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日曜日にカフェで本を読むのは

日曜日、夫と近所のカフェにで出かけた。
自宅から少し歩いた場所にある20人ほどが座れるそのカフェに、私はオードリー若林さんの旅行記エッセイを、夫は社会学をテーマにした文庫本を持ちこんだ。
焙煎されたコーヒーの良い香り、程よい雑音とうるさくない程度のジャズが流れる空間で、何もしなかった週末を少しでも生産的に過ごそうという算段である。

若林さんの本は、独身時代の若林さんが夏休みを利用して行ったキューバ旅行記と、その旅行の中で感じた新自由主義への推考、理想と現実の乖離へ思索をめぐらすといったものだった。
日本が抱える資本主義とキューバの社会主義。その結果としての自由・不自由と貧困、敗者と勝者、そして病気で亡くしたお父様への懐古…。
それらが一人旅ならではのトラブルやドキドキの中に詰め込まれていた。
旅行記なので時折り写真が入るのだが、その写真があまり上手すぎないのもとても良かった。(というと語弊があるかもしれない。なんたって若林さんは2009年に写真展を開催している)

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彼の思考経緯とまだ見ぬ国キューバ、両方への旅行気分を味わいながら7割ほど読み進めたころ、私達の隣の席に男女が座った。

「で、提案書できた?」「うん」
その会話と同時に、女性はMacBookを取り出し、男性は画面を覗く。

「うーん… 根本的に◯◯だから△△なんだよね。☆☆は?」
「それはここに…◯◯なんで」
「いや、違くて。だからさ、あの~話遮って悪いんだけど◯◯は…」

MacBook Airという名の現実が隣からこちらを横目で見ていた。

わかってる、ここはキューバじゃない。


「明日は月曜日だぞ」

飛行機に乗っても、本を読んでも、自分にとっての「月曜日」から逃げ出す手段は無いのかもしれない。

そうわかっているからこそ、私たちはカフェに行きキューバに行き、脳内を旅することをやめないのだ。


さあ帰ろう、と飲み干したコーヒーはすっかり冷めきっていた。

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