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0-1.日本の全ての鉄道に乗る話(その2)。

前回は「日本の全ての鉄道に乗ることは実質不可能」という意味不明な発言を残して終わりました.
今回は,その理由についてお話していきます.

日本の全ての鉄道に乗れない理由

 「35,678.7km」,この数字を聞いてピンとくる人は日本の全人口の1%もいないと思います.これは,平っっっったく言うと「日本の鉄道が営業している距離の総計」です.だがしかし,鉄道に少し詳しい方ならこの数字に違和感を持たれるかもしれません.なぜなら,実際の日本の路線総延長は27469.0kmだからです.
 こいつは唐突に何を言ってるんだという方が大半だと思うので,もう少しかみ砕いてお話します.興味が無い方・面倒な話が苦手な方は,この章の最後まですっ飛ばして頂いても差し支えありません.

日本の全ての鉄道に乗れない理由 その1

現在,日本の鉄道は主に乗客と貨物の2種類を運んでいます.
勘のいい方はもうお気づきかもしれません.
そう,貨物しか運ばない鉄道が存在するのです.
貨物しか運ばない鉄道に一般人が乗れるはずがありません.
そのような貨物専用の鉄道が現在,総延長にして約400km存在します.

日本の全ての鉄道に乗れない理由 その2

国土交通省の監修で,日本の鉄道の基本的なデータを集めた本が毎年出版されています.
その名も「鉄道要覧」.

日本国内の全ての鉄道事業者(鉄道会社のこと)について,
 ・所有している路線の距離,簡単な経歴,路線の設備
 ・運営している路線の距離,簡単な経歴,路線の設備
 ・これから開通する予定の路線
 ・その他(社長が誰だとか,会社の資本金はいくらだとか)
などなどを記載したいわば「鉄道版広辞苑」みたいなやつです(広辞苑はちょっとおこがましいかな).
このnoteに出てくる数値の大半はこの本に準拠しています.

この本の中(実際には「鉄道事業法」という法律に定められています)で,鉄道事業者(鉄道会社)とその路線は以下の3つに分類することができます.
第1種鉄道事業者:設備(線路とか駅とか車両とか)を保有し,その設備で運営も行う会社
第2種鉄道事業者:設備を保有せずに,第1種事業者や第3種事業者の設備を借りて運営を行う会社
第3種鉄道事業者:設備を保有するだけで,自ら運営は行わない会社

ここで,山手線を例に考えてみましょう.

山手線の線路を保有しているのはJR東日本(東日本旅客鉄道)です.
山手線の電車の運転や駅の業務行っているのもJR東日本です.
従って,JR東日本は山手線の第1種鉄道事業者となります.
一方で,山手線には貨物列車も走っています(電車オタクくんは黙っててね).
この貨物列車を運転しているのはJR貨物(貨物旅客鉄道)です.
JR貨物はJR東日本に通行料を払って,JR東日本の線路である山手線で貨物列車を走らせることができます.
従って,JR貨物は山手線の第2種鉄道事業者となります.
そしてここがとても重要なのですが,以上から山手線の運営はJR東日本とJR貨物の2社によって行われていると言えます.

ここで冒頭に戻って,35678.7kmについて考えます.
先程の例では,山手線には2つの事業者がいるというお話をしました.
鉄道要覧ではこの状態を「JR東日本の山手線」と「JR貨物の山手線」といった具合にダブってカウントしています.
乗れる路線は現実には1本しかないのに,統計上は2本あるということです.

このような事象が全国各地に存在するため,実際に乗ることができる距離よりもかなり長い数値が統計上出てしまうのです.
この重複を除外して導かれた距離が27469.0kmというわけです.

日本の全ての鉄道に乗れない理由 その3

鉄道に乗るとき,誰もが乗る距離に応じて運賃を払い,切符を買います.
新幹線もまた然り.

はいストップー!!!!

今さっき「乗る距離」と言いました.
実は新幹線では「実際に乗る距離(=実キロ)」と「運賃を払う距離(≒営業キロ)」が一致しない区間が多々あります.
どういうこっちゃ.今から解説します.

「実際に乗る距離」とはまあ読んで字のごとくです.実際に乗った距離です.
一方で,だいたいの新幹線にはおおよそ並行して走る在来線があります.新幹線の駅は在来線に併設されているケースが多いため,「運賃を払う距離」には在来線を経由した距離を適用しています.(この説明は大変ざっくりしたものなので,興味のある方は「🔎営業キロと実キロの違い」などとググってみてください)

統計上は「運賃を払う距離(≒営業キロ)」が記載されるため,「実際に乗る距離(=実キロ)」と一致しない事象が発生するのです.
この場合,在来線の方が遠回りすることが多いので,大体営業キロの方が長い(=実際に乗る距離よりも余分にお金を払っている)です.

なお,この趣味において実キロ或いは営業キロのどちらを採用するかは意見の分かれるところであったりします.
私は実キロ派なので,今後新幹線に絡む距離は不都合の無い限り実キロによって表したいと思います.

実際に乗ることのできる日本の鉄道

 さて,ここまでみなさんにとっては非常にどうでもいいことであろう,「日本の全ての鉄道に乗ることができない理由」についてつらつら書いてきました.
お分かりいただけましたでしょうか.
とりあえず,全部は乗れないんだなってことだけご理解いただければおっけーです.

さてさて,んじゃあ結局のところ俺たちが実際に乗れる日本の鉄道は全部でどれくらいあるんだよってことなんですが,それが「27072.3km」です(本稿執筆時点).

実際に乗ることができる路線はこんな感じ
(乗りつぶしタイムマシン http://www.noritsubushi.org/ で作成)

もう一度要約して整理すると,
一般人が乗ることができて
統計上の重複を除外して
実際に乗ることができる距離
が「27072.3km」です.
ここで,この距離を「総旅客営業実キロ」と定義します.
この距離が私の鉄道完乗の一つの基準となります.

ちなみに,世の中にはこのような完乗趣味をサポートするツールがいくつかあります.
ここでは,鉄道要覧を基準に独自で算出したものを採用しているため,そのようなツールとは数値が一致しない場合があります.
その点ご理解頂ければ幸いです.

長くなりましたが,全線完乗の定義編もこれでひと段落です.
次回は完乗に向けた現在の私の進捗についてお話したいと思います.

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