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明日のこともわからないのに、生きるのはむずかしいね。あるいはSexyZoneとtofubeatsの「MELODY」について。

Sexy Zone
『POP×STEP!?』


まさか、このアイドルグループのアルバム曲をtofubeatsが書き下ろすことになるとは! それどころではない。Sexy Zoneの「MELODY」は、未曾有のウィルスに激しく翻弄されるしかないこの世界に、いまもっともふさしい音楽と呼んで過言ではないのだ。
草野正宗(スピッツ)なら「虫」、岸田繁(くるり)なら「鳥」、岡村靖幸なら「パラシュート」、小田和正なら「風」と、ここぞというときに頼りにしている名詞が、どんなソングライターにもある。tofubeatsの場合は「音楽」の一語がそれにあたる。だから、この曲に「MELODY」というタイトルが与えられていることには、特権的なことだろう。
これは「僕」が「君」に毎日歌ってる歌を教える歌であり、「君」が毎日歌ってる歌を「僕」に教えてよと望む歌である。覚えたばかりの歌を一緒に歌おうと投げかける歌であり、へたくそでも気にしないから歌おうと呼びかける歌なのだ。
tofubeats楽曲ならではボイス加工はしっかり成されている。だが、むしろそのことによって、生まれたての真心が伝わる。生の声よりも、気持ちの和音が浮かび上がるように曲が設計されている。
明日のこともわからないのに生きるのは難しいねーーこのくだりが唐突に令和2年の春を突き刺す。これは人と人との、他人と他人との、関係性の歌だ。人類史上最大の窮地に陥った私たちが、それでも他者を求め、他者とのつながりを一から構築する手間を惜しまずに、日々を大切に暮らすことができたなら。
豊かな契機と、静かな決意。最後の最後に舞い降りる「友だち」の響きが、すこぶる優しい。

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