすることしか知らない俺は突然棄てられたことへの感想すら浮かばなかった。

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