#23-041 「がんばってな」
2月10日。父方の祖父の命日だ。
突然、居なくなってしまった。
あの日、
「あいちゃん、がんばってな。
おじいちゃんもがんばるからな。」
分厚いレンズの向こうから、
まっすぐにわたしを見てそう言ってきた。
入退院を繰り返していた祖父。
もともと言葉数が少ないから、
いつも父と一緒に逢いに行っていたわたしが
直接話をすることはそうなかった。
こんなことばをかけてくるひとでもなかった。
この日はなぜか、そうだった。
なんでそんなこと言うんだろう。
不思議に感じながら
「うん、がんばるね。ありがとう。」と言って
手を振った。
それが、祖父と逢った最後の日になった。
それから、もう、23年も経ったのだ。
おじいちゃんは、きっとずっと
がんばってたんだな。
わたしは、ちゃんとがんばってたかな。
おじいちゃん。
わたし、がんばってるかな。
「がんばって」って言ってほしい。
今、もう1度。
aico.